軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

順に回るつもりなのかな?

さてこの六王祭最終日に関しては、昨日アリスから追加のガイド冊子を受け取っている。

というのも、六王祭最終日は言ってみればここまでの六日間のオールスターともいえる構成らしい。定番の屋台以外はこの六日間で人気の高かったアトラクションや屋台が再度出展されているとのことだ。

六王祭の会場は非常に巨大で、とてもではないが一日で回りきるのは不可能なので、この最終日みたいに選りすぐりを集めてくれているのはありがたい。

もらったガイドを見てみると、リリウッドさんと行った植物の迷路とか、アリスといったVRMMOとかも再度出展してるみたいだった。

特にあのVRMMO……レースゲームは、リリアさんと寝る前に少しハミングバードで聞いたところによると、リリアさんたちは3時間待ちでプレイできたらしい。

俺は一緒にいたのが主催者かつ職権乱用しまくるアリスだったので、まったく待ち時間というものは無かったが、最新技術を体験できる五日目は人気アトラクションは数時間待ちが当たり前だったらしい。

まぁ、そんなわけで今日は選りすぐりのアトラクションや出店があるわけだが、まずはどこから回ろうか? シロさんの希望があるなら……。

「では、快人さんが一日目に行った的当てに行きましょう」

「えっと……ああ、ボールを投げて当てるやつですね。ちょっと待ってください。ガイドブックで場所を確認しますね」

シロさんが言っている的当てとは、俺がアニマと一緒に行ったアトラクションのことだろう。

シロさんの要望を聞き俺はガイドブックを確認する。このガイドブックは、種類ごとに分かれた目次、店名から探せる索引と親切設計なので、すぐに見つかるだろうと思ったが……あれ?

「……無いみたいですね。あまり人気があるアトラクションではなかったのかもしれません」

「……」

「残念ですけど、他のアトラクションに……」

「ありましたよ」

「へ?」

シロさんの言葉を聞いて視線をガイドブックから上げると……たしかに俺たちの進む道の先に、見覚えのあるアトラクションの建物があった。

……アリスが作ったガイドブックに漏れがあるとは思えないけど……というか、なんであのアトラクション『道の真ん中』にあるの? おかしいよね?

これ、元々あったというよりは、突如出現したといった方が正しいような……。

そんなことを考えつつ、チラリと後方を見ると……少し離れた場所でクロノアさんが柱に寄りかかり、疲れた表情を浮かべているのが見えた。

そしてそんなクロノアさんに、ライフさんとフェイトさんが声をかけている。

「……時空神、よくやりました。いま、回復します」

「そうだよね。シャローヴァナル様だもんね……無い店を要求してきても不思議じゃないよね。ちょっと、そっちの方向も対策しておくね」

うん、もうなにがあったかは大体わかった。クロノアさん、なんというか、本当にお疲れ様です。

「……は、入りましょうか?」

「はい」

心の中でクロノアさんを労いつつ、シロさん希望の的当ての店に入ると……神族の衣装を身にまとった女性が深く頭を下げてきた。

「いらっしゃいませ。ご用意はすでにできております」

「え、えっと、ご苦労様です」

神族の方であるのは間違いないけど、初めて見る方だ。なんとなく、その、失礼かもしれないが……クロノアさんに近い雰囲気を感じる。いや、力とかじゃなく苦労人的な……。

「……ちなみにシロさん、いまの方は?」

「豊穣神です」

あ~そういえば、会うのは初めてだけど、話だけならフェイトさんから聞いたことがある。たしか、ライフさんの部下で、アルクレシア帝国を担当している下級神だったはずだ。

フェイトさんがたまに差し入れを持ってきて「豊穣神に作らせた」って発言してたし、うん。俺の予想通りいろいろ苦労している方なんだろうな。

「……シロさん、やります?」

「では、やってみます」

俺は一度遊んだこともあるので、シロさんにやってみるかと提案すると、意外にも二つ返事で了承し、シロさんは俺の腕を離して用意されていたボールを手に持つ。

「投げます」

「あ、はい。『頑張ってください』」

「……頑張ります」

あれ? なんだろう? ものすごい寒気が……あれ? なんか、ボールを握るシロさんの手の回り……『景色にヒビが入っていってる』みたいに見えるんだけど……それになんか、地震起こってない?

まさか、とは思うんだけど……シロさん『本気で投げる』つもりとかじゃないよね? ははは、さすがにそれは無いか。

だってシロさんの本気って、世界が滅ぶ規模になるだろうし……まさか、そんなことは……。

「シロさん!! 待――ッ!?」

慌てて呼びかけるがすでに遅く、シロさんの手が一瞬光ったかと思ったら……ボールが消えていた。そして、的当てのターゲットである数字の描かれた板も、一枚消えていた。

「……あれ?」

「どうしました?」

「あ、いえ……」

俺はちゃんと五体満足で生きてる。アトラクションの建物も消し飛んでない。ターゲットの板が炭化してたりもしない。

ということは、シロさんはちゃんと手加減して投げてくれたのかな? なんだ、いらない心配だったか……。

拝啓、母さん、父さん――シロさんは最初に、俺がアニマと一緒に回った的当てを希望した。ふと思ったんだけど……もしかして、シロさんは、俺が五日間の間にデートで回ったアトラクションを――順に回るつもりなのかな?

快人とシャローヴァナルが的当てを行っている建物の外では、クロノアとクロムエイナが疲れた表情を浮かべていた。

「……冥王、本当に助かった」

「い、いや……間に合ってよかったよ。というか、今日のシロやばいね。どう考えても、今日の厄介事はシロが起こしそうだし……ボクもクロノアちゃんたちを手伝うよ」

「す、すまん。恩にきる」

「……それにしても、シロはどうしたんだろう? 力加減が滅茶苦茶だよ」

「……はしゃいでいらっしゃるらしい」

「……長い一日になりそうだね」

その言葉の通り、クロノアとクロムエイナはこの一日、必死にシャローヴァナルのフォローに駆け回ることになる。