軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

かなり緊張していたみたいだ

ノインさんにクロの家族について教えてもらったあと、俺たちの間には少し沈黙がおとずれた。特に気まずいと言うわけではないが、なんとなく落ち着かない気分だ。

俺は少し頭の中で考えたあと、後ろに居るノインさんに声をかける。

「……ノインさんって、どんな食べ物が好きですか?」

「……え? どうしたんですか、急に……」

「ああ、いえ、なんとなくですけど……俺ってノインさんのこと、漠然としか知らないな~って……明確な理由があるわけじゃないですけど、なんとなく、ノインさんのことをもっと知りたいんです」

「ふぇっ!?」

意外といままで、ノインさんとふたりきりで会話した回数は少ない。もちろん俺はノインさんを大切な友人だと思っているし、ある程度は知っている。

しかし、フィーア先生との会話もそうだが、ラグナさんやフォルスさんと話していると、ノインさんのことを全然知らないのだと実感した。

……だから、だろうか? ふと、ノインさんのことをもっと知りたいと思った。

ノインさんは俺の突然の言葉に戸惑ったような声を上げたが、少しすると質問の答えを返してくれた。

「……あんみつ、ですね」

「あんみつですか……俺、あんみつってあまり食べたことが無いんですけど、この世界にもあるんですか?」

「ええ、あります。その、よく作って食べてます……快人さんは、なにがお好きですか?」

「俺は、ハンバーグとアップルパイですね」

ノインさんはあんみつ好き……しっかりと覚えておこう。ついでに、クロの食べ歩きブックであんみつ出してる店を確認しておこう。

ノインさんには以前米をいただいたという、とてつもなく大きな恩があるので、機会があれば俺の奢りであんみつを食べに行くのもいいかもしれない。

「では、続けて月並みですが……ノインさんの趣味ってなんですか?」

「そうですね……将棋を嗜みます。快人さんは将棋を指したことはありますか?」

「え、ええ、まぁ……」

「機会があれば、一局打ちませんか?」

「……構いませんが、覚悟しておいてくださいね。俺と将棋をさしたら、ノインさんは『アリスと同じ絶望』を味わうことになりますよ……」

「……なるほど、自信ありということですね。望むところです。私も棋力には少々自信があります……相手にとって不足はありません!」

……残念ながら、不足はありまくるんだよなぁ……。

「いえ、ノインさんの考えているのとは逆です。俺と対局した場合……ノインさんは、俺のあまりの弱さに絶望しますよ」

「……え?」

アリスは絶望したからね。匙投げて二度と将棋で遊ぼうとは言わなくなったからね。い、いや、でも、待てよ? もしかしたら、以前アリスと対局した時のアレは……俺が弱いのではなくて、アリスが強すぎるだけなんじゃないだろうか?

うん、その可能性は非常に高い。なにせ、アリスは性格はともかく超万能だし頭もいいし、たぶん将棋の腕もヤバいレベルなんだろう。

それを考えると、そこそこ善戦した……ような気がする俺は、まぁまぁ強いのではないだろうか?

「いえ、なんでもありません。ええ、機会があれば是非……」

「……は、はい」

「えっと、次は……ノインさんって、普段はなにをしてるんですか?」

とりあえず俺の真の実力に関しては置いておいて、次の質問を投げかける。

「……えっと、腕を磨いたり……時々クロム様について各国を訪問したり……時々ラズ様の畑仕事を手伝ったり……で、ですかね?」

「……わりと疑問なんですけど、ノインさんやラズさん……クロの家族の人達って、どうやってお金を稼いでるんですか?」

「……お、お小遣い……制……です」

「……へ?」

俺はてっきり、ゼクスさんが魔法具商会を仕切っているような感じで、ノインさんもなにかをしているのかと思って尋ねたのだが……ノインさんは非常に困った声色で、意外な言葉を返してきた。

「……そ、その、私達は……毎月クロム様から金貨一枚ずつのお小遣いをもらっておりまして、買い物などはそのお金で……なので、仕事とかは……」

「……な、なるほど……えっと、なんかすみません」

凄いな、流石クロというべきか……お小遣いが毎月100万円って……フェイトさんが羨ましがりそうな環境だ。

よくよく考えてみれば、初代勇者であるということを隠しているノインさんは、仕事を探すというのは難しい立場なのかもしれない。

なるほど、そりゃ言い辛そうにするわけだ。悪いことを聞いてしまった。

「い、いえ、そのことに関しては私もなんとかしようと思っていたところです。ラズ様は野菜や果物を販売することで収入も得ていますし……」

「えっと……」

「……ちなみに快人さん『外出時の護衛』とか……」

「……ま、間に合ってます」

よっぽど気にしてたのだろう、素顔を知ってる俺に売り込みをしてくるノインさん……しかし、残念ながら護衛に関してはチートの塊みたいなのが居るし……。

とりあえず、この話題はノインさんにダメージがでか過ぎるので、別の話題を……っと、その前にノインさんのフォローを……。

「は、話は変わりますけど! ノインさんの今日の服、とても可愛いですね」

「へ?」

「ノインさんは元が凄く綺麗なので、洋服も似合いますし……清楚って言うんですかね。落ち着いた女性らしさが、すごくノインさんらしくていいですよね!」

「え? ええ!? か、快人さん……な、なにを……あの、その……」

あれ? 俺なに言ってるんだ? ノインさんを元気づけようと思っていたせいか、なんだか歯の浮くような台詞が次々と……。

まぁ、口はよく動いてるし、このまま勢いで……。

「さ、桜色の髪も似合ってますよ。というか、ノインさんは美人なのでどんな髪の色の似合いますね!」

「はぇっ!?」

「そんな素敵なノインさんとふたりきりで、話ができて、俺は幸せ者ですよ」

「みゃぁっ!? な、なんで、急にそ、そそ、そんな……こきょ、こころの準備が……」

……うん。駄目だ、失敗した。やっぱり勢いに身を任せるとロクな結果にならない。なんか元気付けてるというより、口説いてるみたいな感じになっちゃった。

コレは駄目だ。ただでさえ恥ずかしがり屋のノインさんに、こんなことを言ってしまってはテンぱってしまうだろう。早急に軌道修正を……。

「す、すみません! 変なことを言ってしま――え?」

勢いでとんでもないことを言ってしまったことを謝罪しようと俺が振り返るのと、後方で「ドサッ」という落下音が聞こえたのはほぼ同時だった。

もちろん、この状況においてその落下音がなにかと言えば……。

「の、ノインさん!? ベル、ストップ! ストォォォォップ!! ノインさんが落ちた!!」

「グル?」

拝啓、母さん、父さん――コレは完全に俺の失態。なんというか、妙な流れになってしまった。テンぱってたのは、俺の方だった。昨日の逆プロポーズみたいなこともあって、自分では気づかなかったけど……俺はノインさんとふたりっきりというシチュエーションに――かなり緊張していたみたいだ。