軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

出てきた料理に見覚えがあったことだ

リリアさんたちが待つ店は、どうやらかなりの人気店らしい。俺とルナさんが到着した時には、店の前には長蛇の列があり、その真ん中あたりにリリアさんたちの姿があった。

「あっ、快人先輩、ルナさん。こっちですよ~」

俺とルナさんを見つけた陽菜ちゃんが大きく手を振ってくれたので、そちらに合流することにした。

「お待たせしましたお嬢様……やはり、時間がかかりそうですね」

「ええ、もう少し早く出ておくべきでした。この店の人気を侮っていましたね」

ルナさんとリリアさんがそんな風に会話しているのを横目に、俺は陽菜ちゃんと葵ちゃんのいる場所に並ぶ。

「すごい行列だ……いったいなんの店なの?」

「幻王様のガイドブックに載っていた店で、非常に珍しい料理を出すと書いてありまたね。料理名だけでは、どんな料理かまでは分かりませんけど……」

「うぅ、お腹空きました~」

俺の質問に葵ちゃんが答えてくれて、陽菜ちゃんは空腹を訴える。

う~ん。確かにこれだけ並んでいるなら期待できるけど、時間はすごくかかりそうだなぁ……。

「快人先輩! 先輩のスペシャル招待状で、なんとかならないんですか?」

「ど、どうだろう? 料金が無料になるとかは聞いたけど、順番を優先してくれるのかな?」

「陽菜ちゃんの気持ちもわかるけど、リリアさんのプラチナランクでも駄目だったんだし、快人さんのでも難しいんじゃないかしら?」

二人だけではなく、リリアさんたちもこの行列にはうんざりしているみたいだったが、ここまで進んでいると、いまさら他の店にも変更しづらい。

上位の招待状でも順番の優先はできないみたいだし、まぁ、気長に待つしかないのかな?

そんな風に考えたタイミングで、列の先頭付近からこちらに向かって店員らしき人物が歩いてきた。

そしてその人は俺の前で立ち止まり、丁寧にお辞儀をしてから口を開く。

「……ミヤマ・カイト様でお間違いありませんか?」

「え? はい、そうですが?」

「本日は当店にお越し下さり、まことにありがとうございます。ミヤマ様とお連れの方々には『VIP席』をご用意しておりますので、どうぞこちらへ」

「……へ?」

別に席を用意していると告げる店員に、俺達は揃って首を傾げる。

なぜなら俺は別にこの店に来ることを事前に知らせたわけでもないし、まして予約もしていない。なのに、なぜVIP席なんてものが、当り前のように用意されているのだろうか?

するとその疑問を察したのか、店員は穏やかな微笑みを浮かべながら告げる。

「六王様の命により、この会場となる都市に存在する『全ての飲食店』には『ミヤマ様とお連れ様専用』のVIP席が用意されております。もちろん、当店も広い展望個室をご用意しております」

「……は?」

「……顔パスです。快人先輩、まさかの顔パスですよ」

「……流石と言うべきか、またかと言うべきか……安定の快人さんね」

後輩二人からの評価に関しては、本当に一度じっくり聞いてみたいものだ。まだ、頭を抱えて遠くを見ているリリアさんの方が分かりやすい。

唖然としつつも、待たずに食べられるのはありがたいので、店員の案内に続いて移動する。

案内された席は展望個室という言葉の通り、非常に景色のいい場所だった。

流石に全員が座れるような大テーブルは置いてないみたいだったので、何人かのグループに分かれて席に座ることになり、俺は葵ちゃん、陽菜ちゃんと共に異世界人組で固まることになった。

「……ミヤマ様、食後に料理長が是非挨拶をしたいと申しておりますが、いかがでしょうか?」

「え? あ、はい。わかりました」

「ありがとうございます。それでは、当店自慢の料理をご用意いたします」

「お、お願いします」

店員さん、お願いだからこっちこないで……俺はこういう場にはまったく慣れてないので、リリアさんの方へ行ってください。

「こちら、お飲み物のメニューになります」

「……」

手渡されたメニューを見てみると、いろいろな品名が並んでいるが……さっぱりわからない。

「……り、リリアさん……まったく分からないです」

「では、私が選びましょうか?」

「お願いします」

隣に居たリリアさんに助けを求めてメニューを手渡すと、リリアさんは慣れた様子で注文をしていく。どうやらお酒が飲めない人もしっかり把握しているらしい。

リリアさんが居てくれて、本当に良かった。

「……快人先輩、どんな料理が出てくるんでしょう?」

「う~ん。なんか、雰囲気的にはフランス料理みたいな内装って気がするね。葵ちゃんは、どう思う?」

「高級店なのは間違いないでしょうが……テーブルのセッティングは、フレンチとは少し違うような気がします」

前々から思ってたけど、葵ちゃんって結構いいところのお嬢様なのかな? テーブルのセッティングとかで判断出来るんだ。

まだ見ぬ高級料理に期待を膨らませていると……少しして、飲み物のと共に前菜が運ばれてきた。

「オードブルの『ペイルピッグのプレゼ』でございます」

「……葵ちゃん、プレゼってなに?」

「蒸し煮のことです。ほほ肉とかが定番ですが、普通はオードブルで出てくる品じゃないです」

「……いや、というか、これ……」

「え、ええ、その……私も驚いています」

運ばれてきた料理について葵ちゃんに小声で聞いてみると、葵ちゃんはやや困惑した表情で教えてくれた。

いや、葵ちゃんがなぜ困惑しているのかは俺も良く分かる。というか、たぶん俺達三人の気持ちはひとつだろう。

「……葵ちゃん」

「……ええ」

「……陽菜ちゃん」

「……はい、私にもこの料理の名前は分かります」

「……じゃあ、せ~の」

「「「豚足……」」」

そう、運ばれてきた料理は……紛うことなき『豚足』であった。

拝啓、母さん、父さん――リリアさんたちと高級料理店で夕食を食べることになった。VIP待遇にも驚いたけど、なにより驚いたのは――出てきた料理に見覚えがあったことだ。