軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

眩しく見えた

メギドさん主催の宴会は賑やかに進行していく。

今回はあくまで初日でスタンプを多く集めた人と、メギドさんの配下のみの参加なので、クロやアリスは居ない。まぁ、その気になれば簡単に参加できるだろうけど、その辺りの空気はバッチリ読むみたいだし、たぶん乱入してきたりはしないだろう。

そんなことを考えていると、メギドさんが大きな音と共に杯を置き、叫ぶように告げる。

「……というか、おい、こらっ! オズマ!! テメェの所だけ通過率80%ってどういうことだ! アグニなんざ、カイト以外通してねぇんだぞ!!」

「あ~ほら、皆頑張ってたんでね。『俺』としては無下にもできないんですよ~」

その言葉に反応して、片手に小さめのコップを持ったオズマさんが、相も変わらず緩い感じでこちらに近付いてきた。

尤も、流石にメギドさん相手には敬語を使うみたいで、口調が変わっていたけど……。

「はぁ、テメェは相変わらずだな……安酒ばっかり飲んでやがるし……」

「いや~どうも、高い酒ってのは肌に合わなくて……やあ、ミヤマくん。お疲れ様」

「あ、はい。ありがとうございます!」

オズマさんは穏やかな口調で俺に声をかけてから、メギドさんの向かいで腰を降ろして座る。

「旦那は楽しそうですねぇ。いつもより、酒のペースも早いんじゃないですか?」

「ああ、今日の勝負は楽しかった。酒も進むってもんだ!」

「そりゃ、なにより……」

まるで自分のことみたいに嬉しそうな表情を浮かべてから、オズマさんはパチンを指を弾き、巨大な酒瓶を出現させる。

そしてそれを軽々と片手で持ち、メギドさんの杯に酒を注いでいき、メギドさんはなにも言わずにその酒を飲み干す。

なんとなく気心の知れた雰囲気というのか、どこか柔らかい空気の中で、ふと俺はあることを疑問に思い口を開いた。

「あの、オズマさん?」

「うん? なんだい?」

「オズマさんだけ、メギドさんのことを『様』じゃなくて『旦那』って呼んでますけど、なにか意味があったりするんですか??」

「ん~いや、昔っからの癖ってだけで、別になんの意味もないよ」

「オズマは俺の配下の中で最古参だ。俺が戦王って呼ばれる前に配下になったから、そういう呼び方なんだろうな」

オズマさんはメギドさんにとって一番最初の配下らしい。

「へぇ……そういえば、聞いちゃいけないことだったらすみません。オズマさんってなんでメギドさんの配下になったんですか?」

「おいおい、ミヤマくん。こんなおじさんの過去を暴いたって、なんの得もないよ?」

「すみません、なんかオズマさんだけ他の戦王五将と雰囲気が違う気がしたので……」

「ははは、言われてるぞオズマ。覇気がねえってよ」

「い、いや、そこまでは!?」

確かに、メギドさんの言う通りオズマさんには覇気がない感じ……というか、他の戦王配下みたいに「闘争こそ至高」みたいな感じがしないとは思う。

だからこそ、俺としては話しやすい相手でもあるんだけど……。

「あはは、いや、まぁ、おじさんも昔はいろいろやんちゃしてたんだよ。それこそ、初めて会ったメギドの旦那に殴りかかるぐらいにね」

「えぇぇ!?」

「まぁ、結果はもうぼっこぼこ……思いっきり負けちゃったんだけどね」

「『七日七晩戦っておいて』よく言うぜ……『互角だった』ろうが?」

「いやぁ、それでも最終的に負けたんですから、旦那が強くて、俺が弱かったんですよ」

え? メギドさんと七日七晩互角に戦った? オズマさんってそんなに強いの!? え? 戦王五将最弱って話はどこに!? い、いや、まぁ、俺もオズマさんがコングさんより下とは思って無かったけど……もしかして、戦王五将で一番強いのってオズマさんなんじゃ……。

「そのころの魔界ってのはね。いまよりずっと殺伐としていて、負けるってことは死ぬってことだった。けど、メギドの旦那は負けたおじさんの命を奪わず、配下になれって言ってきたんだよ」

「あ~懐かしいな」

「けど、その頃のおじさんは若気の至りって言うか、まぁ、とにかく荒れててね。旦那に配下になれって言われた時も……『侮辱するな! 俺を配下にするなら、背後から首を切り落とすぞ』って感じで噛みついたんだよ」

「お、おぉ……」

オズマさんはどこか気恥ずかしそうに頬をかきながら、昔メギドさんに告げた言葉を説明してくれた。

「そうしたら、旦那はなんて返したと思う? そりゃもう心底楽しそうに『おぉ、そりゃ楽しみだ! じゃ、俺の背中はお前に任せるぞ!』ってね」

「な、なんというか、メギドさんらしいですね」

「……器の大きさを思い知らされた気分だったよ」

どこか楽しげにそう告げながら、オズマさんは煙草を取り出し咥える。それに落ち着いた動作で火を付け、どこか懐かしむようにメギドさんを、尊敬の籠った眼差しで見つめていた。

不意打ちすることは大嫌いでも、不意打ちされることは大好きって感じか……本当にメギドさんらしい。

「おぉ、そういやまだ背後から狙われてねぇな? いつ仕掛けてくるんだ?」

「あはは、もうそんな気はないですよ。俺はメギドの旦那の生き様に惚れ込んだ。そのでかい背中を見ていたいってね……俺にとっての王は、旦那だけ……俺が死ぬ時は『旦那の背中を守って死ぬ』って、旦那が戦王になる前から決めてるんですよ」

「……そうかよ」

「まぁ、最近はすっかり平和になっちゃったんで、死ぬのは難しそうですけどね。まぁ、そういうわけで、この命尽きるまでは、ほどほどに緩く旦那に仕えますよっと……」

「ったく、最後に余計なの付け足しやがって……相変わらずしまらねぇやろうだ」

「あはは」

呆れたように告げるメギドさんも、苦笑しながらボサボサの髪をかくオズマさんも……どこか嬉しそうで、互いに強い信頼で結ばれていることが伝わってきた。

拝啓、母さん、父さん――大分端折っていたけど、少しだけオズマさんの過去を知ることができた。自分の王はメギドさんだけ、そう語るオズマさんの表情は晴れ晴れとしていて、それを受け取るメギドさんも嬉しそうで……なんとなく、その光景は、いままで見てきた主従の中でも一番――眩しく見えた。