軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

勝利の美酒の味を……

メギドさんとの勝負が終わった後は、リリアさん達と一緒に様々なアトラクションを回ってみた。

どれもスポーツゲームみたいな感じで、かなり楽しく回ることが出来たが……正直戦績はいまいちだった。

というのも、メギドさんに勝利してから気が抜けたのか、それともメギドさんに勝った喜びがまだ醒めていないのか、アトラクションに集中しきれなかった。

あんなに大勢の観客の前で、それこそ死に物狂いで戦ったのは初めての経験だし、実感が遅れて湧いてくるのは仕方ないことなのかもしれない。

そして、夕方ぐらいまでアトラクションを回ってが、追加で獲得できたスタンプは22個だった。集めたスタンプによって景品がもらえるということで、中央広場で交換を行った。

てっきり俺は22個としてカウントされるかと思っていたが……戦王五将の特大スタンプは一つにつきスタンプ十個分。メギドさんに勝った証である超特大スタンプは、なんと一つでスタンプ百個分として計算をするらしい。

つまり、俺の集めたスタンプは172個分であり、最上位の景品である『メギドさんのたてがみで作られた手袋』を手に入れることができた……う、う~ん。

なんか、超高温でもへっちゃらで、なんと、この手袋を手にはめれば『マグマに触れても熱さを感じない』くらいらしい……ただし、『手袋以外の場所は燃える』。

なんというか、大変使い道に困るアイテムだ。少なくとも俺は今後、マグマに触れる機会など無い……というかマグマに近付く事態もごめんだ。

……軍手とかミトンの代わりに使っちゃ駄目かな? 駄目だよね。うん、もの凄く高価な品ものらしいし……まぁ、使い道はおいおい考えよう。

そうして慌ただしかった六王祭第一日目は、夜の8時をもって終了となり、参加者は宿泊施設へと戻っていった。

しかし、俺とリリアさんたちはメギドさんから宴会の招待を受けているので、宿泊施設には戻らず、メギドさんとの対決の舞台であった中央塔へと移動した。

……おかしいな? なんでこんなことになったんだ?

現在俺の視線の先には、大勢の人がいて、俺はそれを見下ろすような高台に立っていた。

「おうっ! 集まったな!!」

そして俺の横には本来の姿に戻ったメギドさんが居て、集まった人達を見て満足そうに頷いている。もう一度言うけど、どうしてこうなった?

宴会の会場へ辿り着いてすぐ、俺はリリアさん達から引き離され、なぜかメギドさんと共に中央に設置されたステージに来ていた。

どこを見ても人、人、人……360度包囲された視線によるフォーメーション。落ち着かない。本当に落ち着かない。

そんな俺の心境など知ったことではないと言いたげに、メギドさんは大きな声で話を進めていく。

「ここに呼んだのは、おれの配下と今日の祭りで優秀な成績を残したやつらだ! 全員いい戦いだったぜ! 最高の一日だった!! その礼だ、美味い酒に食い物、山ほど用意しておいたからよ。思う存分騒ぎやがれ!!」

メギドさんの声と共に、大きな歓声が上がる。

まさに大宴会といった雰囲気に圧倒されていると、メギドさんはひょいっと俺をつまみ上げて肩に乗せた。なにごと!?

「だが、宴会を始める前にテメェらに紹介してきてぇやつがいる! 『唯一俺に勝利した存在』……ミヤマカイトだ!!」

直後に再び大きな歓声。お、おぉ……。

ここに来る途中でアリスから聞いた話ではあるが、今回のアトラクションでメギドさんに勝利したのは……というよりは、挑戦することができたのは俺一人らしい。

というのも、どうも、ただでさえ強いアグニさんが、イリスさんに負けた後で完全に火が付いちゃったみたいで……その後誰ひとりクリアさせること無く完封してしまったためだ。

「いいか! カイトは俺に勝った。つまり、いまこの宴会に集まってる誰よりも上ってことだ! おらっ! 強者の登場だ!! 盛りあがれ!!」

瞬間、割れんばかりの歓声……う、うぉぉぉ……な、なんかすごい。体がビリビリ震える。

というか、い、いくらなんでも持ち上げすぎなんじゃ……。

その大歓声が収まってから、メギドさんが宴会の開始を宣言する。ここに集まっている者の大半はメギドさんの配下……つまりは宴会慣れしている方々なわけで、戸惑うことなく騒がしい宴会が始まった。

あちこちで俺のいる方へグラスを向け「乾杯!」と叫ぶ光景を見降ろし、俺の胸にはなんとも言えない感情が湧きあがってきた。

むず痒いような……恥ずかしさもあるが、それとは違った興奮もあり、自然と手を握っていた。

そんな俺をゆっくり降ろしてから、メギドさんはどこからともなく大きな杯を取り出して、そのうちの一つを俺に渡してから酒を注ぐ。

「……ほら、見てみろカイト」

「え?」

「今日のお前は、ここに居る誰よりも上だ……誰も文句はねぇさ、なんせ俺に勝ったんだからな」

「……メギドさん」

「誇れ、カイト。お前は少なくとも、俺との戦いでは自分の力で戦い抜いて……勝利した。この光景は、間違いなくテメェが勝ちとったもんだ」

「……」

まただ。また胸の奥になんとも言えないむず痒さ……ああ、そうか、俺はこの感情を知っている。

これは……『達成感』ってやつだ……。

それを実感すると同時に、嬉しさが湧きあがってきた。そうだ……泥臭い戦いではあった。運が味方してくれたのかもしれない、アリスの陰からのサポートがあったのかもしれない。

それでも、確かに俺は……自分で勝ち取った……メギドさんに……勝ったんだ。

「さあ、カイト。飲め、乾杯だ!」

「あ、はい! いただきます!」

ようやく湧いてきた勝利の実感を味わっていると、メギドさんから声をかけられ乾杯する。

そしてグッと酒を飲むと……口に、喉に、胃に……体全体に、美味しい酒の味が染み込んできた。

「……すごく美味しいですね。高いお酒なんですか?」

「いや、割といい酒ではあるが、別に珍しいもんじゃねぇよ」

「……そう、ですか。でも、美味しいです。いままで飲んだ中でも、ダントツで……」

「そうか、なぁ、カイト。今日は俺のワガママに付き合わせて、悪かったな」

「え? あ、いえ……というか、結局メギドさんが教えたかったことって、なんだったんですか?」

どこか穏やかな会話を交わしつつ、もう一口酒を飲んでからメギドさんに尋ねる。

メギドさんが俺に教えたかったこと……それはこの宴会で語ると言ってたけど、結局何だったんだろう?

「うん? ああ……そうだな。なぁ、カイト。今日は大変だっただろ?」

「あ、えっと……はい」

「ははは、だろうな。苦難もあったろうし、疲れもしただろう……だが、どうだ? 死に物狂いで戦って、勝って……その後で飲む酒は、最高だろ?」

「へ? ……はい!」

「よく覚えとけ、カイト。そいつが『勝利の美酒』ってやつだ」

「……勝利の美酒……もしかして、それが……」

メギドさんが俺に教えたかったことなんですか? そう尋ねようとしたタイミングで、メギドさんは杯に入っていた酒を一気に飲み干し、俺の方を向いて豪快に笑う。

「まぁ、それも確かにそうだ……だが、もう一つ。カイト、お前はすげぇやつだ。だが、欠点もある。お前の欠点は『自己評価の低さ』だ」

「うぐっ……」

「なんだ? 自覚あるのか……ならなおさらしっかり覚えとけ。もう一度言うぞ、お前はすげぇやつなんだよ……じゃなきゃ、俺が二度も負けるわけがねぇ。だから、まぁ、なんだ……もう少しどっしり構えて、自信を持て、お前は助けられてばかりの情けない人間なんかじゃねぇよ。ちゃんと自分の力で、栄光を掴みとれるやつだ」

「……メギドさん」

その肯定の言葉は、力強く俺の背中を押してくれた。なんていうか、本当に……俺は恵まれている。間違っていたら注意してくれる人が居て、無茶をしたら叱ってくれる人が居て……こうして、背中を押してくれる人も居る。

コレは本当に、得難いなによりの幸福だろう。

「……らしくねぇこと言っちまったな。さぁ、飲み直しだ! 今日はとことん飲むぞ!!」

「はい!」

拝啓、母さん、父さん――戸惑って、疲れて、苦労して、それでも必死になって掴み取った勝利。たぶん俺は、今日のことを一生忘れないと思う。自分の力で立ち向かい、報われる喜びを……そして、メギドさんから教えてもらった――勝利の美酒の味を……。