軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

凄い戦いになりそうな予感がした

すでに故人であるはずのイリスさんの登場に、俺は驚いて声も出させなかった。

イリスさんはそれを気にした様子も無く、軽く微笑みを浮かべて俺を見つめる。

(聞こえるか?)

え? なにこれ? シロさんと話したみたいに頭に声が響いてるんだけど、イリスさんの声?

(念話という魔法の一種だ。周りに聞かれては少々困る話題もある。そちらから返答は出来ぬであろうが、簡単に説明だけをさせてもらおう)

どうやらシロさんと違って、イリスさんは俺の心を読むことはできないらしい。なので俺が念話という魔法を習得していないので、この会話は一方通行になるらしい。

それは別にかまわないとして、説明というと……やはりイリスさんのことについてだろうか?

(あやつから説明を受けていない以上、我が現れたことに驚いだであろう? まずはその点に関して、あの馬鹿の代わりに謝罪をしておく、すまなかった)

……口調は尊大だけど、アリスと違ってもの凄く礼儀正しいというか、人間出来た人ってイメージがする。こういう突発的な事態に対して、ちゃんと説明してくれるところとか特に……。

(ある程度は聞いているだろうが、我はすでに死んだ人間と表現すべき存在だ。とはいえ、こうしてお前の前に現れている以上、完全に消滅しているわけではない。そうだな、現在の我に関しては『精霊の一種』のようなもの……)

う~ん。この言い方だと生き返ったというわけではない感じかな? 確かアリスの話だと、イリスさんは心具に心を宿して、ずっとアリスの心の中に住んでいたって言ってたっけ……。

(いまの我は魔力体に近い……心具を核とし、アリシ……アリスの『分体を器』として顕現している。まぁ、早い話が、先にあやつが『実験』と言っていたのは、我の実体化だ)

ふむ、つまりパーフェクト分体アリスとかいうのを、わざわざあちこちの分体を解除して作ったのは、イリスさんを実体化させるための器にするためってことか。

そして実験は成功し、こうしてイリスさんは実体化することが出来たと、そういうわけだろう。

細かい理論等は分からないけど、ともかくイリスさんがなぜここに居るかというのは理解できた。

(駆け足の説明になったが、我に関しては少しは理解してくれたと認識させてもらう。次に、なぜ我がお前の代理としてこの場に来たかだが……これに関しては、我の方からアリスに頼んだ)

どうやらイリスさんは他の疑問に関しても説明してくれるらしく、言葉を続けていく。

(お前には、親友を救ってもらった恩がある。なんとか少しでも、それを返す機会が欲しいと、アリスに何度か頼んでおってな……丁度この機会に介入させてもらうことにした。重ねて、驚かせてしまったことを謝罪する。ただ、我はお前の味方だということだけ、理解してくれれば幸いだ)

うん、やっぱり色々出来た大人って感じだ。本当にアリスとは大違い、大事なことなんにも説明してないあの大馬鹿とは大違いだ。

イリスさんはある程度の説明を終え、俺が頷いたのを確認してから、アグニさんの方に向き直って口を開いた。

「待たせて、すまん……さて、水晶玉で数値を測定すればいいのか?」

「いや、その必要はない」

「ほぅ……」

測定用の魔法具に触れようとするイリスさんに対し、アグニさんは軽く首を横に振る。

「貴女の実力が強大であることは、溢れる魔力で分かる。その魔法具は、あまり大きすぎる魔力は測定できないのでな……ハンデは無しが妥当だと考える。が、もし貴女が『どうしてもハンデが欲しい』というのであれば一考するが?」

「……ハンデとは、強者が弱者に対して負うもの。我と貴様は初対面だ。故に格付けは済んでおらぬ。その段階でどちらがハンデを負うかなど、不毛な話であろう?」

「……自信ありと、受け取っても?」

「むしろこちらが尋ねたいな。自信もなく、挑戦すると思うのか?」

アグニさんとイリスさんの間にバチッと火花が散ったように見えた。静かな闘志が込められた言葉を交わし合っているが、そこに険悪な雰囲気はない。

互いに互いを強者と認識した上で、挑発し合っている感じだろうか?

「なるほど……強い。ミヤマ様」

「え? はい」

「観客席に移動していただいてよろしいですか? どうやら手加減する余裕はなさそうですので、貴方に被害が及んでしまう可能性があります。観客席には界王様が防御結界を施して下さっているので、そちらへお願いします」

「わ、分かりました」

激しい戦いになることを予想して、俺に観客席に避難するよう告げるアグニさん。その言葉に逆らう気はなく、素直に頷いて移動を開始しようとする。

すると、そこでイリスさんがこちらを見て、優しげに微笑みを浮かべた。

「案ずるな、問題無く勝利して見せる」

「開始前から勝利宣言か……止めておいた方がいい。負けた時に恥をかくだけだぞ?」

「負けるつもりは毛頭ないが……そうだな、先に謝罪しておこう。我は久方ぶりの戦闘でな、つい力加減を間違ってしまうやもしれん。悪いが、死に物狂いで防御してくれ」

「御忠告痛み入る……が、ここは、そうさな……『見くびるな』と返させてもらおう」

まるで空気そのものが刃物に変わったかのような、鋭い闘気をぶつけ合う両者。す、凄い戦いになりそうな気がする。

「え、えと……頑張ってください。イリスさん!」

「うむ、その言葉確かに受け取った。必ず勝利を捧げよう」

イリスさんにしっかりと応援の言葉を伝えてから、俺はリリアさん達と一緒に観客席へ向かった。

拝啓、母さん、父さん――代理として現れたイリスさんからある程度の事情を聞き、改めてイリスさんとアグニさんの戦いが始まることになった。開始前から火花を散らす両者を見ていると――凄い戦いになりそうな予感がした。