軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

俺の理性を恐ろしい速度で溶かしてきた

俺の意思とは関係なく始まった、俺の隣で寝る人を選出するためのババ抜き勝負。

俺が一抜け、アイシスさんが二抜けして、クロとアリスの一騎打ちとなり……『1時間』が経過した。

いやいや!? なんで一枚と二枚の段階になって、一時間も勝負が続いてるの!? どっちもさっきからババ引いてばかりじゃん!

「……クロさん『因果律操作』止めてもらえませんか? 正々堂々勝負しましょうよ」

「……シャルティアこそ、ボクが引いた瞬間に『絵柄だけ魔法で入れ替える』の止めてよ。終わらないじゃん」

「……」

「……」

なにやってんのコイツら!? ババ抜きにどれだけ本気だしてんの!?

真剣な表情で睨み合うクロとアリスは、そのまま互いに手札を持ったままで硬直した。

そして少しすると、時折パンッと空気が破裂するような音が響き始める。

「どちらも凄まじい速度でカードを引いてますね。いまの数秒で『千』は引いてます」

「……ほんとなにやってんのコイツら……」

アインさんの補足によると、現在のクロとアリスは俺には知覚できない速度でカードを引いているらしい。もはやババ抜きじゃねぇよそれ……。

「……アインさん、これ、勝負つくんですか?」

「難しいですね。クロム様が本気を出せば、シャルティアが反応出来ない速度でカードを引くことは可能でしょうが……そうなった場合、衝撃で『この部屋が消し飛びます』」

「……」

「周囲に影響がない程度の速度では、シャルティアは十分反応出来ますからね。どちらかのミスを待つとして……『十日』ほどあれば終わるかと」

「それ六王祭も終わっちゃいますからね!?」

化け物同士のババ抜きがここまで凄まじいとは……まぁ、俺の気持ちとしては、もう一緒に寝ることへの抵抗は諦めたのでさっさと終わらせてほしい。

しかし、クロとアリスは真剣そのもので、どちらも手を緩める気は一切ないみたいだ。

「……仕方ない……カイトの隣で寝れるのは……ふたりだけ……とても……貴重」

「いや、そんなおおげさな……」

神妙な顔で告げるアイシスさんに、俺は溜息を吐きながら言葉を返す。

すると、アインさんがなにか考えるように顎に手を当て、少しして口を開いた。

「というより……いっそ『ひとりはカイト様の上で寝たら』よいのでは?」

「……は?」

「「それだッ!?」」

アインさんがとんでもないことを呟いた瞬間、クロとアリスは同時にこちらを向いて叫んだ。

いやいや、それだ!? じゃ、ないから! それはどう考えても駄目なやつだからね!?

両サイドをふたりに固められ、ひとりは上に乗る。いや、駄目だ。俺の理性的な問題で……。

「いや、それは流石に……」

「いい手ですよ、クロさん! それなら確かに、三人とも大丈夫です!」

「うんうん! 流石アイン!」

「い、いや、だから……」

「……皆一緒……嬉しい」

「あ、アイシスさん……」

あっ、駄目だこれ。いままでの経験から分かる。押し切られて、流されるやつだ。

先程までの真剣な様子はどこへやら、大はしゃぎするクロとアリスを見ながら、俺は今日一番大きなため息を吐いた。

そして就寝の時間……アインさんは眠らず扉の外で待機しているらしい。クロたちも普段は寝たりはしないらしいが、俺の居る時だけは一緒に寝るとのことだ。

ちなみにクロとアリスのババ抜き対決は、引き分けということで決着した。なにせ本気で争う理由がふたりとも無くなったので、その流れで終了となった。

「う~ん。カイトくんの負担にならないように、体重を調整できるボクかシャルティアが上の方がいいよね?」

「そうっすね。ただ、私は流石に上は恥ずかしいので……クロさんが上でいいですか?」

「うん!」

もうちょっと分厚い服ないかな? 浴衣はなぁ……生地薄いし隙間あるし、寝やすくはあるんだろうけど、この状況では最悪の服だ。

というか、全員固まって寝るんならこのベットのサイズはまったく意味無くないか? いや、もうその辺を突っ込んだら負けの気がするが……駄目だ。思考が落ち着かない。

「……四人一緒……楽しい」

「ですね。私達がクロさんのところからひとり立ちしてから、あまりこういう機会はなかったですしね……じゃあ、さっそく寝ましょう!」

色即是空、空即是色……無だ。俺はいま無になる。正直言葉の意味はよく分からないうけど、なんとなく悟りの境地に向かっている気がする。

「……カイト?」

「だ、大丈夫です。寝ましょう」

心を空っぽにして、一切を空にするんだ……。

アイシスさんに促され、ベッドに仰向けになって寝転がる。

右にはアイシスさんが来て、俺の手を抱き、柔らかな体の感触が薄い布を隔てて伝わってくる。煩悩退散、煩悩退散……。

左側にはアリスが寝転がり、アイシスさんと同じように俺の腕を抱く。小柄なアリスの体は俺の腕にピッタリと密着し、スベスベの肌の感触を余すことなく伝えてくる。

言い聞かせろ、心の中で己に言い聞かせるんだ! 俺は大丈夫、変な興奮とかしていない。耐えきれる、耐えきれる、耐えきれる……。

そして、最後にクロが仰向けに寝ている俺の上に乗っかってくる。体重を調整すると言う言葉の通り、クロの体は驚くほど軽く、重さは殆ど感じなかった。

しかし、重さは感じなくともクロの体の感触は伝わってくる。クロの顔が近く、鼻孔をくすぐるいい匂いが漂ってくるし、少しでも視線を体の方に向けると、浴衣の隙間からクロの胸が……あぁぁぁ!? やっぱ、駄目だ!? やばい、体中の血が沸騰しそう……。

三方向から感じる、それぞれ少しずつ違う感触。前を向いても美少女、横を向いても美少女……もう風呂から上がっているのに、のぼせてしまいそうだ。

なにより一番危険なのはクロ……先程から楽しそうな笑顔を浮かべているが、ふとももがデンジャラスゾーンに掠ったりしており、大変危険な状況だ。

「えへへ、カイトくんのおっきいね」

止めて!? 別の意味に聞こえるから止めて!? あと耳元で甘い声出さないで……吐息かかってるから、ヤバいから!

「……カイト」

「……カイトさん」

さ、さらに挟撃で追加攻撃だと……完全に俺の理性を殺しにきてる!?

な、なんとか精神を落ちつけ……ちょっと、クロ!? 『浴衣の隙間に手を入れるな』!? ど、どうしてこうなった……。

拝啓、母さん、父さん――アインさんの恐ろしい発言により、三人が俺にひっついて寝ることになってしまった。全身で感じる美少女達の感触は、温かく蕩けるようで――俺の理性を恐ろしい速度で溶かしてきた。