軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

惚れた弱味ってやつだろうか?

馬鹿への説教も終わると、同じタイミングでジークさんの方の説教も終了したみたいで、ボロボロのレイさんとフィアさんが立ち上がる。

「それにしても凄いものだね。六王様主催の祭りだから大がかりだろうとは思ってたけど……ここまでとは」

相変わらずの立ち直りと切り替えの早さで、レイさんは大きな会場となる都市を見つめながら呟く。

その言葉には全面的に同意できる。実際想像より遥かに凄まじい規模になりそうだし、中央にそびえ立つ塔は、天を突くほど大きい。

あそこに泊まるのかと思うと、ちょっと……いや、かなり委縮してしまうが、拒否権など無い。

「それにしても、流石は六王様……いったいどれだけのお金がかかっているんでしょう?」

「想像もつきませんね」

リリアさんが呟き、ルナマリアさんも神妙な顔で同意する。たしかに、あの中央塔一つだけでも桁外れの資材が使われているだろう。いったいどこからそんなに大量の資材を短時間で集めたのか……。

まぁ、本当にいまだかつて体験したことの無い規模のお祭りになりそうなことだけは確かだ。

「でも、これだけ巨大だと……回りきるのも難しそうね」

「ああ、確かに……シンフォニア王都ぐらい広そうですし……七日間では回り切れないかもしれませんね」

フィアさんの至極もっともな呟きに言葉を返す。この会場となる都市はあまりに大きすぎる。この都市すべてに出店等が並ぶとすれば、まず間違いなく半分も回れればいいレベルだろう。

考えて回らないといけないなと、そんな考えが頭に浮かんだが……直後にキャラウェイさんの口から、信じられない言葉が告げられた。

「……いえ、ミヤマ様。七日間ではなく一日ですよ?」

「……はい? いや、だって、六王祭は……」

「私も聞いただけですが……なんでも、六王祭は『一日ごとに中央塔と宿泊施設を除いた全ての出しものを切り替える』らしいんです」

「……」

キャラウェイさんの告げた言葉に、俺だけではなくここに居る全員が絶句した。

要するに、毎日全ての出店等を変更するってこと? いやいや、いくらなんでもそんな……。

「にわかには信じがたいですが、『建物も切り替わる』らしいです」

「……そ、そんなことが可能なんですか!?」

「わかりません。ですが、六王様方なら……ありえないとも言いきれません」

リリアさんが驚愕しながら尋ねると、キャラウェイさん自身も半信半疑なのか、戸惑うような表情に変わる。

けど、確かにキャラウェイさんの言う通り、俺達の常識では不可能でも、六王ならもしかしたらと、そう思ってしまう。

しかし、そうなると先程フィアさんが語った問題が、より深刻になる。

七日間かけても半分も回れないような規模の祭りが、毎日丸ごと切り替わるとなると……本当に少ししか楽しむことはできないだろう。

そうなると、ここは見て回りたいというアタリを付けて回るのが良いんだけど……この広さでは、どこになにがあるかすらわからな……。

「……」

そんな俺達の前を、複数の木材を持っててくてくと歩くアリス……なんか、このパターン見たことあるぞ?

アリスは俺の予想通り、トンカチを取り出し三度ほど気を叩くと……露店が出来上がる。

そしてその露店の看板には『コレでバッチリ! アリスちゃん特製六王祭ガイド~完全版~』と書かれている。

……やるじゃないか。需要を的確につき、全員がそれを望んだタイミングで提示……コレは買うしかない。

しかし、気になるのは値段……今度はどんだけふっかけて来るのやら……

戦々恐々としながら視線を動かすと、今回は値段の書いた木札を用意していた。そしてその木札に書かれてある値段は……。

『カイトさん・一冊100R 他の有象無象・一冊100000R』

俺は一冊1万円、他の人は1000万円……恐ろしいほどの格差であった。

いや、本一冊1万円という値段も高いには高いのだが、もう一方の価格設定がボッタくり過ぎで霞んでしまう。

「……あ、アリス? いくらなんでもそれは……」

「いえ、適正価格でしょう」

「……ルナマリアさん?」

「ミヤマ様と幻王様は、『この世界でも類を見ないほどのベストカップル』なので特別価格でも納得できます。しかし、そうでない場合、幻王様が書いた本というだけでも十分すぎる価値がありますし、内容は六王祭の完全ガイド……むしろ白金貨1枚なら、安すぎるぐらいでしょう。それほどまでに『幻王様は偉大な存在』なのです」

「……」

「あくまで、幻王様と『ベストカップル』であるミヤマ様が特別なのです」

なんだろう? なんかルナマリアさんがやたらアリスを持ち上げている。あとなんかやたらベストカップルを強調してる。

そんなルナマリアさんの言葉の意図は、すぐに理解することとなった。

ルナマリアさんの言葉を聞いた後、アリスは値段を書いていた木札を手に持ち、なにかを書きこんでから元の位置に戻した。

そして、追加された文は……。

『ルナマリアさん 1000R』

……大胆にも『99%OFF』、1000万の品が10万円である。よっぽどルナマリアさんの褒め言葉が嬉しかったと見える。

うん、さすがルナマリアさん……強かだ。でも、思ったんだけど……コレって……。

「なぁ、アリス……複数冊買ってもいいの?」

「カイトさんのみ可です!」

「……じゃあ、『俺が全員分買えば』いいだけか……」

「まいどあり~」

俺がそう呟くと、アリスはまるでそれが分かっていたかのような満面の笑みを浮かべる。

「……最初からそのつもりだったな?」

「……はて?」

……コノヤロウ。最初っから俺に全員分買わせるつもりだったな! 他の人用の値段とか書いてたけど、最初っからターゲットは俺一人じゃねぇか!?

本当にコイツ、対俺用の商売スキルだけ急成長しやがって……油断ならないやつだ。

拝啓、母さん、父さん――商売チャンスを逃さないアリスによって、またも思惑通りに買い物をさせられてしまった。なんとなく負けた気分ではあるが……俺から嬉しそうに金を受け取るアリスを見ていると、文句を言う気にもならない――惚れた弱味ってやつだろうか?