軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

クロの気持ちは素直に嬉しかった

帰って早々ルナマリアさんのお陰で疲れることになったが、その後はリリアさんに色々な報告……エデンさんの正体が、俺のいた世界の神であることなどをしっかり伝えておいた。

これで、エデンさんの正体言ってなくてリリアさんに怒られるというのは防げるだろう……ようやく俺も学習したな。

まぁ、そんなこんなで時間も夜になり、俺は自分の部屋に戻ってきたわけだが……。

「……うぅ……疲れたぁ……」

俺の部屋のベッドには、クロがまるでこのベッドは自分のものだといった感じで寝転がっていた。

その光景にも驚いたが、なによりも珍しいのはクロが本当に疲れているように見えること……クロは言うまでもなく圧倒的な力をもつ存在で、体力もそれに比例して化け物級。

少なくとも俺は、クロが目に見えて疲労しているのは初めて見た。

「……クロ? 大丈夫か?」

「うぅ~カイトくん~もう、久しぶりにくたくただよ。六王祭も準備も忙しいし、なにより地球神……カイトくんの世界の神ね。アイツ、本気で強いから性質悪いよ」

「あ、あぁ……エデンさんの件の疲れか……」

「……うん。本当にもう、あの神は……観光してくるっていったかと思ったら、即座にカイトくんのところに行ってたし……それで、カイトくんを困らせるなって叱ったのに……舌の根も乾かないうちに、また変なことしてたし……」

どうやらクロの疲労の大部分は、エデンさんが原因らしい。

まぁ、確かにエデンさんはシロさんに匹敵する力を持っているって話だし、それほどの相手と喧嘩すると、流石のクロでも疲れるらしい。

まだそれだけならいいのかもしれないが、クロは更に六王祭の準備の総括までしている。そうなると、本当に行ったり来たり……大変なんだろうなぁ。

「……そっか、お疲れ様」

「う~カイトくん。『癒して』」

「……」

おっと、労いの言葉をかけたと思ったら、とんでもないキラーパスが返ってきたぞ? 癒してくれ? なにその抽象的な要求……ハードル高過ぎやしませんかねぇ?

あ~でも、疲れてるクロの期待に答えてあげたいって気持ちは勿論あるし、えっと、え~と……癒す。癒すかぁ……。

期待を込めた瞳でこちらを見るクロを横目に見ながら、俺はしばらく考えた後……特にこれといった方法も浮かばなかったので、誤魔化しとして両手を広げて微笑んでみる。

俺にとっては苦肉の策であったが、クロは目をキラキラと輝かせ、弾かれるように俺の胸に飛び込んできた。

「ふぁぁぁ……カイトくん、あったかい~」

「う、うん。本当に大変だったよな……えっと、よしよし」

「ふみゅぅ……はぁ~もっと撫でて」

「はいはい」

俺の胸に頬を擦りつけながら、蕩けたような表情で抱きついてくるクロの頭を、出来るだけ優しく撫でる。

サラサラと手触りのいい銀髪を撫でつつ、甘えてくるクロを見て心が温かくなってくる気がした。

大人っぽく抱擁力があるのもクロの魅力だけど、こうして子供っぽく甘えてくれたりするところも、それと同じぐらい魅力的だと思う。

すっぽりと腕の中に収まる温もりを抱きながら、しばし俺はこの幸せなひと時を満喫した。

しばらく頭を撫で続け、クロが満足したところで雑談を始める。

まぁ、クロは満足したとは言っても「カイトくん成分を補給中なんだよ!」とかいって、俺の腕の中にすっぽり収まったままだけど……。

「そういえばさ、クロ……」

「な~に~?」

「いままで聞こうと思って聞けて無かったんだけど……記念品は、いったい……」

「うん?」

頭に思い浮かんだのは、六王祭の時に渡されるであろう記念品について。

たしか、最新式の魔導船だったかな? 聞くだけでとんでもない代物だ。

いや、まぁ、六王全員とんでもないものを用意してるけど……シンフォニア王国の王都近くに海は無いし、貰っても完璧に持て余しそうな船を送ってくるクロに、折角なので意図を聞いてみることにした。

「なんで、また、船なんか……仮に貰っても、置くところなんて……」

「ちなみに魔導船は、『この屋敷より大きいサイズ』だから!」

「……」

リリアさんの屋敷よりでかい船? 貿易業でもやれってか?

「でも、大丈夫だよ。ちゃんとその船が入る『マジックボックス』もつけるから」

「……は? マジックボックス?」

「うん、実はシロに魔力容量が桁違いに高い魔水晶を想像してもらってね……それに、ボクが『全力の魔力』で術式刻んだマジックボックスを用意してるから!」

困惑する俺の前で、可愛らしいドヤ顔を決めるクロだが……え? クロが全力で作ったマジックボックス? それ、明らかにヤバいやつだよね?

「……ち、ちなみに、そのマジックボックスの容量は?」

「う~ん。確かめてないからアレだけど……『島の三つや四つ』入るんじゃないかなぁ?」

「いやいや、おかしい!? なにそのふざけた容量!?」

「マグナウェルもすっぽり入るぐらいだよ!!」

「でかすぎるわ!?」

島が三つや四つ入るって、なにその化け物容量……いま使ってるマジックボックスでさえ、半分以上は余ってるのに、その上さらに桁違いのマジックボックスとか……。

しかも、俺のマジックボックスのほとんどは、マグナウェルさんが会うたびにくれる鱗だし……絶対持て余す。

それぐらい、クロも知ってると思うんだけど……なんで、そんな異常なサイズのマジックボックスを……。

――むぅ~カイトくんのマジックボックスは、ボクが作ってあげようと思ってたのに~

まさか……そういうことなのか? まさか……そのために?

「……クロ、もしかしてなんだけど……前のバーベキューの時のこと、根に持ってたんじゃない? だからワザと、俺がいま持ってるマジックボックスに入らないサイズの船を……」

「……な、なんのことかな~?」

「こっち見て話そうか?」

なぜ船を贈ろうとしていたのか……その実態は……実は船の方はおまけで、マジックボックスを贈りたいだけだった!?

だったら別に最初っからマジックボックスで良かったんじゃ……いや、普通のマジックボックスはそこまで高級品というわけじゃない。いくら実際は凄まじい性能とはいえ、招待状にマジックボックスと書くのは面子的な問題があるのかもしれない。

「……だって……カイトくんに、ボクの作ったマジックボックス……使ってもらいたかったんだもん」

「うぐっ……」

「……嫌だった?」

え? ここでそんなしおらしい顔しちゃうの!? そんな顔されると、文句なんて言えないんだけど……。

「いや、クロがマジックボックスを作ってくれたのは嬉しい! うん、貰ったら絶対そっちをメインに使う!」

「ほんと!?」

「あ、あぁ、そりゃ、可愛い彼女が作ってくれたものを嫌がるわけがないじゃないか……」

「か、可愛い彼女……えへへ、嬉しい」

くっそ可愛い。もう、船がどうとか、どうでもよくなった。

とにかくクロが愛らしいので、甘えてくるクロを強く抱きとめ……先のことは忘れて、たっぷりいちゃつくことにした。

拝啓、母さん、父さん――クロが六王祭で俺に船を贈るのは、実は新しいマジックボックスを贈るための口実だったみたいだ。しかしまぁ、驚きはしたけど、自分の作ったものを俺に使ってもらいたいとい。そんな――クロの気持ちは素直に嬉しかった。