軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

心は繋がっているから

エデンさんが帰った後、アリスと再びのんびり店番をして過ごす。

「ふへへ……白金貨が一枚、二枚……沢山……ふへ――ふぎゃっ!?」

「お前なぁ……」

「いいじゃないっすか、久々の売り上げですよ。これだけあれば……200回はギャンブルで『負けられます』ね――ぎゃぅっ!?」

「なんでワザと負けようとするかなぁ……」

エデンさんから貰った大量の白金貨を、非常に悪い顔で数えてニヤニヤしていたアリスをぶん殴る。

後もうべつにワザと負ける必要ないのに、ワザと負ける勘定しているのが……なんというか、やっぱりアリスはアリスだなぁって感じだ。

「……あっ、そう言えば忘れてました。カイトさんに渡すものがあったんです」

「渡すもの?」

「ええ……えっと、確かこの辺に……あっ、ありました!」

「……なにこのお金?」

俺に渡すものがあると言って、金貨が沢山入った布袋を渡してくる。

しかし俺の方はなんでこれを渡されているのか分からない……というか、アリスからお金を渡されるという異常事態に、頭がついていかない。

そんな俺の表情を見て、アリスはニコッと笑いながら説明をする。

「ほら、前にカイトさんのアイディア貰って作った布団……あれ滅茶苦茶売れてましてね。いや、まぁ、相変わらずうちには客こないんすけど……クロさんのところでは、製造が追いつかないぐらいらしいです。で、それは儲けの二割ですね」

「ふむ……う~ん。これ以上お金あっても仕方ないんだけどなぁ……」

「カイトさんも、贅沢覚えた方がいいっすよ~アリスちゃんにご飯を奢るとか、アリスちゃんに服を買ってあげるとか、アリスちゃんにアクセサリーを買ってあげるとか……そんな感じで!」

「全部却下」

「そこもうちょっと悩んでもいいんじゃないっすか!?」

ふざけながら話すアリスに突っ込みを入れる。なんだか、いつものやり取りって感じで、不思議と楽しくなってくる。

それはアリスも同じだったみたいで、俺とアリスは顔を見合わせて笑い合う。

「あはは、あ~やっぱ、この感じですね。でも、割と久々な気もします」

「アリスの様子がちょっとおかしかったからな」

「あ~そこは、すみません。でも、ほら、私もニューアリスちゃんになって成長してるんですよ?」

「ふむ、具体的には?」

「あの馬鹿神に殴りかかりませんでした」

「……う、う~ん」

なんとも微妙な成長である。というか、その、ニューアリスちゃんとやらになってなかったら、殴ってたのか……。

俺が微妙な顔をしていると、アリスはもう一度クスッと笑った後、軽く指を鳴らす。

すると雑貨屋の扉に鍵がかかる音が聞こえ、次に看板が「開店」から「閉店」に変わったのか、扉になにか当る音が聞こえた。

そしてアリスは、仮面を外して素顔になり、少し恥ずかしそうに頬を染めながら口を開く。

「……まぁ、冗談はさておき……ちょっと前までの私なら、あの神ともっと険悪になってたと思います。カイトさんを守らなきゃって……いまこうして、落ち着いてみるとよく分かります。私、焦ってたんでしょうね」

「……いまは、違うんだろ?」

「……はい。カイトさんを守るって気持ちには、変わりはありませんけど……少しだけ、変わりました」

そう言いながら、アリスはそっと俺の手に自分の手を重ね。いわゆる恋人繋ぎの状態にしてから、言葉を続ける。

「……いまは、自分を追い込むのはやめにしました。私は『カイトさんと一緒に居るこの幸せを守りたい』……ってことは、ちゃんと自分のことも守らなくちゃいけませんからね」

「……うん。そうだな……」

「まぁ、でも、カイトさんも知っての通り……私は馬鹿なので、カイトさんにもいっぱい助けてもらうことになりそうです」

「ああ、俺も……力って面じゃ無理だと思うけど、アリスの心をしっかり支えてあげたい。アリスが俺と居て、幸せだって感じる気持ちを守っていきたい」

アリスの決意を聞き、俺は強く手を握り返しながら自分の想いを伝える。

するとアリスは、なにも言わずにゆっくりと俺にもたれかかってくる。

繋いだ手と肩から感じる優しい温もり、俺もなにも言わずにじんわりと心の奥から広がるような幸せに身を預ける。

始まりの出会いは、俺にとっては偶然で、アリスにとっては作為的。訪れた雑貨屋で初めて見た猫の着ぐるみのインパクトは、いまでもはっきり記憶に残っている。

いま思い返してみれば、それは俺に強く印象付けようとする目論見もあったのかもしれない。

実際俺は、その後もアリスの雑貨屋を訪れ、彼女と友人のような関係を築いた。

馬鹿な言動に何度も呆れさせられ、計画性の無い行動に説教をしたりもした。けど、よくよく考えてみれば、俺がこの世界に来てから、全く取り繕うことなく自然体で会話をしたのは、クロに続いてアリスが二人目。

だからだろうか? アリスとしてはそこで俺と関係を断つつもりだった誘拐……そしてアリスの裏切り。それに対しても、憤慨するよりも「ああ、この子に裏切られたのなら」と、許してしまう気持ちの方が大きかった。

それはもう、あの時には……アリスという存在は、俺にとってとても大切なものだったんだろう。

アリスが幻王であると分かってからも、俺がアリスに対する態度は変わらなかった……いや、変えるつもりもなかった。

俺にとってアリスは、六王の一角というより……やっぱり、大事な友達という印象が強かったから……。

そんなアリスと恋人同士になるとは、少なくともその時は欠片も予想していなかった。

くだらない軽口をたたき合い、苦笑しあうような関係のまま、ずっと続くのだと思っていた……いや、思い込もうとしていたのかもしれない。

アリスのことをいつからか女の子と意識していて、何気ないしぐさを可愛いと思ったのも一度や二度じゃなかった。

それを気付かないふりをしていたのは、恋人同士という関係に変わることで……いままでのような気安い間柄が変わってしまうんじゃないかって、アリスだけじゃ無く俺も無意識に思っていたからだろう。

だけど、それは、結局杞憂で、よりいい方向に変化したと思う。いまもこうして軽口を叩きあい、そして苦笑しあって……そこに愛情が加わったことで、その一つ一つを幸せに感じるようになった。

きっと、これからもそうだろう。気楽な友人であり、愛しい恋人であり……守ったり、守られたりしながら、一緒に歩いていく。

それは考えるまでもなく幸せなこと……だからこそ、俺もしっかり頑張って、アリスの心を守ってあげよう。

この幸せな関係が……いつまでも続くように……。

「……カイトさん」

「うん?」

「呼んだだけです」

「……なんだそれ」

「ふふふ」

「ははは」

「……カイトさん」

「……うん?」

「……ずっと一緒に居てください。私を一人にしないでください」

「大丈夫。一人になんかしない。約束する」

「はい」

「……」

「……」

「……カイトさん」

「今度はなんだ?」

「……大好きです」

「……俺もだよ」

拝啓、母さん、父さん――馬鹿みたいに明るくて、呆れるような発言もあって、溜息もいっぱい吐いたと思うし、これからもそうだろう。だけど、それを嫌とは思わない。なぜなら、確かに、俺とアリスの――心は繋がっているから。