軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悟りをひらけるんじゃないだろうか?

神域……それは神界において、最も神聖な場所。

神界で最も高い位置に存在する小さな浮島であり、そこへは最高神であってもシロさんの許可なく立ち入る事は出来ない。

クロノアさん、フェイトさん、ライフさんに連れられて辿り着いた神域は、あまりにも美しく、そして神々しく感じた。

生える草花、吹く風、所々にある白石……そのバランスが絶妙で、その景観を崩す事は大罪であるようにさえ感じる。

「……綺麗な場所ですね」

「無論だ。ここは、シャローヴァナル様の住む地……この世の大半の生物は見る事すら叶わぬ場所だ」

「ここにある植物は、シャローヴァナル様の魔力の影響を多少ながら受けています。故に神々しく、美しく、汚れない景色を保っているのですよ」

ゆっくりと歩きながら、思わず口から零れた台詞にクロノアさんとライフさんが軽く説明をしてくれる。

シロさんという絶対者が存在しているからこそ、この神域は美しいのだと……

神域の雰囲気に押されて、どこか真剣な空気の中で進んでいくと……以前見た空中庭園とでも言える場所。神界が一望できる位置に銀白色の髪を輝かせている女神の後姿が見えた。

それはもはや一枚の絵画のようで、目にしただけで思わず息を飲むような美しさ。

なんだか緊張してくるのを感じながら近付くと、シロさんはゆっくりとこちらを振り返る。

「こんにちは、快人さん」

「こんにちは、シロさん。今日はお招きいただいてありがとうございます」

「いえ……快人さんの世界の神は、頑固ですね」

「……うん?」

おっと、なんか会うなり訳の分からない事言い始めたぞ……俺の世界の神? 頑固? いつもの事ではあるが、この方は一体なにを言ってるのだろうか?

そんな俺の疑問を当然のことく読み取ったシロさんは、無表情のままで一度頷く。

「尤もな疑問だと思います……では、移動しましょうか」

「……」

うん。分かってた……分かってたけどね!? やっぱり、答えてくれる訳じゃないのか!?

「現時点では、快人さんに関係ある話ではありませんし」

「って事は、後々では関係してくるって事ですか?」

「はい」

「じゃあ、やっぱり気になります」

「時が来れば話します」

「……はぁ、分かりました」

やっぱりシロさんはよく分からないが、まぁ、最終的には話してくれるみたいだし……問題無い……のかな?

ともあれ、これ以上聞いてもシロさんが答えてくれるとは思えなかったので、俺は頷き最高神の三方達と一緒に、シロさんに続いて移動する……

どこへってのは、野暮な質問かもしれない。温泉作ったって言ってたもんなぁ……

「……シロさん」

「なんですか?」

「物凄く沢山突っ込みたい事があるんですが……まず一つ。あの生えてる木はなんの木ですか?」

「『モミジ』と『イチョウ』です」

「……」

シロさんに案内された場所には、シロさんの言葉通りそれはもう見事な温泉があった。

次々と湧き出る白く濃い濁り湯の源泉、絶妙なバランスで並べられた岩の浴槽……そして、美しく紅葉したモミジにイチョウ……

俺の知る限りこの世界にモミジやイチョウは存在しない。似た植物はあるのかもしれないが、シロさんに聞いてみるとモミジとイチョウである事が確定した。

「……もしかして、それも俺の記憶を読んで造りました?」

「はい」

「……あそこにある『ししおどし』にしか見えないものは?」

「ししおどしです」

「……」

ししおどしまで用意する完璧っぷリに、俺の後ろに居るクロノアさんも頭痛を必死にこらえている。

「……じゃあ、あの温泉宿に見えるものは?」

「温泉宿です。卓球台もあります」

「……それも……造ったんですか?」

「はい」

やっぱり滅茶苦茶だよこの方!? ここだけ、完全に日本じゃねぇか!? 卓球台まで造る拘りよう……流石シロさんというべきか……

「褒めて頂いて嬉しいです」

「……呆れてるんですよ」

相変わらずのシロさんの自由さに茫然としていると、そこまで黙っていたフェイトさんが軽く手をあげながらシロさんに近付く。

「シャローヴァナル様! 少しよろしいでしょうか?」

「発言を許可します」

「はっ! シャローヴァナル様は、こちらの浴槽にてなにをなさるおつもりでしょうか? 思慮の足りぬ私にもお教え頂けるとありがたいです」

……やっぱ、シロさんの前だとフェイトさんも真面目というか、本当にキビキビした様子で話すので、完全に別人に思える。

そんなフェイトさんの言葉を聞いたシロさんは、一度大きく頷き抑揚のない声で告げる。

「快人さんと混浴します。時空神も一緒に入る予定です」

「え? クロノアさんも?」

「……」

シロさんと一緒にお風呂に入るというのは、事前にシロさんから聞いていたし……納得した訳ではないが、断るのは無理だと諦めていた。

しかしクロノアさんも一緒に入るというのは初耳で、慌ててクロノアさんの方を振り返ると……クロノアさんは全てを諦めた表情で虚空を見つめていた。

「……シャローヴァナル様の意向は、全てに優先される」

「……」

不憫すぎる……正直シロさんだけでも、俺の理性は極限の戦いを強いられる事が予想できるのに、ここでスレンダー美女であるクロノアさんも加わるとは……正直避けたい気持ちでいっぱいだったが、クロノアさんが曲りなりにも了承しているのなら、それも難しい。

「成程、理解いたしました。シャローヴァナル様……お許しいただけるのでしたら、私も入ってもよろしいでしょうか!」

「ちょっと……フェイトさん?」

「このチャンス、逃す手はないよね! カイちゃん、私はおさわりOKだからね!」

「……いや、そういう事じゃなくて……」

シロさんの前で片膝をついていたフェイトさんが、自分も入ると言い始めた。

やめよう……いや、本当に、それ理性がヤバいから……フェイトさんも凄く可愛い方だし、物凄くグイグイ来るので恐ろしい。

「入浴を許可します」

「シロさん!?」

「はっ! ありがたき幸せです!」

だがそこは天然女神、俺の葛藤など知らぬ様子でアッサリとフェイトさんに入浴の許可を出す。

クロノアさんもその会話を聞いて、驚愕した表情を浮かべながらフェイトさんに話しかける。

「なっ!? 運命神!?」

「シャローヴァナル様、お許しいただけるなら私も運命神と同じく入浴を許可して頂きたいのですが……」

「生命神!?」

「許可します」

「ありがとうございます」

え? ちょっ、ちょっとまって? なにがどうなってるのこれ? なんでライフさんまで一緒に入る事になってるの?

フェイトさんはまだ分かる。あの方は事あるごとに、既成事実を作ろうというか……俺に手を出させようとしてくるから、しかしなんでライフさんまで……

「運命神! 生命神! き、貴様等、しょ、正気か? 貴様等に羞恥という感情はないのか!!」

「うん? あるに決まってるじゃん。でも、カイちゃんは私の未来の旦那さんな訳だから、私はカイちゃんになら見られても全然OK」

「最高神である私の役割は、シャローヴァナル様とミヤマさんが楽しく入浴出来るよう取り計らう事。ならば身近でサポートする為に、共に入浴するのが合理的です」

「……なっ……あっ……」

さも当然と言いたげに言葉を返すフェイトさんとライフさんを見て、クロノアさんは唖然とした表情で口をパクパクと動かす。

なんて言うか、本当にクロノアさんが可哀想過ぎる……けど、俺もこの件に関しては他人事ではない。

全員美女である最高神に、存在自体が美の象徴みたいなシロさんと混浴……理性はもう戦う前から膝をついている。

「ラッキースケベというやつですね」

「コレはラッキーじゃなくて、作為的なものですからね!」

「そうなんですか?」

「なんで! シロさんが! 首を傾げてるんですかあぁぁぁ!!」

拝啓、母さん、父さん――混浴に関してはコレが三回目。普通場数を踏めば慣れてくるものだけと、コレに関しては一向に慣れる気がしないというか、もう始まる前から目眩がして来たんだけど……というか、俺、もしこれを耐えられたら――悟りをひらけるんじゃないだろうか?