軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

普段は寝てばかりらしい

暴走したフェイトさんを止めに……もといボコボコにしに来たクロは、フェイトさんをボロ雑巾のようにしてから帰って行き、アリスも姿を消した。

フェイトさんは見るも無残な姿になっており、うつ伏せの状態で俺とクロノアさんの前に倒れていた。

「……生まれてきて、すみません」

「……」

もうボロボロである……まぁ、フェイトさんの事だからすぐ復活するとは思うんだけど……

そしてクロノアさんはフェイトさんの様子を見て、大きく溜息を吐いた後で俺の方を向く。

「さて、次は生命神の神殿に向かうか」

「……ちょっと……時空神? リアクションなし? この状態の私を無視?」

「うん? 仕事はしておけよ」

「ちょと、待って! 私も一緒に行く!!」

呆れながら告げるクロノアさんの言葉を聞き、フェイトさんはガバッと体を起してクロノアさんに宣言する……早いな、復活。

「別に案内は我だけで事足りる」

「あぁぁ!? そうやって、カイちゃんの事一人占めにして、あわよくば四人目の恋人になろうとしてるんでしょ!!」

「そんな訳があるか! たわけ!!」

「ともかく私もついて行く! 仕事はしない! はい、決定!!」

「……貴様……」

完全にいつもの調子に戻ったフェイトさんは軽く指を振り、どこからともなく空中に浮かぶクッションを出現させると、それに乗ってフワフワと俺とクロノアさんについてくる。

こうなると説得が無理なのは、クロノアさんも長い付き合いだけあって分かっているみたいで、再び大きなため息を吐いて肩を落とす。

「……しかし、アレだね。冥王怖いね……死ぬ直前まで痛めつけて、全回復させてからまた痛めつけるって……悪魔だよアイツ……」

「何回、回復させられたんですか?」

「……48回……もう途中でいっそ殺してくれって思ったよ……」

「自業自得であろうが……」

どうやらクロは相当怒っていたみたいで、それはもう拷問かと思えるような痛めつけ方をしたらしい。

まぁ、以前「次やったら許さない」的な事を言っておいて、その上で今回の件だから、フェイトさんの自業自得で間違いないんだけどね。

まぁ、絶対、100%……懲りて無いだろうけど……

「ねぇ、カイちゃん。慰めて……優しく抱きしめてくれてもおっけ~だよ?」

「む? 冥王、戻ってきたのか?」

「ぴぃっ!? どど、どこ!? 冥王、どこ!?」

どうやらフェイトさんは、完璧にクロがトラウマになっているみたいで、クロノアさんの嘘を聞いて青ざめた顔で周囲を見渡す。

「……って、いないじゃん!?」

「ふむ、コレはこれで使えるかも知れんな……」

「時~空~神~!」

「いや、すまん。が、貴様はもう少し反省しろ」

フェイトさんの神殿を出た後、次はライフさんの神殿へやってきた。

神殿の外観はフェイトさんのものと全く同じだったが、中に入ると広い廊下の両サイドに、美しい花や観葉植物らしき木々がズラリと並んでおり、華やかな美しさが目を引いた。

そういえば、俺ってライフさんとはまだあまり話した事が無いんだよな……以前一度会って、挨拶をした感じだと穏やかな出来る女性って感じだったけど……

「ねぇ、時空神……どうせ寝てるから、無駄じゃない?」

「……分かってはおるが、訪ねぬわけにもいかんであろう?」

どうせ寝てる? どういうことだろう? 休憩時間って事なのかな?

「そう言えばさ、カイちゃんはなんで神界に来たの? いや、まぁ私としては大歓迎だけどさ」

「えっと、シロさんに招待されました」

「シャローヴァナル様に? って事は、カイちゃん神域に行くんだ……流石カイちゃん、快挙だよ。ねぇ、時空神、人族が神界に立ち入るのって初めてじゃない?」

「うむ……というより、我ら以外では冥王しか立ち入っておらぬ」

「だよね~『ヒカリン』の時は、私達が仲介したから神域には入ってないしね」

やはりシロさんが住む神域は、神界の中でも特別神聖な場所らしく、いまだかつて人族で立ち入ってものはいないらしい。

たぶんフェイトさんが言ったヒカリンってのは……ノインさんの事だと思うが、初代勇者のノインさんでさえ神域には入っていないらしい。

そんな話をしながら廊下を進み、大きな扉の前に立つとクロノアさんがノックしてライフさんの名前を呼ぶ……が、返事はない。

「……とりあえず入るか」

「だね~」

「え? いいんですか?」

「うん、どうせ寝てるし……」

どうやら二方にとって返事が無いのは予想通りらしく、大きな扉を開いて中に入っていく。

俺もやや戸惑いながらそれに続いて中に入ると、様々な植物で彩られた広い部屋が映った。

落ち着いた大自然の部屋といった感じの空間の中央……部屋のど真ん中に、見覚えのある緑髪の女性ライフさんが悠然と立っていた……が、目は開いていない。

「おい、生命神、客だ」

「……すぅ……すぅ……」

「……まぁ、そうだよね。生命神が起きてる訳ないよね」

え? これ、立ったまま寝てるの? 凄いっていうかなんていうか……器用だなライフさん。

そしてクロノアさんが体を揺すったりしていたが、ライフさんが起きる気配は全く無い。

「……駄目だな」

「無理だって、一度寝た生命神が、そう簡単に起きる訳ないよ……ほら、もう行こう」

「あっ、じゃあ、一応挨拶だけ……」

どうやら一度眠ったライフさんを起こすのは至難の業らしく、クロノアさんもフェイトさんも首を横に振る。

ただそれでも折角来たので、寝ているとはしても挨拶だけでもとは思い、ライフさんに近付いて口を開く。

「ライフさん、こんにちは」

あまり大きな声では無く普通に呼びかけるように話しかけると、ライフさんは瑠璃色の美しい瞳を開き、穏やかに微笑みを浮かべた。

「こんにちは、ミヤマさん」

「……なに?」

「……生命神が……起きた?」

先程までクロノアさんが苦心していたのは、いったい何だったのかと思う程アッサリとライフさんは目を覚まし、唖然としたようなクロノアさんとフェイトさんの声が聞こえてきた。

俺自身まさか起きるとは思っておらず、思わず言葉に詰まってしまったが……ライフさんは、穏やかな微笑みを浮かべて言葉を続ける。

「神界に来ていたのですね。申し訳ありません、日課の『瞑想』をしておりまして、気付くのに遅れてしまいました」

「え? あ、はぁ……」

「……物は言いようだよね」

「……寝ていただけであろうが……」

ライフさんの言葉を聞いて、クロノアさんとフェイトさんは以前どこかで聞いたような言葉を発する。

しかしライフさんは特に気にした様子もなく、穏やかな微笑みを浮かべたままだ。

「こうしてまたお会いできて、とても光栄に思います。先日はシャローヴァナル様の望みを叶えてくださり、本当にありがとうございます。神族の一員として、心よりお礼申し上げます」

「い、いえ、そんな……」

「……凄いよ。時空神……生命神が、まともな神に見えるよ」

「……よもや別人ではあるまいな?」

またも以前に聞いたような会話が聞こえてくる。

どうやら現在のライフさんの様子は、二方にとっては信じられないものらしい。

「ミヤマさん、お時間があるようでしたら簡単ですがお茶の用意を致しますが?」

「え、えっと……そうしたいのは山々ですが、シロさんに呼ばれていますので、あまり長居は……」

「成程、シャローヴァナル様の元に……では、ミヤマさんさえよろしければ、私も同行しましょう」

「「……え?」」

フェイトさんと同じく、ライフさんも同行を申し出てくれると、後方からクロノアさんとフェイトさんが声が聞こえた。

チラリとそちらを見てみると、二方とも信じられないものを見たと言いたげに茫然としている。

「……生命神、一体どういう風の吹きまわしだ? 貴様が自ら神殿を出ようとする等……というか、貴様、ミヤマに対してだけ態度が違い過ぎんか?」

「なにを、言っているのですか? ミヤマさんはシャローヴァナル様の祝福を受けた方ですよ? ならばシャローヴァナル様に連なる存在として、最大限の礼を持って接するのは当然のことです。神界にとっても極めて重要な来賓……不測の事態に対応する為に私が同行するのは、おかしい事ではありません」

「むっ、むぅ……そ、それは確かに……」

「時空神が生命神に正論で黙らされるとか……初めて見たよ」

なんだろう? 俺は普段のライフさんを知らないからかもしれないが……普通にライフさんって出来る女性って感じだよな?

クロノアさんやフェイトさんの言い方では、普段とは違うみたいだけど……

っとそんな事を考えていると、クロノアさんは真剣な表情で口元に手を当て何かを呟き、そして俺の方を向く。

「……ミヤマ……やはり、お前、神界に住まぬか? 衣食住は我が保証するし、給与も日に金貨1枚出そう……仕事は一日一回、運命神と生命神に仕事をしろと言うだけで構わん!」

「……」

本当にこの方は、普段からどれだけ苦労してるんだ? 日に100万出して雇いたいとか……よっぽど切実な問題らしい。なんか、聞いてて涙出そうになってきたよ……

拝啓、母さん、父さん――フェイトさんの神殿の次は、ライフさんの神殿にもやってきた。ライフさんは俺の前では本当にしっかりした女性に見えるけど、二方の話では――普段は寝てばかりらしい。