作品タイトル不明
フェイトと旅行⑦
おやつを食べて二戦目のゲーム。一回目と同じくかなり接戦になったのだが、今度はフェイトさんが勝利し一勝一敗という結果に終わった。
その後は俺が本当に簡単な夕食……いや、まったく特筆すべきものでもなんでもない料理を作ってフェイトさんと一緒に食べた。
そして食事が終わった後は、考えていた通りフェイトさんと一緒に星でも見ようかと思ったが、まだ日が沈んだ直後であり、少し時間を置いてからの方が星も綺麗に見えるだろうと、先に入浴することにした。
「フェイトさん、お風呂の準備をしてくるのでどうぞ先に入ってください」
「え? 一緒に入ればいいじゃん」
「…………え?」
「いや、だから、別々に入らなくても一緒に入ればいいじゃん」
さて、困ったぞ……どうしよう。なんか凄くあたり前みたいな感じで言ってきたのでキョトンとしてしまった。
「カイちゃんは私と一緒に入るのは嫌?」
「い、いや、別にそう言うわけじゃないんですが……むしろフェイトさんの方は、大丈夫なんですか?」
「え? 前にも一緒に入ったじゃん」
「……それはまぁ、そうなんですが……」
困った……いまのやり取りでほぼ論破されてしまった。俺はフェイトさんと一緒に入浴するのが嫌ではなくて、フェイトさんの方も問題ない。
コテージの風呂はかなり広く、ふたり一緒に入る程度余裕の広さ……。
「じゃあ、問題ないね!」
「……そう、ですね」
断る理由がなくなり、笑顔のフェイトさんに圧される形で了承の言葉を返してしまった。
そのままふたりで風呂場に移動しとりあえず、俺が先に浴室に入る。フェイトさんにはくれぐれもタオルを巻いておいてもらえるようにお願いしておいた。
風呂は木造りであり、檜というわけではないだろうがなんとなくそれっぽい雰囲気で、いい感じだ。
かなり広めとはいえ、それでもやはり温泉とかに比べると小さ目だ。というのも、この観光地は基本的にひとりないし少数での利用を目的とした場所なので、あまり大人数で利用するようにはなっていないのだろう。
それでもところどころに高級感があるし、作りもかなり拘っているような気がする。
「カイちゃん、きたよ~」
明るい声が聞こえて振り返ると、こちらの要望通りにタオルを巻いてくれたフェイトさんがいた。しかし、その見た目はかなり強烈だ。
こうしてみるとやっぱりフェイトさんの胸はかなり大きと感じるし、普段はツインテールにしている髪も解いているので、雰囲気がかなり違う。
「そうだ、カイちゃん、背中流して~」
「えぇぇぇ!?」
「いいじゃん、あとで私も……軽めに流してあげるから、よろしく~」
フェイトさんは明るいテンションで告げながら、手早く椅子を用意してこちらに背を向けて座る。
そのあまりに速い流れに圧倒されてしまったが、フェイトさんをそのまま放置するわけにもいかず、俺は諦めてスポンジを手に持って近づく。
「……えっと、それじゃあ、背中洗いますね」
「わ~い、よろしくね!」
「じゃ、じゃあ、失礼します」
フェイトさんがタオルを外そうとするのが見えたので、素早くしゃがんで上から見下ろす形にならないように注意しつつ、出来るだけフェイトさんの背中だけを視界に映す。
スポンジにボティソープを沁み込ませ、浴槽から桶で湯をすくって温度を確かめつつ、一度フェイトさんの背中にお湯をかける。
「熱くないですか?」
「ううん、丁度いいよ」
「じゃ、洗いますね」
泡の付いたスポンジをフェイトさんの白く綺麗な背中に当てると、スポンジ越しでもフェイトさんの肌の柔らかさとかが伝わってくるような気がして、顔が熱くなっていくのを感じた。
「力加減はどうです?」
「う~ん、もうちょっと強めでも大丈夫だよ」
「了解です」
少し確認をしつつ、フェイトさんの背中をしっかりをこすり、全体に泡が広がったタイミングで再び桶でお湯をすくう。
「それじゃあ、流しますね」
「え? ちょ、ちょっとまった!? カイちゃん、なんか忘れてない?」
「忘れてる? どこか洗い忘れとかありますか?」
「いやいや……とりあえずこっちに手を伸ばして、両手ね!」
「手を伸ばす? こうですか?」
フェイトさんの言葉の意図がよく分からないが、とりあえず言われた通りに、後ろからフェイトさんの顔付近に手を伸ばす。
手を伸ばしてどうするのだろうかと、そんなことをぼんやり考えていると、不意にその手がフェイトさんに掴まれグイっと体が引き寄せられる……え?
フェイトさんと俺では大きな力の差があり、当然引っ張られるままに俺の体は前に傾く。するとどうなるだろうか、俺の体はフェイトさんを後ろから抱きしめるような形で密着する。
「ちょっ!? え? フェフェ、フェイトさん!? なな、なにを……」
「あれ? こうやって体に泡を付けて洗うとか、カイちゃんの世界には、そういうのがあるんじゃないの?」
「いやいや、そんなの情報どこから!?」
「ああ、シャルたんが六王祭の時にカイちゃんがアインにそうやって背中流してもらってたって聞いたんだけど?」
……アリス、アイツ絶対あとでぶん殴る。
「たしかにソレは間違いでは無いですが、この状況はかなり間違いというか……」
「うん? よく分からないけど、これいいね。服着てないからか、普段よりカイちゃんの温もりが感じられて、なんか幸せだよぉ」
「~~~!?!?」
この人ワザと言ってるわけじゃなく天然? 天然で言ってるの? 言ってるっぽいな……前にマッサージした時みたいな、こっちをからかうような感じはない。
「う~ん、でもやっぱり後ろからよりは、私は正面から抱き着く方が好きだなぁ……」
「え? ちょっ、フェイトさん!? なにやってるんですか! なに体の向き変えようと……手! 手を放してください!! さすがにそれはまず――ッ!?!?」
そこから先は頭が真っ白になって、あまりあれこれ考える余裕がなかった……ただ、ものすごく柔らかい感触に反して、俺の思考も体も完全に固まってしまったことだけは確かだ。
……思えば、フェイトさんはなんと言うか、恋人らしくいちゃいちゃしたりするのに関しては恥ずかしがったりとかもあったが、前の入浴の時もそうだったが、そっちの方面に関してはあまり羞恥心が無いというか、ものすごく積極的だった……なんて恐ろしい方なんだ。