軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

薔薇姫の来訪①

宮間快人の家の前……庭に繋がる門の前にひとりの人物が佇んでいた。快人の家に関しては、リリアの屋敷と違い門番はいない。

もっと正しく言うならば一応形式上は居ないというべきだろう。快人の家の庭がはリリアの屋敷と繋がっていることもあって、リリアの屋敷の門番が一応快人の家の門の方も気にかけてはいる。

とはいえ、基本的には来客があったとしても『別のもの』が対応するので、本当に少し気にかけている程度だ。

そして現在、快人の家の門の前にいる人物を見て、門番はどうするべきか迷っていた。その相手はかなり高名な相手であり、かつ気難しいと有名な存在なので迂闊に声をかけて問題になるわけにもいかない。

かなりのビックネームである以上快人を訪ねてきた可能性が高いのは確かなのだが、なぜ門の前で一歩も動かずに立ち続けているのかもさっぱり分からなかった。

そんな視線を向けられている来訪者……ロズミエルは、門の前でかなり悩んでいた。

(ど、どど、どうしよう。この前のお礼に、訪ねては来たものの……どうやってカイトくんを呼べばいいんだろう? あっちの門番に声をかけるとか絶対無理だし……ハ、ハミングバードでカイトくんを呼ぶしかないのかな? も、門の前まで出てきてもらうのは失礼な気がするけど、他に方法が無い以上仕方がないし……)

極度の人見知りであるロズミエルは、白神祭で快人に永久の花を譲ってもらったお礼に訪れたまではよかったのだが、どうやって快人に取り次いでもらおうか思案していた。

いちおう今日訪ねるということは事前にハミングバードで伝えているので、門番なりに一声かければそれで問題ないのだが、その一声が彼女にはハードルが高すぎた。

仕方なくハミングバードで快人を呼び出そうと考えたタイミングで、ロズミエルの前にネピュラが出現した。

「こんにちは」

「……」

目の前に現れたネピュラを、ロズミエルは腕を組んだ姿勢のままでギロリと睨みつける。ただし、その態度とは裏腹に心の中では軽くパニックを起こしていた。

(あわわわ、しし、知らない人来ちゃった……どどど、どうしよう。せ、精霊かな? そういえば、リリウッド様がカイトくんの家の世界樹に精霊が宿ったって言ってたような……)

険しい表情のままで硬直するロズミエルを見て、ネピュラは一度首を傾げたあとで思考を巡らせる。

(……表情、視線の動き、魔力のブレ……なるほど、極度に人見知りをするタイプか。この感じだと、緊張で硬直して会話やジェスチャーもままならぬレベルとみた。ふむ、まぁ、絶対者たる妾にはまったく問題のない相手ではある)

優れた洞察力でロズミエルが重度の人見知りであることを見抜いたネピュラは、どこからをも書く1~3の数字が書かれた紙を取り出してロズミエルに見せた。

「話すのが苦手なのでしたら、こちらでお答えください。いまからいくつか尋ねますので、肯定なら1に否定なら2に、そのどちらでもないのなら3に『視線を送ってください』。妾にはそれで分かります」

「……」

「では、まずこの家に用があっていらっしゃったのですか?」

「……」

顔は完全に固まっていようとも、視線ぐらいは動かせる。ネピュラの言葉を聞いたロズミエルは1の数字に視線を送る。

「では続けて、家主である主様……宮間快人様への御用ですか?」

「……」

「ふむふむ……貴女は主様のお知り合いですか?」

「……」

「なるほど、わかりました。それでは主様に取り次ぎますので、中へどうぞ」

ロズミエルの視線の動きで目的を読み取ったネピュラは、門を開いてロズミエルを招き入れる。ロズミエルが怯えて後退するほどではない絶妙な距離を保ちつつ……。

そのまま庭を歩いて家に向かっていると、不意にロズミエルが庭にある花壇に視線を向けた。その時の目の変化からロズミエルの嗜好をすぐに察したネピュラは、再び数字の書かれた紙を取り出して明るい笑顔で声をかける。

「……庭に興味がおありでしたら、主様に来客を伝えてきますので、それまでの間見学されますか?」

「……」

「はい。問題ありませんよ。ただし、家の裏手には主様が飼っている魔物の小屋があります。しっかり躾けられてはいますが、念のために屋敷の裏にはいかないようにしてください」

「……」

「では、主様に取り次いでまいりますので、少々お待ちください」

笑顔でそう告げて家の中に入っていくネピュラを見送り、ほっと息を吐いてからロズミエルは庭の花々に視線を向けた。

(ほ、本当に助かった。凄い子だなぁ、なにも言わなくても私が人見知りなのにも気付いてたみたいだし、リーリエ様みたい。そ、それにしても、凄いなぁ……ここの花たちはすっごく生き生きしてる。それぞれの花の魅力を十二分に引き出してるし、凄く腕のいい庭師がいるんだろうなぁ)

いまは周囲に人がいないこともあって、花を見つめるロズミエルの表情は柔らかいものだった。