軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

74.経験値を形にする

「ヨーダさん! ヨーダさん大丈夫です!?」

仰向けになっていると、真上からエミリーの必死な顔が見えた。

やってきた彼女は倒れているおれを見つけて、心配しているらしい。

「大丈夫だ」

「でもケガいっぱいしてるです」

「そんなのはこうすれば――」

ちょっとぎこちない動きで銃に回復弾を装填して、注射器のように自分の腕に撃つ。

回復弾が効果を発揮して、ケガが治って体力が回復した。

体をおこす、うん、これで大丈夫。

「よかったです……何があったですか?」

「それよりも……」

まわりを見る、だいぶ遠いところにマミーが現われていた。

「モンスターが出てる。エミリー、街のドロップは」

「あっ、はいです。それを知らせに来たです。ついさっき全部のダンジョンにドロップが戻ったです」

「やっぱりな」

「やっぱりヨーダさんが戻したです?」

エミリーは驚き半分、尊敬半分の表情をして言った。

「ああ、さっきまでここにダンジョンマスターがいたんだ。ニホニウムのダンジョンマスター、どうやらそいつが全部のドロップをなくしてたらしい」

「あ……なにもドロップしないニホニウムのダンジョンマスター……」

「そういうことだ。しかしやっかいな能力だな、街の全ドロップに影響するとか自然現象かよ。影響で言ったら魔力嵐以上じゃないか」

「天災なのです。でもヨーダさんはそれをとめたです」

「なんとかな」

今回はギリギリの勝利だった。

まあでも、攻略法らしいものは見つかった、次があったらもっと楽に倒せるかもしれない。

「さて、報告に戻るか」

「ちょっと待つです、あそこになにか落ちてるです」

「これは……ダンジョンマスターのドロップか?」

おれは、地面に落ちている指輪を拾い上げた。

ダンジョン協会の中、ダンジョン長・クリントがおれの手をガッチリ掴んだ。

「ありがとう! 本当にありがとう! キミのおかげでシクロは救われた!」

「大げさじゃないのかそれ」

「大げさなものか! キミは知らないと思うが、ドロップがなくなっている間に街の店から品物が消えたんだ」

「セレストから聞いた、野菜が生産されないから買い占められたんだって」

「野菜だけじゃないのだ、その後他の品物にも買い占めが起きたのだよ」

「本当か!?」

「それほど皆パニックを起こしていたのだよ。あのままドロップ無しが続いたら何がどこまでエスカレートするのか想像もつかなかった。だから」

クリントは更におれを見つめた。感謝100%が込められた視線で手が痛いほど握りしめられた。

「本当にありがとう!」

「……おれもドロップがないと困るから、あたり前の事をしただけだ」

「それでもシクロが助かったのは間違いない。お礼をせねば……そうだ、最上級砂糖一年分でどうだろうか」

「いらないよそんなに砂糖は!? ってか一年分ってどれくらいの量なんだよ」

「角砂糖換算で約10万個程度だが?」

「あんた一日に300個も角砂糖食ってんのかよ!」

「むっ、砂糖では安すぎて気持ちが伝わらないか。ならば最上級ハチミツを一年分、いや――」

「甘いものから離れてくれ頼むから!」

まずい、クリントから謝礼をもらったら糖尿病間違いなしだ。

というか○○一年分なんてのは鏡餅(1個)で充分だ、それ以外の一年分は基準曖昧だしまとめて一年分もらっても困るだけだ。

おれはクリントからの謝礼を辞退して、そそくさとダンジョン協会から立ち去ったのだった。

ダンジョン協会を出て、エミリーと並んで街中を歩く。

「おい、ダンジョンにドロップが戻ったってよ」

「マジか? 何があったんだ?」

「どうやらニホニウムのダンジョンマスターがでて、そいつのせいだったらしい」

「ダンマスのせいかよ、まったく人騒がせだな」

あれだけの狂乱が起きていたのに、今はすっかり普通に戻っているシクロの街。

ドロップが消えた原因がダンジョンマスターのせいだと知れば一瞬で皆が納得した。

ダンジョンを中心に回ってるこの世界の人間らしい反応だ。

「やっぱりすごいのですヨーダさんは、一人で事件を解決しちゃったのです。ヨーダさんじゃなかったらもっと長引いてたと思うです」

「まあ長引いてただろうなあ……ニホニウム、俺が通ってるのと、ごくごくたまにマーガレット姫たちが来るだけだもんな」

「ドロップしないところにはみんな行かないのです、ダンジョンマスターの発見はすごく遅くなったと思うです」

そもそもあそこが原因って発想もないだろうしな。

「わたし、今すぐヨーダさんが解決したってみんなに教えてあげたいです」

「やめてくれ、注目を集めすぎるのは好きじゃない。ドロップ消失現象は解消した、それでいい」

「はいです」

エミリーはあっさり引き下がったが、心なしか普段にくらべて うずうず(、、、、) しているように見える。

「……ダンジョン行こう、さっき拾ったこれを確かめたい」

おれは話題を変えて、ダンジョンマスターから拾った指輪をエミリーに見せた。

ニホニウム地下一階にやってきた。

テルルに行ってみたけど、あっちはドロップが復活したから冒険者が殺到してる、だからこっちに来た。

「どうするですか?」

「これをつけてモンスターを倒す。エミリーはちょっと待っててくれ」

「はいです」

頷くエミリー、おれは改めて指輪をつけた。

指輪のサイズが大きくて、親指以外プカプカするから、親指につけた。

スケルトンと遭遇した、出会い頭に通常弾を撃ち込んで倒す。

ドロップした種はポーチにそのまま吸い込んでもらう。

「ヨーダさんまだ腕上がったです?」

「うん? そうかもしれない、前はスケルトンに通常弾だとちょっと手間取ってたからな」

「一発で倒せてたです」

更にスケルトンが現われて、こいつも一発で倒した。

壁が崩落してその中から生まれて奇襲してくるスケルトン、こっちは出た瞬間同じく一発で始末する。

エミリーを連れて歩きながらスケルトンを倒して行く。

「ヨーダさんが強くなってるけど、やってる事は一緒です?」

「一緒だな」

「その指輪の効果はなかったです?」

「いやあると思う。多分もうすぐ――」

曲がり角から二体のスケルトンが現われたから連射でまとめて始末する。

ポーチの中に種が入った、次の瞬間。

指輪が光を放った。

「ど、どうしたですか?」

「来たか」

手を水平に伸ばして、手のひらを上向きにする。

おれの手の中に光が集まって、10センチくらいのクリスタルになった。

「新しいドロップなのです?」

「いやドロップじゃない。これをもってみてくれ」

「はいです――あっ」

エミリーが受け取った瞬間、クリスタルは光を放って徐々に消えて行った。

「あわわ、ど、どうしたですこれ? 消えてしまうです」

「おちつけ、多分大丈夫だ」

「多分って――あっ」

クリスタルが消えていた事に慌てていたエミリーが止まった。

慌てから驚き、やがて喜びに表情が変化していく。

「ヨーダさん!」

「行ったか?」

「はいです! レベルアップしたです、26になったです!」

頷くおれ、どうやらちゃんと効果を発揮したようだな。

「どういう事ですかこれ?」

「この指輪はどうやら、レベルカンストした後の溢れた経験値をさっきみたいに結晶化して、他人に渡すことを出来る様にする事ができるらしい」

「経験値を結晶化!? そんなの聞いた事ないです」

「ないのか」

「はいです! すごいです!」

驚嘆するエミリー。

普通ないのは予想出来ていた、なにせニホニウムのダンジョンマスターからのドロップだからな。

それ(、、) は予想出来てたから驚きはしない。

そのかわりちょっと嬉しかった。

今までレベル1で経験値がもったいないなと思っていた。

そんなおれにとって無用の長物である経験値を仲間に渡すことができる。

これは、いいアイテムだった。