作品タイトル不明
540.反転する味
三階のカッパはこれといった特徴が無かったから、スルーして四階に向かう。
カッパのドロップがキュウリだったらなあ、とか思った。
新・ニホニウムはどうやら果物をドロップするダンジョンにうまれ変わったようだ。
だからキュウリはドロップしない――のだが、俺はキュウリは果物だと思っている。
トマトが果物か野菜かという論争があるのと同じように、キュウリというのはスイカとものすごく親戚関係にあるものだ。
スイカは漢字でかくと「西瓜」、キュウリは「胡瓜」だ。
どっちも「瓜」――というだけではなく。
古代中国では「胡」というのは西方の民族を意味していて、西瓜も胡瓜もシルクロードを通って西から伝わってきた瓜って意味だ。
だからキュウリもスイカと同じ果物だ!
「……っていうのを、学生時代にさんざん主張して白目で見られてたっけな」
俺は苦笑いして、あの頃の記憶を思い出した。
ちなみにキュウリもスイカも、「果菜類」っていう分類をする事もあるらしい。
どっちなんだか、って思い出してますます苦笑いする。
カッパがドロップした星形の果物をかじりつつ、下に向かう。
やっぱり、ちょっと酸っぱい。
これまでに新・ニホニウムがドロップした果物はみなどこか甘酸っぱい感じのものばかりだ。
この星形のやつも同じで、酸っぱかった。
そこになにかがあるのかな、と思っている内に四階についた。
いつもの内臓チックなダンジョン、早速モンスターが現われた。
「スケルトン!? いや、違うか」
目の前に現われたモンスターを一瞬そう思ったが、スケルトンとは大きく異なっている点があった。
現われたのは、巨大なガイコツのモンスター。
巨大すぎてダンジョンの中で立つ事が出来なくて、這って移動してる。
そのサイズたるや――頭だけで俺の全身よりも大きいくらいだ。
「がしゃどくろ……だっけ」
これまでの新・ニホニウムは妖怪ばかりにかわった。
妖怪の中に、がしゃどくろというガイコツのヤツがいることを思いだした。
スケルトンあらためがしゃどくろは、俺を見つけるなり這って向かってきて、これまた俺よりもでっかい両手を広げて、つかみかかってきた。
左右から迫ってくる、まるで壁の様な白骨の手。
俺は地を蹴って後ろに飛んで、お決まりの通常弾で様子をみた。
がしゃどくろはよけた。
巨大なため、スケルトンに比べてスカスカだ。
ちょっと動いただけで、銃弾をよける――骨の間をすり抜けさせた。
またまた苦笑いして、今度は追尾弾を撃つ。
追跡する弾丸は、がしゃどくろがよけてもそれを追って命中した。
効くとわかると、連射する俺。
無数の弾丸ががしゃどくろを撃ち抜き、骨片が飛び散った。
大きい分多めに撃ち込む必要があったが、がしゃどくろは連射の前にしずんだ。
そして――ポン、と。
小さな、茶色の果実がドロップした。
小指の第一関節までくらいの、小さな果実。
それを拾い上げる、まじまじと見る。
始めてみる果実だ。
おそるおそる口に運んで、かじってみる。
「……あれ?」
味がしなかった。
酸っぱいものを予想していたから、味がしない事に肩透かしを覚えた。
あまりにも味がしないので、俺の舌がおかしくなったのか、と思ってさっきの星型の果物をかじった。
「――っ!! 甘い、だと?」
俺は驚愕した。
さっきまで酸っぱいと感じていたものが、正反対の、ものすごく甘い果物に変わっていた。