軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

53.天才ときどき神、のち王子様

次の日、朝はいつも通りニホニウムにやってきた。

地下一階に入ると、マーガレット姫とその一味と出くわした。

マーガレット姫という美少女が倒したモンスターがドロップした空気を箱づめにして、それを売ってる連中だ。

そのリーダーの男はおれを見て、笑顔で話しかけてきた。

「やあサトウさん」

「やあ」

「会ったらお礼を言おうと思っていたんだ。パンドラボックスを使ってくれてありがとう。サトウさんのおかげでこの箱の知名度はすごく上がったよ」

「そうなのか」

「本当にありがとう」

「それよりも、今日も空気を生産しに?」

聞きながら、ダンジョンの中を見回す。

離れたところにふわふわした感じのマーガレット姫と四人のアシスタントの姿を見つけた。

今まさに戦闘中だ。四人の男が極限まで弱らせて、マーガレット姫がトドメを刺すという見慣れた光景。

「ああ。最近は売り上げが少し伸び悩んでてな、どうしようかって頭を悩ませてるところだ」

「そりゃ……」

売ってるのが空気だからなあ。

今まで売れてたことの方が信じられない事だ。

「マーガレット姫の人気が下がってる訳じゃないんだが、どうにもな」

「他のものを売ったらダメなのか?」

「他のもの?」

「そう、パンドラボックスを使って、生産者にあの子ってアピールするんだろ? それならもっと他に売れそうなものがある気がする。例えばパンツとか」

「――っ!」

男が盛大に目を見開かせて驚いた。

「あなたは天才か!」

「……むしろオヤジかもしれない」

言った後にちょっと後悔した。ブルセラなんていつの時代だよ。

「それは売れる! 売れるが……マーガレット姫のイメージが……」

「ヨゴレだからな、ある意味ニワトリの腹を割いて卵を取り出す行為だなあ」

「?」

男は首をかしげた。

そうか、ドロップの世界じゃこのことわざは通じないのか。

説明するとメンドクサイから、適当にごまかした。

「ほかのものか……むぅ、難しいな」

唸る男をみて、おれも何となく考えた。

あの姫って呼ばれてる女の子の生産者表示で売れそうなものを。

ふと昨日の事を思い出した。

スミスがもってきた、エミリーに武器を提供して広告塔になってもらうことを。

ブランド、その言葉が頭の中に浮かんだ。

「指輪、とかはどうだ?」

「指輪?」

「そう指輪。マーガレット姫が生産した指輪。別にお下劣じゃないし、それでいて空気とかパンツとかと同じ売り方出来るだろ? そうだな……『マーガレット姫があなたに贈る指輪』ってキャッチコピーでもつけて」

「あなたが神か!!!」

男は更におれを褒め称えた。

「うん、指輪はいい! すごくいい! 指輪ならシクロじゃなくてマクロライドだな。そうなると冒険者を雇わなきゃ……」

男はあごを摘まんでブツブツいいだした。

商機をみつけて早速実現に向かって可能性を模索する、根っからの商売人だな。

邪魔をするのも悪いので、おれは――。

「キャッ!」

悲鳴が聞こえた。

何事かとみると、マーガレット姫の悲鳴だった。

四人のアシスタントは壁と地面から現われた複数のスケルトンの奇襲にあって倒されたり吹っ飛ばされたりしていた。

男たちを排除したスケルトンがマーガレット姫に向かって行く。

とっさに銃を抜いて拘束弾を連射。

骨だけの腕を振り上げてマーガレット姫をおそうスケルトンが光の縄に拘束された。

踏み込んで、腰を抜かしかけているマーガレット姫を抱き寄せて後ろに飛ぶ。

空中のままサッと通常弾に入れ替えて、スケルトンに連射。

連射した内何発かスケルトンをとらえて骨を砕いた。

着地したのとほぼ同時に、スケルトンは 何も残さず(、、、、、) 消滅した。

「大丈夫か?」

「あっ……」

マーガレット姫は小さな手でおれの胸を押して離れた。

顔をそらして、うつむく。その顔は朱に染まっていた。

「大丈夫か姫!」

「うん、大丈夫……」

駆け寄ってきた男に、姫はか細い声で答えた。

姫の無事に男はホッとして、おれにむいて頭をさげた。

「ありがとう! 本当にありがとう!」

「無事でよかった」

「何かお礼をさせてくれ」

「そこまでしてもらわなくても大丈夫」

「いや、みた感じさっきスケルトンを葬った攻撃は消耗品だよな。矢とかそういうカテゴリーのものだ。こんなドロップもないダンジョンでそんなものを使わせて本当に申し訳ない。そうだ! 指輪でお返ししよう」

「え?」

「ちょうどいま姫の指輪にシリアルをつけて売ろうと考えてたところだ。その1番を是非受け取ってくれ!」

「それは逆にわるい」

「姫はか弱い、あなたはお世辞抜きに姫の命の恩人だ。たのむ!」

男は更に頭を下げた。

まあ、もらえるものはもらうけど。

男達とわかれて、ニホニウム地下4階。

マミーと早速エンカウントして、ほぼ奇襲の至近距離だったから体術で倒して、包帯になったところに回復弾を打ち込んで消滅させた。

ドロップは現われなかった。

「ふむ」

状況を確認して、更にダンジョンを進む。

今度は二体組のマミーだ。

迫ってくるマミー、二体に速度差があることに気づいて、まず身を翻して逃げ出した。

追ってくるマミーが前後一列になったところにパッと振り向いて貫通弾を撃つ。

誘導した貫通弾は一直線上に並んだマミーの頭を貫通して連続で吹っ飛ばした。

肉体が消え、残った包帯が絡まった感じで地面に落ちる。

そこに回復を打ち込んで消滅させる。

ドロップはやっぱりなかった。

状況を確認したあと、おれは腰のポーチに手を入れた。

中には粒状のものが5つあった。

――HP最大値が0あがりました。

――HP最大値が0あがりました。

――体力が1あがりました。

――体力が1あがりました。

――体力が1あがりました。

能力アップのコールが粒――種の分まとめてコールされた。

マーガレット姫を守る時に倒した分と、地下四階に降りてきてからの分。

合計五体分がまとめてコールされた。

ポーチ、ハグレモノ・スライムスルタンを倒した時にドロップしたアイテムだ。

効果はドロップ品を直接この中に取り込むこと。

集荷箱とかパンドラボックスと似てる効果だが、決定的に違うのは、ドロップした現象をすっ飛ばして直接この中にいれるという点だ。

傍から見れば「ドロップしなかった」という現象に見える。

これはありがたい装備だ。

今まで街中、あるいは人前でハグレモノを倒す瞬間はなるべく誰にもみられないように気をつけていたんだが、これからはその配慮を一切しなくていいということだ。

考え事してる間に更にマミーが現われたから、瞬殺して包帯も浄化。

そうしたあとポーチの中身に触れないように逆さまにする。

種が地面に落ちた。

――体力が1あがりました。

それをとって能力を上げた。

ポーチの中にある内はおれが触った事にならないから消えない。

ポーチに溜めてダンジョンの外に持ち出してハグレモノ化させれば、地味に特殊弾集めの集荷箱代も節約出来る。

「他に使い道はないかな」

この特性を活かせる使い道がないかと考えている内に。

マミーを作業的に次々と倒して行き。

体力が、EからDに上がったのだった。