軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

48.一家の初陣

農業の街シクロ、借りている15万ピロの2LDKの物件。

そこに、セレストの荷物を運び入れていた。

シクロで物件を見つけるまではここに住んでもらうということで、今彼女の荷物を運び入れている。

ちなみに当面の間エミリーの部屋にすんでもらう事にした。

2LDKだから部屋は二つ、その二つを女性陣に使ってもらうのはセレストがものすごい勢いで申し訳なさをかんじて拒否し、誰かと相部屋という話になって、あたり前のようにエミリーとセレストが相部屋になった。

落ち着いたら大きい部屋を借りに行こう。

セレストを誘って「亮太一家」を結成するんだから、そこは当然おれの負担だと思ってる。

プランは二つ。

3LDKを借りて全員引っ越すか、この部屋以上のランクのワンルームを借りておれだけ引っ越すか。

なんで上のランクなのかというと、2LDKを二人に使ってもらって、おれは2万ピロの安アパートに移ると言う案は二人して却下されたからだ。

おれだけ出て行く場合、おれの部屋はランク高いところじゃないとかえって気を使われるな。

とまあ、そんな事を考えながらセレストの荷物を運び入れていたのだが。

「きゃっ」

「おっと! ごめん」

考え事をしていたせいで、セレストとぶつかって、荷物を地面に落としてしまった。

ダンボール箱が落ちてぱっくり割れて、中の荷物が一部飛び出してしまった。

「ごめん、考え事してた」

「ううん、こっちこそ前見てなくて――きゃあああ!」

落ちてる荷物、正確には箱からでた荷物をみて、セレストが悲鳴を上げた。

悲鳴をあげて、それをひったくって背中に隠す。

ばっちりみてしまった、というかまだ見えてる。

セレストが隠したのも、ぱっくり割れてしまった箱から見えてるのも。

少女趣味な、ファンシーなぬいぐるみだった。

すらりとした長身の、モデルのような見た目の彼女のイメージとはちょっと離れている代物だ。

「み、みた?」

「みてない」

即答で答えるが、それが嘘だってのは向こうにもばれてる。

セレストは顔を真っ赤にして。

「わ、忘れてください」

と、半ば懇願するように言って、部屋の中に逃げ込んでしまった。

やっちゃったな……後でなんかフォローしよう。

引っ越しが終わって、セレストとエミリーの二人と街に出た。

色々やることがあるが、まずはセレストの職探しだ。

やり慣れてる事が良いかなと言うことで、まずはゴミ処理の業者を訪ねることにした。

「お、おい。あれ見ろよ」

「すげえ美人、あんな人この辺にいたか?」

「よそから来た冒険者かな」

「ほわぁ……」

さっきから歩いてるだけで、あっちこっちからひそひそ話が聞こえてくる。

気持ちはわかる、おれも同感だ。

セレンダンジョンにいたときはあまり一緒になって移動しなかったが、こうして一緒に行動してるとよく分かる。

長身で背筋をピンと伸ばして、髪をなびかせてあるくセレストは美しい。

修飾詞などすべて無粋に感じてしまう程の美しさ。

美人。

それが一番しっくりくる美しさだ。

そんな彼女と一緒に歩いてるとちょっと優越感が生まれる。

ふと思う。彼女はあのファンシーなぬいぐるみたちをどうするんだろうか。

抱いて寝るんだろうか、話しかけるんだろうか。

「くすっ」

いろいろ考えて、思わず笑みがこぼれた。

「あれ? リョータさんじゃないですか?」

「エルザ」

向こうからやってきたのは買い取り屋のエルザだった。

彼女はおれを見つけて、笑顔を浮かべて小走りでやってきた。

「お久しぶりです、戻ったんですね」

「ああ、セレンの一件はおおよそ片付いたからな」

「うわさ、聞いてますよ。八面六臂の大活躍だったそうじゃないですか。うちもお得意さんが有名になって鼻高々です」

「そうなんだ」

「その噂を聞いていくつかリョータさんに依頼したいって話がきてて、暇になったらうちによってってくださいね」

「わかった、そうする」

話が一段落したところで、エルザはおれの後ろを見た。

「あの、そちらの方は?」

そこにはエミリーとセレストが立っている、エミリーのことは知っているので、並んで立ってるセレストの事が気になったんだ。

「紹介する。彼女はセレスト」

「よろしく」

「エルザです、よろしくお願いします!」

「仲間に……ファミリー? 一家? 的なのになるんだ」

「そうなんですか?」

エルザはびっくりして、ちょっと落ち込んで、すぐににこっとした。

……なんでちょっと落ち込んだんだ?

「じゃあ、いよいよ本格的に地下六階以降に入るんですね?」

「うん、どういうこと?」

「あれ? そのためにファミリーを結成したんじゃないんですか?」

「いや色々あって……普通はファミリー結成して臨むのか?」

「はい」

頷くエルザ、彼女は店でよく見る明るい笑顔で説明をしてくれた。

「シクロのダンジョンは地下五階から下は色々複雑になるのです、倒し方とか、効率的な倒し方とか」

「なるほど、だから免許が必要なのか」

「はい、普通はパーティーとか組んで、大勢で挑みますね」

「そうか」

頷き、背後のセレストとエミリーをみた。

二人は頷き返してくれた。

せっかくだから行ってみるか、と、アイコンタクトが伝わった。

「ありがとうエルザ、後でドロップ品を持っていく」

「はい、お待ちしてますね」

商売スマイルを浮かべるエルザとわかれて、おれ達は予定を変更してテルルに向かった。

亮太を見送ったエルザは切ないやら、羨ましいやらな表情をした。

そんな表情をして、新しく現われた長身の美女、セレストを見つめていた。

「ライバル出現ね」

「い、イーナ。変な事言わないで。わたしは別に……」

唐突に現われた同僚のイーナがエルザをからかった。

親友同士にありがちな、結構踏み込んだからかい方だ。

「そう? わたしもファミリーに入りたいー。って顔をしてるけど」

「そんな事なんて思わないって。わたし、ダンジョンなんていっても足手まといなんだし」

「わかってんじゃない」

イーナはエルザの背中を叩いた。

このやりとりも、気の置けない親友だからこそだ。

「まっ、あたしたちに出来る事はちゃんと買い取りをして、ダンジョンの情報があったら一番に伝える、だね」

「うん、情報面で助ければいいんだわ」

「そういうこと」

「ありがとうイーナ」

「いいのいいの、あたしら、ズッ友じゃん?」

イーナは親指を立てて、ウインクしてみせた。

とことんまでに、親友だからこそのやりとりだ。

それによってエルザは元気を取り戻して、二人は店の方に向かって歩いて行った。

「ところでイーナ、さっきあたしたちっていわなかった?」

「え? そんな事言ったかな」

「いったよー」

テルルのダンジョン、地下6階。

はじめて踏み込むそこは、確かにちょっと雰囲気が違っていた。

ダンジョンだというのに、ダンジョンらしくなかった。

木々がはえていて、どういう理屈になっているのか、黒ずんでいるが空のようなものが見える。

「これがダンジョンか……」

「まるでお外なのです」

「セレンのまわりに少しにてるわね」

「だな」

やりとりしつつ、ダンジョンのなかを歩き回る。

すぐにモンスターとエンカウントした。

巨大なスライムが一匹、小さいスライムが数十匹一緒に現われた。

「むっ? モンスターが二種類? こういうことってあるのか」

「違います、あれは親子スライムといって、あれで一体のスライムです。大きい親が本体、小さい子が手足みたいなものよ」

「くわしいなセレスト」

「さっきいろんな人に聞いて情報を仕入れました」

「おー」

「こういうのは得意なので、まかせて」

「助かる」

おれは情報収集とかそういうのそんなに得意じゃないからな。

気を取り直して親子スライムをみた。

本体と手足、という見方をすれば、なるほど子が親を守っているように見える。

「ならば本体を先に叩く」

銃に追尾弾を装填して連射した。

弾は不規則な軌道を描いて、子スライムの間を抜けて親を直撃する。

「あっ……」

「あ?」

セレストの反応が不思議だったが、原因はすぐに分かった。

追尾弾は正確に親スライムだけを打ち抜いて、倒して消滅させた。

親が消滅した後、子も後を追って消滅する。

全部が消えたあと――ドロップは何もなかった。

ドロップが何もない、今までの経験上それはあり得ないことだった。

原因は――分からないけどセレストは分かっているみたいだ。

「ごめん先走った。まだ情報があったんだな」

「うん。親子スライムのドロップは、子を倒した数によって決まる。子を倒した分だけ、親を倒した後にその数だけまとめてドロップするの」

「そういうことか」

「じゃあちっちゃいのをいっぱい倒してからだとドロップがいっぱいですね」

「そうなんだけど、子を倒す度に親が強くなるの。全部倒しちゃうと手がつけられなくなるくらい強化されるらしいの」

「安定のしきい値、か」

多分この地下六階に通う冒険者は自分達の技量と相談して、子を倒す数とか決めてるんだろな。

当然毎回うまく決まった数を倒せる訳でもないだろう、モンスターは動くし、そもそも攻撃とかしてくる。

なるほど、免許とかで許可制にするわけだ。

「……」

おれは頭の中で、攻略法をシミュレートした。

二体目の親子スライムとエンカウントした。

エミリーとセレストとアイコンタクトをかわす。

うなずきあって、まずは冷凍弾を撃った。

ほとんど狙撃する勢いで、冷凍弾を親スライムに打ち込んで、凍らせて動きを止める。

「インフェルノ!」

その間に詠唱したセレストは、長い髪をなびかせながら広範囲の魔法を放って親子スライムを全部巻き込んだ。

凍らせている親以外、子は業炎にやかれていく。

パキーン、と氷が割れた。

親スライムは半透明の体の中心は激しい勢いで点滅をはじめた。

「やああああ!」

エミリーが飛びかかった、ハンマーを頭上でぐるぐる回して、ハンマーを親スライムにたたきつける。

ガキーン。

まるで金属がぶつかり合う音がして、親スライムはほぼ無傷のようにみえた。

エミリーの全力の一撃で無傷――がそれは計算のうち。

エミリーが先に飛び込んだ理由でもある。

「消滅弾! 四発くらいなのです!」

「よっしゃ!」

エミリーが手応えを告げた後、親スライムを蹴って離れた。

スタンバっていたおれは二丁拳銃で連射した。

左に冷凍、右に火炎。

それが融合した消滅弾を親スライムに叩き込んだ。

弾はスライムに当たって、エミリーのハンマーすらはじいた体をえぐった。

スライムはうにょうにょしたが、すぐに力尽きて地面にへたれた。

そしてポンと消滅し、ポポポポポポンとまわりにドロップが盛大に出現した。

焼き尽くした子スライムがいたところに、大量のジャガイモがドロップされた。

「すごいわ」

「やったです!」

エミリーとセレストの歓声とともに、おれは密かにガッツポーズした。

打ち合わせた攻略法がビシッと決まった。

自分一人じゃない、三人での攻略は今までにない満足感を与えてくれた。

セレストを迎え入れた「亮太一家」の初陣。

この三人で、おれはもっともっと色々やってみたくなった。