軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

427.カーボン

猶予はそれほどない。

俺は躊躇なく自分の姿をしたダンジョンマスターに迫って、ゼロ距離で全身に無数の弾を打ち込んだ。

何が効くのか、どこに効くのかはまったく分からない。

通常弾冷凍弾火炎弾追尾弾成長弾――。

あらゆる弾をあらゆる場所に撃ち込んだ。

そして、時は動き出す。

時間停止中に体の表面で止まっていた各種弾丸が一斉に動き出し、ダンジョンマスターを貫き、燃やし、こおらせて砕いた。

オーバーキルだった。

あらゆる攻撃的弾丸を撃ち込まれたダンジョンマスターははじけ飛んだ。

空気が元に戻る。倒せたんだ、とほっとする。

ちなみにりょーちんも消えた。

ダンジョンマスターがいたところの地面に指輪がおちていた。

ドロップ品か、と思って拾い上げようとすると、その場にすぅ、と透明になったのが切れたかのように、さっきの少女が姿を現わした。

「なんなの!」

少女は相変わらずのかんしゃくっぽい金切り声で叫びながら手をかざす。

再び、ダンジョンマスターが現われる。

「リペティション!」

さすがにこれを相手にあれこれテストする余裕はない。

俺は速攻で最終周回魔法リペティションを唱えた。

さっきは変身中には無敵だったのだが、リペティションは通るようだ。

変身前の黒い塊ははじけ飛んだ。ちなみに今度はドロップはなかった。

ダンジョンマスター相手にリペティション、一発でMPがすっからかんになった時特有のめまい感を覚えたが、やっかいなダンジョンマスター相手にするよりはよっぽどいい。

銃に無限回復弾を詰めて、自分に撃った。

「……えっ?」

一方で、少女が声を漏らしていた。

自分が再び姿を消すよりも先に頼りのダンジョンマスターを倒されて、少女は目を丸くした。

しばらくして、状況をようやく飲み込めたのか、少女はがらりと表情をかえて。

「なになに、今のなに? どうやったの?」

と、人が変わったかのように、人なつっこく好奇心をぶつけてきた。

俺は戸惑いながらも、悪意や敵意はないから、答えてあげることにした。

「えっと、リペティション、っていう魔法なんだけど」

「リペティション」

「しらないか? 一回倒したモンスターを無条件で倒せる魔法なんだ」

「すごい! そんなのあんの?」

「まあな、敵が強ければ強い程消費MPが高くなる――」

「すごい!」

デメリットというか、代償というか。

それをも説明しようとしたが、少女はそこをまったく聞いてなくて、ますます目を輝かせるばかりだ。

「やっと出会えた!」

「え?」

「あんたがあたしの運命の人ね!」

「……え?」

今度はこっちがキョトンとすることになってしまった。

いきなりなんだ? 運命の人?

「えっと……それってなんかの比喩表現――」

「ずっと一緒にいて!」

「――いや話をきいて?」

少女は俺に抱きついてきた。

さっきまでとはうってかわって、邪気のない純粋な好意――に見えるんだが。

本当なのか? と言うのと。

どういう事なんだ? というので。

二つ合わさって、俺はちょっと困ってしまった。

「えっと、ずっとここにいるってのは無理だ」

「なんで!?」

「仲間達が家で待ってるんだ。夜は普通にかえらないといけない」

「だめ! ようやく見つけたんだから。『あいつ』に言われた艱難辛苦と七難八苦を全部乗り越えたオンリーワンをやっと見つけたんだから!」

あいつって誰なんだ……とますます謎が深まってしまった。

「えっと……ずっとここにいるのは出来ないけど、代わりにうちに来るか?」

「あんたの家?」

「ああ」

「そんなの無理に決まってんじゃん。あたし精霊なんだよ」

「あっ、やっぱり精霊なんだ。カーボン?」

少女――カーボンははっきりと頷いた。

言葉使いも表情がコロコロ変わるのもそうだが、ボディランゲージもはっきりしている子だ。

「できるよ」

「うそ!」

「……その艱難辛苦? も乗り越えられるっていったら?」

「本当!? どうやって!」

…………なんか、君ちょろくないか?

いやいや、その言い回しに何か特別な感情があるだけなんだよな、うん。

「一旦俺をさっきの所に戻してくれ」

「分かった!」

やっぱりちょろい――とおもっていると、目の前が真っ白な光につつまれて、カーボンダンジョン地下二階の階段に戻って来た。

ゲートはつかっちゃったんだっけ――しょうがない。

俺はダンジョンをでた。

ダンジョンを出て、全速力でシクロに向かってダッシュした。

途中で息が上がって疲れてくると回復弾を自分に撃って、速度を維持したまま走る。

シクロについたのは夕方くらいで、俺は一直線に屋敷に戻って、バナジウムダンジョンに駆け込んだ。

「ただいま!」

「お帰りなのです」

エミリーの声が聞こえてきた、キッチンの方だ。

そこへ行くと、エミリーが料理のしたごしらえをしてて、バナジウムがそのお手伝いをしているのがみえた。

「ただいま。ごめんエミリー! バナジウム、ちょっと一緒に来てくれるか?」

「……(こくっ)」

バナジウムは即座に頷いて、手伝いを即やめて俺に近づいて袖をぎゅって握ってきた。

エミリーに一言もないのは まだまだ(、、、、) だが、今はいい。

「ごめんエミリー、もうちょっと行ってくる」

「はいです、ご飯を作って待ってるです」

「いってきます!」

バナジウムを連れて、転送部屋に向かって、カーボンの精霊部屋をセットして、ゲートをくぐる。

すると。

「また来た!? え? なに!? 今のどうやって? ダンジョンに入ってないよね!?」

俺が再び現われたことにびっくりするカーボン。

「それにその子……エリスロニウム……あれ? 微妙に違う、ってええええええ!?」

今度はバナジウムをみて驚く。

「バナジウム、彼女を捕まえてて。連れて帰るから」

「……(こくっ)」

カーボンがバナジウムを精霊だと分かる様に、バナジウムもカーボンが自分と同じ存在であることが分かる。

人間は嫌だが、精霊を自分のダンジョンに連れて帰ることをまったく拒否しないバナジウム。

とことこといって、カーボンの手を掴んで、とことこと引っ張って戻って来た。

「よし、戻るぞ」

バナジウム、カーボンと一緒にゲートをくぐって屋敷に戻る。

「……ここどこ?」

「俺たちの家、まあ、バナジウムのダンジョンのなかだ」

「えええ!? 別のダンジョン? 出られるのあたし? なんで? えっなんで?」

「たっだいまー」

「ただいま戻りました」

カーボンが困惑しきっているところに、転送部屋を使って、ミーケと一緒にアウルムとニホニウムが戻って来た。

「って、ニホニウムにアウルム? 本当にどういう事なの?」

「あれ? 新顔?」

「というより、知っている気配ですね」

アウルムもニホニウムも、カーボンのことがすぐに分かったみたいだ。

驚きの連続で、カーボンはポカーンと口をあけて、ぎぎぎぎ……と錆びた蝶番のようなぎこちなさで俺に振り向いた。

「もしかして……すごくすっごい人?」

なんて、いってきたのだった。