軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

426.三人のリョータ

声の主をマジマジと観察する。

見た目は小柄だが成熟した肉体の少女、セミロングの髪をポニーテールに結い上げている。

今は驚愕して俺を見つめているが、普段ならアリスを少し大人っぽくした、元気さが魅力な美少女に思える。

「――っ!」

彼女は顔を赤くして、文字にしづらい癇癪混じりのうめき声を上げた後、すぅっとその場から姿を消した。

代わりに、モンスターが現われた。

カーボンダンジョンにいるのと同じ、黒い塊みたいなので、変身をしている。

ゾクリ。

背筋が凍った。

この空気――ダンジョンマスターか!

ほとんど脊髄反射で銃を抜いて、しこたま銃弾を撃ち込んだ。

最初から成長弾、無炎弾と火力重視で撃ち込んだが、弾はことごとく黒い塊をすり抜けた。

「――っ!」

銃+10を抜いて、追尾弾を込めて撃つ――これも追尾効果を発揮することなく、同じように黒い塊をすり抜けてしまった。

「だめか……まさか変身後も無敵なんて事はないよなあ」

ため息をつきつつ、銃と様々な弾丸、そしてあらゆるアイテム。

グランドイーターのポケットの中からどれもすぐに取り出して使えるように身構えた。

やがて―― 俺(、) が現われた。

「そう来たか――なにっ!」

自分の偽物やコピー品と何度も戦ったことがあるから。一目見た時は「そっちか」と思ったが、次の瞬間度肝をぬかされた。

ダンジョンマスターは手をかざすと、何もなかった空間からハンマーをとりだした。

見覚えのある、エミリーハンマーだ。

そいつはエミリーのようにハンマーをぐるぐる頭上で回しながら飛びかかってきた。

「ぐっ!」

腕を頭上でクロスさせて、ハンマーを受け止める。

メキメキ――と体の奥から骨の軋む音が聞こえてきた。

ダンジョンマスターの攻撃は猿真似ではなかった。

見た目も質もまったくエミリーのハンマーそのもので、俺が受け止めたのとほぼ同時にくるりと一回転して、一発目の衝撃がまだ抜けきっていないところに二撃目が打ち込まれてきた。

「ぐぅ!」

そして――三撃目。

回転をつけたハンマーの三連撃はエミリーの得意技だ。

それを俺の形をしたダンジョンマスターが放ってきた。

威力は控えめに見ても エミリー(本家) 以上。

全身がミシミシ痛くなって、膝が崩れかけた。

瞬間、熱風が押し寄せてきた。

四方八方から炎の玉が飛んでくる。

見ると、 糸のない(、、、、) バイコーンホーンが俺の周囲を取り囲んで、炎の玉を連射してきた。

息を深く吸い込んで、二丁拳銃を抜き放ち、冷凍弾を込めて炎の玉を迎撃。

炎の玉が打ち合って、弾けて双方が消滅。

その過程で大量の水蒸気が生まれて、俺の姿をしたダンジョンマスターが水蒸気の向こうから突進してきた。

ハンマーを振りかぶって叩きつけてきた。

「……遅い?」

出会った当初のエミリーに比べても更に遅いハンマー、どういう事なのかと眉をひそめた。

ガードはしかし、解かずにいて良かった。

振り下ろされたハンマー、クロスした俺の腕に当るやいなや、無数の衝撃が波の如く押し寄せてくる。

イヴか!

イヴのエクスカリバー。

早すぎて遅く見える、あの現象のチョップを、ダンジョンマスターはハンマーで再現。

俺は地面を蹴って後ろに飛ぶ、空中に逃げながら衝撃を逃がす。

ダンジョンマスターは追いかけてきた、 更に遅い(、、、、) ハンマーを振り下ろしてくる。

鉄壁弾を撃った。

エクスカリバーハンマーは鉄壁弾に当って、爆弾かってくらいの爆音をおこした。

ようやくダンジョンマスターの猛攻をひとまずしのげて、状況を把握できた。

俺に化けたダンジョンマスターは、俺の仲間達の得意技を使ってきた。

エミリーのハンマー、セレストのバイコーンホーン操作、イヴのエクスカリバー。

それを、俺のSSの能力値で振るっている。

この上なくヤバイ相手だ。

どう倒すか、と思った直後。

ダンジョンマスターは特撮ヒーローのようなポーズをとった。

まるでアリスのようなノリ――アリス!?

この日最大の悪寒が背筋を駆け上っていったあと、「それ」は現われた。

空間の裂け目から、りょーちんが現われた!

ヤバイヤバイヤバイ、これは絶対にヤバイ。

俺が、俺と同等の能力を持った敵を、二人同時に相手にしなきゃいけない。

ヤバいところの騒ぎじゃない、絶対に勝てない。

こうなればもう一旦出直すか、なんて、退却も頭によぎったその時。

りょーちんがポケットから銃を取り出して、銃弾を加工して装填、そして自分に銃口を向ける。

「やばい!」

とっさにポケットの中に手を突っ込んだ――間に合え!

次の瞬間、俺の体の周りに無数の――軽く見積もっても五、六百発はある銃弾が一斉に、力を失って地面におちた。

どうにかやり過ごせた、のが分かった瞬間、間一髪のそれに、背中が汗でびっしょりになった。

俺の主観では何もわからない、が予想したとおりの事が起きていたことはわかる。

りょーちんは、銃+10でW加速弾を自分に撃って、時間を完全に止めた。

その間、りょーちんが俺に攻撃をした。

本来ならこれで終わっていたはずだ。

俺と同じ能力のりょーちんで、完全時間停止の+10W加速弾。

どうあがいてもジ・エンドな状況だが、俺はりょーちんが加速する前に最終手段をぶっこんだ。

転生アイテムを一通り作った中で、「使えない」と烙印を押したもの。

アブソリュートロック+10だ。

アブソリュートロックの転生は、回数を上げるごとに防御力が上がるが。

そのかわり効果時間が加速度的に減っていく。

アブソリュートロック+10では、効果時間は加速弾で計測した結果、1万分の1秒もないくらい短くなっていた。

普通は使い物にならないが、それをりょーちんの時間停止に合わせた。

時間停止の間、時は進まない。

効果を発揮したアブソリュートロックの石+10はその間延々と効果を発揮し続ける。

それで、りょーちんの攻撃を完全に防いだ。

「こんどはこっちの番だ」

攻撃を防いだ直後にはもう、俺は動いていた。

りょーちんと同じく、+10のW加速弾。

完全時間停止。

ダンジョンマスターも、りょーちんも止まった。

勝利、確定だ。