作品タイトル不明
365.武装解除
モンスターの攻撃と特性は分かった、次は倒してドロップを確認しよう。
最下階からにしろ途中で召喚されるにしろ、今までの経験からある程度はダンジョンを攻略しないといけない。
モンスターはある程度倒しておかないといけないのだ。
二丁拳銃を抜いて、小川を越えてくる綿毛に狙いをつける。
ちょうど二体飛んできたから、片方は今や一撃必殺級の威力まで育った成長弾を、片方は周りのインフレで今や最弱となった通常弾を。
それぞれ込めて、綿毛のHPを確認する意味で、使い分けてそれぞれ撃った。
「むっ」
成長弾はもちろんだが、通常弾でも一発で綿毛を倒した事に少し驚いた。
地下一階と言うこともあってまだまだ弱いのか?
このパターンだと、自爆の威力はHPの最大値か残りHP依存って可能性もある。
能力低下だけじゃなくて、そっちも警戒しとかなきゃと思った。
次の瞬間、更に驚いた。
倒した二体の綿毛、それぞれアイテムをドロップした。
長方形の紙、ひらひらと地面に舞い落ちる。
見慣れたそれは――ピロ紙幣だった!
「ここもお金をドロップするのか?」
眉をひそめて不思議に思いつつ、近づき屈んで拾い上げる――。
「ん?」
眉間の皺がますます深くなったのが分かった。
屈んだ瞬間、紙幣に違和感を覚えた。
何かがおかしい、何かが。
触れる直前で手を止めてじっと見つめて、違和感の原因を探る。
「……偽札?」
口に出して見ると、よりはっきりと確信した。
落ちてる二枚の一万ピロ紙幣は遠目にはそれっぽいが、近くでまじまじと見るとどうにも偽物っぽい。
子供銀行券……いや、出来の悪いカラーコピー品に見える。
もちろん紙幣をコピーなんてしたことはないが、紙幣が持つ独特な印刷の立体感がまったく無い。
代わりにカラーコピーののっぺらかんだけが残ってる。
何故に偽札?
それを理解したくて、もっと観察するために紙幣を手に取った。
「――っ!」
触れた瞬間、溶けるように手のひらに吸い込まれた。
ニホニウムの種。
あれと同じ感じで、手の中に吸い込まれた。
そして――脱力感。
全身にものすごい脱力感が襲った。
さすがにもう分かった、ポータブルナウボードで確認した。
―――1/2―――
レベル:1/1
HP B(-3)
MP B(-3)
力 B(-3)
体力 B(-3)
知性 B(-3)
精神 B(-3)
速さ B(-3)
器用 B(-3)
運 B(-3)
―――――――――
―――2/2―――
植物 S(-4)
動物 S(-4)
鉱物 S(-4)
魔法 S(-4)
特質 S(-4)
―――――――――
全能力が更に一段階下がった!
残りのもう一枚も手に取る。
まったく同じ感じで手のひらの中に吸い込まれて、戦闘能力が全部Cに、ドロップは全部Sのままだが-5になった。
ブービートラップ。
ドロップしたのが現金――と思ってウキウキして拾えば更に能力低下の餌食になる。
自爆も能力低下、ドロップしたブービートラップも能力低下。
一貫しているエリスロニウムの特殊性。
悪意を感じる――と、思ったのだが。
『助けて……』
また、あの声が聞こえた。
カルシウムの部屋にいたときに聞こえたのとまったく同じ声、そして、同じような内容。
ダンジョンの特性は精霊の気持ちや性格などに大きく影響を受ける。
ニホニウムの「周りも不幸にしたい」とかセレンの「両刀」などがそれだ。
エリスロニウムの特殊性。
助けを求めているが、それ以上に全ての者を拒んでいる。
救いを求めるトラウマを抱えた小さな子供。
なんとなく、そんなイメージが頭の中に浮かんできた。
「……って事は、追い出したいだけ」
言葉にして、ますます確信する。
俺は身を翻して、一旦ダンジョンを出た。
外には仲間達がまだ待っていた。
「ヨーダさん! 大丈夫なのです?」
「ああ、ポータブルナウボードをいっぱい使った、まだあるか?」
「持ってくるです!」
エミリーがダッシュで屋敷の中から新しいのを取ってくる。
それで確認する。
―――1/2―――
レベル:1/1
HP SS(+1)
MP SS(+1)
力 SS(+1)
体力 SS(+1)
知性 SS(+1)
精神 SS(+1)
速さ SS(+1)
器用 SS(+1)
運 SS(+1)
―――――――――
―――2/2―――
植物 S
動物 S
鉱物 S
魔法 S
特質 S
―――――――――
「あれ? ヨーダさん自分にクイックシルバー使ったです?」
不思議がるエミリー。
それもそのはず、俺が自分に使う必要がないのは仲間の誰もが知っている事だ。
なのに使ったことを不思議がった。
そして、それでよりはっきり分かる。
侵入者を追い出したいだけのエリスロニウム、それを反映してダンジョンから出るとデバフの効果は消える。俺のクイックシルバーだけが残る。
やっぱり……放っておけない。
「あとでまとめて説明するよ、もう一回いってくる」
「はいです」
再び、ダンジョンに足を踏み入れる。
その瞬間、またまた脱力感が全身を襲った。
「なるほど」
―――1/2―――
レベル:1/1
HP B(-3)
MP B(-3)
力 B(-3)
体力 B(-3)
知性 B(-3)
精神 B(-3)
速さ B(-3)
器用 B(-3)
運 B(-3)
―――――――――
―――2/2―――
植物 S(-4)
動物 S(-4)
鉱物 S(-4)
魔法 S(-4)
特質 S(-4)
―――――――――
補充したポータブルナウボードで確認、戻ってきたらデバフも戻った。
ずっとこうなのか、時間とかで消えるのかは分からない。
はっきり分かったのは、いや更に確信したと言っていい。
エリスロニウムの性質は専守防衛と言うことだ。
……。
と、言うことは。
多分そうだと思った、確信はないが、多分そうだ。
綿毛がまた川を越えてひらひら飛んできた。
一直線に俺に向かってくる。
俺は――持っている全ての道具を入り口に向かって投げた。外に投げ出した。
二丁拳銃も、ポータブルナウボードも、アブソリュートロックの石を始めとするあらゆるアイテムを。
全部、ダンジョンの外に放りだした。
丸腰。
俺は一切の武器もアイテムも持たない丸腰になった。
武装解除。
敵意がないことを示す為の行動。
エリスロニウムは敵を排除しているだけ、その特性が本当なら、丸腰の相手には攻撃してこない。
そして、それは正しかった。
丸腰になった直後、綿毛がその場にとまって、ぷかぷかと浮かぶだけになった。
推測が当った、そして決意は更に固くなった。
「今行く」
俺は丸腰のまま、次の階に向かっていった。