軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

300.安心

階段の下に向かって体当たりを繰り返すスライムを眺めながら、ミーケに言う。

「アイツを連れて出られないか試してみてくれないか」

「分かりました!」

ミーケはトタタタと走って行った

接近に気づいたスライムの迎撃をかわしながら、しっかりと身柄を確保する。

その状態で、階段を降りることを試みるが。

「ダメですリョータ様、降りられません」

と、若干困った顔で報告してきた。

ミーケ自身は階段を数段降りていったが、境目のところでスライムが引っかかってそれ以上降りられなかった。

「どういう感覚なんだ?」

「えっと、ここでスライムが見えない壁に引っかかってるって感じです」

「なるほど。そうだ、転送ゲートはどうなんだろう」

「あっ……やってみます」

ミーケはトタタタと階段を登って、自分がやってきた時に使った光の渦、屋敷の転送部屋に繋がるゲートに向かっていく。

スライムを確保したままそこに飛びこもうとしたが、そこでもやはり。

「やっぱりダメですリョータ様、まったく同じ感じです」

「そうか。もういいぞ」

俺がいうと、ミーケはスライムを捕まえたまま、俺のところに戻ってきた。

最後にもう一度確認した。

ミーケからスライムを受け取って、もがくそれをガッチリ捕まえて、階段の所に連れて行く。

見えない壁に押しつける、通れない。

ずるっと手が滑って、俺の手が通れたことでつんのめったのが、ちょっと不思議な感覚だった。

こういう時によく助けられたクズ弾をスライムに撃ってみた。

それはあらゆる干渉を無視して、とにかくマイペースに、ゆっくりと直進する弾丸。

クズ弾に押されたスライムは体がへこむ程変形したが、やっぱり下の階にはいけなかった。

「あっ……」

ポン、という音が聞こえた。

やり過ぎた。

引き際を見誤って、スライムがクズ弾と壁に挟まれて、限界を超えて破裂した。

「た、倒しちゃいました」

「やっちゃったな」

俺は苦笑いする。

「この場合、どうなるんでしょうか」

「そういえば」

スライムがコピーされて、この階層から抜け出せなくなって。

そのスライムが倒されてしまった状態だと、スライムもどきはどうなるんだ?

ミーケに指摘されて気になった俺は、一緒になってテネシンの塔の中を歩き回った。

すぐに状況が分かった。

俺たちの前に影が現われた。

スライムもどきではなく、影。

「どうやら……やられると元に戻るようだな」

「そうみたいですね」

「もう一度試してみよう」

「じゃあもう一匹捕まえてきます」

「いや、こっちの方が早い」

俺は通常弾を一発取り出して、地面においてミーケを連れて距離を取った。

しばらく経ってそれはスライムのハグレモノに孵った。

そのスライムを捕まえて、更に歩き回って、影にエンカウントしたところで、スライムを影に放り投げる。

もう一度スライムもどきを作ってテスト――のつもりだったんだが。

「変わりませんね」

「変わらないな」

回復弾で援護をしているのに、影が攻撃しても、さっきみたいにスライムもどきになることはなかった。

これって……もしや。

「いやあ、やっぱりキミはすごいよ」

テストの三巡目、コクロスライムもどきがぞろぞろいる中で、訪ねて来たネプチューンがいきなりそんなことを言った。

「元のモンスターじゃないとならない、ハグレモノだと偽物ができない。そんなの、普通にやってたら絶対に分からないことだよ。そもそもモンスターの偽物になるってのは絶対に判明しない」

「俺じゃなくて、ミーケの力だ」

「この子もキミがいなかったら生まれてこなかったでしょ」

ネプチューンはニコニコしながら言った。

ミーケはボドレー・リョータでユニークモンスター化した子だ。

俺がいなかったら生まれなかった、そう言われたらそうかもしれない。

「で、色々テストしてるみたいだけど、何か追加で分かったの?」

ネプチューンの質問に、俺は今までの情報を頭の中でひとまずまとめてから、ネプチューンに話した。

「人間と、オリジナルのモンスター。どっちかが影に攻撃されると もどき(、、、) が出来る。もどきを12体倒して「☆」をゼロにすると、オリジナルはこの階層に閉じ込められる」

「この階層にいなかったら?」

ネプチューンが疑問を呈した。当然俺も考えた可能性で――俺たち1から4階まででまだ 囚われてる(、、、、) 四人が今一番気になることだ。

「もどきが出来た後ミーケに屋敷につれて帰ってもらった。12体倒したらここに強制召喚される」

「されるんだ」

「ただしモンスターだから、来た瞬間に消滅した」

「なるほどね、ダンジョンとか階層を跨いちゃいけないのはそのままなんだね」

「☆が全部消えた場合、ここに閉じ込められるだけだと思う。まだ結論付けるのははやいかもしれないが」

「それが本当なら」

「うん?」

「将来的に、ダンジョンに永久就職してもいい、って人を募る必要があるね」

「うん? ああそうか」

その発想はなかった。

俺はネプチューン(と俺自身)を助ける為にテネシンに来てて、一方のネプチューンはダンジョンの生産地としてのスペックを調査しに来た。

その立場の違いが、発想の違いに現われた。

「そうだな、今までの情報で全部だったら、戦闘能力が低く、ダンジョンに住み続けてもいいという人を雇えばいいな」

アレ(、、) な条件だが、高級食材ダンジョンだし、高給を約束すればいい話だ。

「その場合階層から動けないから、快適さも保証してやる必要はあるね」

「このダンジョンならかなりの税金は取れるから、そこはどうとでも――――」

俺は目を見開いた。

自分でも分かるくらい、まなじりが裂けるくらい目を見開いた。

「どうしたの?」

俺は無言で動き出した。

頭の中に浮かび上がってきたひらめき、それが正しいのかを確認する為に。

ミーケが安全なところで確保してるオリジナルのコクロスライムを倒して、五階のモンスターをいったん影に戻す。

そして別に用意している眠りスライムを連れてきて、影の前に放りだす。

攻撃されて、影が全部眠りスライムになる。

眠りスライムもどきを6体倒して、オリジナルの☆を半分減らしてから。

「ミーケ、その眠りスライムを連れてきて」

「わかりました」

「何をするつもりなの?」

ネプチューンが横についてきた。

俺が気づかなかったように、今でもダンジョン調査が頭にあるネプチューンはその事に気づいていない。

そんなネプチューンとミーケを引き連れて、六階に上がる。

ダンジョンスノーが降りしきるテネシン六階。

早速現われた影の前に眠りスライムを放り出し、フォローをして、六階の影を眠りスライムもどきにする。

オリジナルの眠りスライム、半分の6個まで減った☆が、12個に戻った。

MAXの12だ。

「もしかして!」

「ああ」

ネプチューンと一緒に5階に戻る。

さっきまで眠りスライムもどきだったのが、また影に戻った。

「すごい、すごいよキミ」

ネプチューンがはしゃいだ。

☆が減りきってしまうとどうしようもないが、そうなる前に別の階層でリセットすることが出来る。

それを知った俺は、少しだけホッとした。