軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

263.分裂ダンジョン

「低レベル、からっぽ」

「こっちの家にも人はいなかったわ」

戻ってきたイヴとセレストの二人の報告を聞いて、俺は眉をひそめた。

テトラミン、ハグレモノを一掃した後に街中を見回したんだが、住民は一人もいなかった。

あっちこっちの建物を探してみたが、人っ子一人いない。

「いても困る」

イヴが物静かにいう。確かにそうだ。

ハグレモノが街中を闊歩しているバイオハザード的な状況になってたんだ。

この状況で住民が家の中に隠れていた、と言われた方が逆に困る。

「でもおかしいわね、こんな状況になってるのなら、リョータさんへの助けの求め方が違ってくるはずよ」

「俺もそれを思ってた」

周りを見る、ハグレモノとの戦闘のあと、まるで廃墟の様なテトラミン。

デールは俺に本拠地を移してくれと言った。

それでネプチューンは「お前の税金目当て」といって、俺は納得した。

「この状況ならもっとストレートに、モンスターから街を助けてくれだもんな」

「それに、低レベルの必要がない」

イヴの台詞も的確だ。

不機嫌そうに見えるのは、俺が呼ばれてきて彼女のニンジンが減るからだろう。

「そうね、モンスターが溢れてるから退治してくれ、なんてのは普通の冒険者に頼めばすむ事だわ。今の規模なら――100人も投入すれば一日で終わる」

「どうなってるんだ?」

理由はすぐに分かった。

モンスターが一掃されて、シクロからの隊商が街にはいってああだこうだやってるところに、デールと、ほかの街の住民が戻ってきた。

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

掃討したのが俺たちだと聞いて、デールが街の住民達と一斉に、何度も何度もお礼を言ってきた。

「それよりも説明してくれ。なんでこんな状況であんな頼み方をしたんだ? モンスターが街を占拠しているなら、別にそれでも断りはしなかった」

「違うんです!」

デールは慌てて、あまりにも慌てすぎていい訳に聞こえそうな感じで説明する。

「ギリギリでやってたのです、ダンジョンの 出(、) が悪くて。でも私がシクロに向かうまでは街の体裁を維持してました」

「つまり、あんたが離れた後に状況が変わった?」

「はい……部下の……副会長の男が残っていた街のお金をすべて持って逃げたのです。私がいない隙に……」

「……」

「それで街のお金がつきて、ぎりぎりの綱渡りでやってきたのが――」

「一気に決壊した、と」

頷くデール。

彼の後ろにいる街の人々も同じように頷いた。

嘘じゃないみたいだな。

一人二人嘘をつけても、数百人が同じ嘘をつくことは不可能だ。

嘘に関わる人間が増えるにつれて、ばれる確率が加速度的に上がる。

だれか一人でもばらしたらそれで終わりだ。

そういう感じじゃない、今の話は本当だ。

何より、街から逃げ出してモンスターのいない所まで全員で避難して。

疲れ切った街の人々の顔が強く説得力を持っていた。

いろんな利益目当てだが、シクロの人間が入ったおかげで、とりあえず街は回る事になった。

街の事はひとまずおいといて、俺はセレストとイヴとの三人でダンジョンに入った。

街の事は放っておいて、まずはダンジョンの事を確認しようと思った。

プルンブムダンジョン、地下一階。

「むっ、これは……」

「水の中なの! どうして!?」

初めて入ったダンジョンに俺とセレストが驚いていた。

ダンジョンの中はまるで水没しているかの様な空間だった。

水草がゆらゆらと漂い、体の動きは水の抵抗でものすごくのろい。

「あれ? でも息ができるぞ」

「ほんとだわ」

「そういうとこ」

「イヴ? ここに来たことがあるのか?」

イヴは小さく頷いた。

「前の前のパーティーの時に」

「いろんなパーティーにいたんだな」

「いた。でもいつもダンジョン性の違いで別れる」

だから音楽性の違いみたいにいうのはどうかと思うんだ、前の時もそうおもったけど。

「水の中っぽいだけで、呼吸は普通に出来るんだな」

「そのようね――えい」

セレストは魔法の道具、バイコーンホーンを取り出して、それを振った。

無限でファイヤーボールを使えるバイコーンホーン、それは普通に炎の玉を打ち出した。

「普通に出来るわ、水中だから炎が弱まるとかはないのね」

「なるほど、じゃあこれも大丈夫か」

俺は銃を抜いて、無限雷弾を込めて、壁に撃った。

着弾して周りに電気をばらまくが、水中だからってことでこっちまで導電するようなことはないようだ。

水中っぽいが水中じゃない。

そんな不思議なダンジョン、プルンブム。

「さて、モンスターは……いた」

早速モンスターを見つけた。

水中っぽいところで、空中で泳いでる魚のような見た目のモンスターだ。

サイズはでかく、水族館でみるようなイルカと似てる。

しかし顔は獰猛で口から鬼のような牙がでている。

「キラーフィッシュ、ウサギこれ嫌い」

「キラーフィッシュっていうのか」

無限雷弾から成長弾に戻して、物々しい空気で泳いでくるキラーフィッシュを撃った。

銃弾はキラーフィッシュを捕らえ、縦に貫通していったが。

ブーン。

耳障りな雑音がした後、キラーフィッシュは二つに分裂した。

「なっ!」

「二つになった!?」

「そういうモンスター。魔法で片方焼いて見る」

「分かったわ! バイコーンホーン!」

セレストはファイヤーボールを飛ばした。

炎の玉がキラーフィッシュをしっかり捉えて、炎上させたが。

「また増えたわ!」

燃やされたキラーフィッシュはまたしても二体に分裂した。

最初の一体が二回の攻撃で三体に増えた。

「こういうこと、倒さないと攻撃するたびに増える」

イヴは近づき、キラーフィッシュの一体にチョップを叩き込んだ。

ぶーーーーーん。

今日一番の雑音がこだました後、キラーフィッシュが一気に二十体以上増えた。

「こうなる」

「そこで多段ヒットやめ!」

イヴのチョップは一発に見えるが、実際は一秒間に百発とか叩き込むタイプの技だ。

それをやって、キラーフィッシュは一気に増えた。

「こういうところだから、ウサギはこいつら嫌い」

「そ、そんな事いってる場合じゃないわ! さすがに増えすぎよ――」

慌てるセレスト。

俺は銃弾を込めて、深呼吸の後乱射した。

火力を上げて、貫通弾の連射でキラーフィッシュを倒した。

二十体以上に増えたキラーフィッシュをまとめて倒した。

「――って大丈夫だった。すごいわリョータさん」

「低レベルのくせに生意気だ」

二人の褒め言葉よりも、俺はもっと別の事に気付いた。

「なるほどな」

「なるほどって、どういう事?」

「ほら」

俺は空中に漂っている物をさした。

それは白い物、水中に浮かぶ白い物。

においからして牛乳だろう。

「うん、プルンブム一階、ドロップは牛乳。浮かんでるのをゆっくり回収できる」

「意外と便利なのね、このダンジョンの特性」

セレストの言うとおり。

牛乳は容器に入っていないが、無重力空間に浮かんでる水滴みたいに、何かと混ざったりすることもなく、そこに存在していた。

これはこれで便利だ、だが。

「一方で致命的だ」

「え? 致命的って?」

「気づかないか? 俺はいま何体倒した」

「え? 二十くらいだったかな?」

「ちがう」

「え?」

「一だ」

俺はそう言って、プカプカと浮かんで牛乳をさした。

「一だ」

「……えっ、うそ」

戸惑うセレスト。

ちょうど別のキラーフィッシュが泳いできたので、俺は軽く小突くとかして、弱攻撃でキラーフィッシュを分裂させる。

今回は自分でやったから、数を数えた。

ジャスト100になったところで、また乱射で一斉に倒した。

セレストがまた「すごい」と歓声をあげたが、直後に愕然となった。

100体のキラーフィッシュは消えて、一体分の牛乳しかドロップしなかった。

分裂させればさせるほど徒労感がひどい。

これがプルンブムが寂れていった原因だな。