軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

25.災害救助

シクロの郊外、俺はせっせとハグレモノを特殊弾に変換する作業をしていた。

もらったパンドラボックスは計五個、それに全部種を詰め込んで、ダンジョンの外に持ち出して人気のないところでハグレモノにした。

数がそれなりに多いから、箱単位でやった。

一箱目と二箱目はスケルトン、出して、銃弾で乱射して合計100発の冷凍弾にする。

三箱目はゾンビ、こっちは念入りにヘッドショットで倒して行き、50発の火炎弾にした。

そして最後の一箱を出そうとしたところ。

へんな感覚が体を突き抜けて行った。

今まで感じた事のない奇妙な感覚、例えるのなら氷点下の寒さを1秒間だけ感じた、そんな不思議な寒さを伴った感覚。

なんだこれは?

まわりをきょろきょろ見て訝しんだ。

すると、遠くからエミリーの小さな姿がバタバタ駆けてくるのが見えた。

「あっ、ここにいたですかヨーダさん」

「エミリー。どうしたんだ?」

「じつは、魔力嵐の警報がでたのです。それを教えに来たのです」

「魔力嵐?」

「はいです。それのせいでしばらくシクロのまわりでは魔法が使えなくなるです。わたしとヨーダさんはあまり関係ないですけど、一応教えに来たです」

「や、その魔力嵐ってなんだ? そもそも分からないから教えてくれ」

「えっと、わたしもよく分からないです。魔法は使えないのでそこまで詳しくないのです」

「そっか」

魔力嵐で、魔法が使えない。

その事が気になったおれは、最後の一箱を特殊弾に変えるのを中止して、ひとまず街に戻った。

一番気軽に話を聞ける相手、って事でエルザのところを訪ねた。

ちょうど仕事が終わって帰宅するところのエルザを誘ったら、大喜びでついてきてくれた。

彼女と一緒に街のカフェにやってきて、話を聞いた。

「魔力嵐ですか」

「ああ、分からないから一から教えてくれないか」

「わかりました! お任せ下さい!」

エルザは満面の笑顔でトン、と胸をたたいた。

「魔力嵐っていうのはですね、ごくごくたまーに起きる自然現象で、それがくると魔法が使えなくなるんです」

「魔法が使えなくなる?」

「はい、まったく使えなくなるんです。規模の大きさによって、街だと魔法が使える、街でも使えなくなる、の差がありますね」

「街だと……街でも。ってことはダンジョンだと?」

エルザははっきりと頷いた。

「ダンジョンの中は完全に使えなくなります。だから魔力嵐が来てるとき、魔法使いの冒険者は強制的に休むしかないんです」

「なるほどな」

ダンジョンで魔法が使えなくなれば魔法使いは何もできないからな。

世の中にはどう見てもプロレスラーにしか見えない魔法使いとか、僧侶のくせに鉄拳制裁とかいうキャラいるけど、基本魔法使いは魔法が使える代わりに肉体が貧弱だ。

ゲームで知った特徴はこの世界でもそのまま通用される認識だった。

魔法が使えなくなった魔法使い、というのはポンコツ以下の存在だ。

「それに、シクロだとちょっと困るんです」

「どうしてだ?」

「シリコンってダンジョンしってますか? あそこのモンスターって魔法以外ほとんど効かないんですよ、魔法はメチャクチャ効果的ですけどね。だからいつ行っても、あそこは魔法使いだらけなんです」

「そうなのか、それじゃあ魔力嵐が来てる時って、シリコンの生産は完全に止まるってことだ」

「その通りです。シリコンってほとんど葉物のドロップだから、しばらくは葉物野菜が高騰しますね。ま、最低でも前日までにはわかるので、慣れればそんなに影響ないですけど」

まるで台風だなあ、とおれは思った。

が、話は分かった。

そういう自然現象があって、この世界はその自然現象にいろいろ影響されるって事も。

大まかには自然災害で一部のドロップ品、物理耐性の高いモンスターのドロップ品産出が減る、って事だな。

魔法の話だからおれには関係のないことで、とりあえず知って、知識欲が満たせたからそこで話が終わりだ。

と、思っていたら。

「あれ? ごめんなさいリョータさん」

エルザが立ち上がって、店の外にでた。

後を追いかけて外に出た、エルザがとある男に話しかけているのがみえた。

男はいかにも魔法使いっぽい法衣を着ていて、手に魔法の杖を持っている。

「エルザさん!」

「どうしたのレイズさん、そんなに慌てて」

「ローザがシリコンの中に取り残されたんだ!」

レイズと呼ばれた男は顔を青ざめて、救いを求める表情をしていた。

ローザというのはレイズのパートナーだ。

二人とも魔法使いで、最近他の街からやってきて、シリコンという魔法使いの天国の様なダンジョンを知って、このシクロに定住した。

この日もいつも通りシリコンに通った。

レイズはドロップ品をひとまず街に持ち帰ってきたところ、魔力嵐が発生した。

大抵の魔法使いは前日に魔力嵐が来るのを知ってるから行かなかったり早めに切り上げたりしたが、シクロに来て間もない二人はその情報をキャッチする手段を把握してなくて、ローザが深く潜ってるときに魔力嵐がきてしまった。

結果、魔法が使えないダンジョンの中で魔法使いが一人取り残された、ということになった。

「悲劇だね」

エルザとレイズの話を聞いてたら、横からいきなり話しかけられた。

まだホモ疑惑が俺の中では晴れてない、ネプチューンだ。

「いきなり出てくるな、びっくりするだろ」

「そろそろ僕のものになる決心はついたかい」

「言い方がおかしいんだよあんたは! って今はそんな場合じゃないだろ」

俺はレイズの方を見ていった。

「あれは、正直どうしようもないね」

「どうしようもないって、そんな気軽に」

「魔力嵐が来てる時のシリコンってぼくでも近づきたくないところだからね。あそこの一番弱いモンスターでも、ぼく、一体につき10分以上はかかるからね倒すのに」

「……お前でもか」

ネプチューンの力は知っている、酒場でちょっとやり合ったからだ。

そんな彼をもってしても1体につき10分かかるって……そうとう物理攻撃に厳しいダンジョンだな。

「だから、ご愁傷様だね。まあダンジョンに潜ってモンスターと戦う冒険者だから、こういうのは日常茶飯事だけどね」

ネプチューンはけろっと言った、本当にそう思ってるみたいだ。

カフェの他の客、そして店の前を通り過ぎていた通行人も。

大半がお気の毒そうな顔をしてるけど、口々にしょうがないといってる。

ダンジョンに冒険者、すべての生産が命がけな世界に生まれた価値観。

なんとなくそんな風に感じた。

それがこの世界の当たり前なんだろうな、と俺は思った。

思ったのと受け入れるのとは話が別だ。

場所を聞いて、俺はシリコンダンジョンにやってきた。

目的はもちろん、ローザという女魔法使いを助ける為に。

深呼吸して、中に入る。

「たしか地下三階って言ってたな」

レイズから聞いた話をつぶやきつつ、ダンジョンを進む。

シリコンは洞窟タイプのダンジョンで、天然の土壁がどこまでも広がっていた。

早速モンスターが現われた!

形は芋虫、大きさはティッシュ箱程度だ。

そこまで大きくない――芋虫にしてはでかすぎる。

どっちをとるかで感じ方が変わるが、今は気にしてる場合じゃない。

無視して先に進もうと思った。

しかし、向こうは見逃してくれなかった。

回り込んで先に進もうとしたら、そいつはうねうねしてから、いきなり飛んで来た!

とっさにカウンターで殴った。

力Sでの渾身の一撃を叩き込む。

効かなかった。

殴りとばして壁にたたきつけたが、そいつはピンピンしていた。

「全力で殴ってほぼノーダメかよ」

物理耐性が高いのは伊達じゃないみたいだな。

スルーできないから、倒さなきゃいけない。

俺は銃を構えて、銃弾を撃ち込んだ。

芋虫の見た目だというのに、銃弾をはじいていた。

通常の銃弾はダメみたいだ、どうする?

ふと、冷凍弾と火炎弾の着弾する瞬間に魔法陣が出る事を思い出した。

火炎弾を装填して、飛んで来た芋虫を撃った。

命中して、魔法陣が出て、芋虫が燃え上がった。

途中で失速して地面に落ちて、痙攣したあと動かなくなった。

そして、アイテムをドロップしたもの。

葉物中心のシリコン、一階の芋虫はキャベツのようだ。

それを拾うことなく、先に進んだ。

どうやら特殊弾は効くみたいだ。

魔法が使えなくなる魔力嵐の影響を受けず、かつ実は魔法攻撃という特殊弾。

ちょっとだけホッとした。

俺なら――俺だけが彼女を助けられる、そう思った。

二種類の弾丸を使って、襲ってくるモンスターを倒して先に進む。

モンスターはしつこかった、逃げよう無視しようとしても、向こうから襲ってくる。

普段なら倒して金になるから嬉しいが、今はうっとうしい。

避けられないから、冷凍弾と火炎弾を使って全部倒して行く。

地下二階はソフトボールくらいのサイズのハエだ。

こいつもそこまで大きくないが、ハエにしては大きすぎる。

ハエもパンチと通常の銃弾がほとんど効かなくて、冷凍弾と火炎弾のみで倒す事が出来る。

ちなみにドロップはほうれん草、当然無視。

弾を装填してるときふと気づく、モンスターを倒してドロップしたアイテムがまるで道しるべのようになっていた。

それを冷凍弾で凍らせて回った。

あとでこいつらがハグレモノになったら大変だからな。

凍らせて止められるかどうか分からないけど、とにかくやった。

道しるべが氷の道になった。

そして、地下三階。

今度は三歳児くらいサイズのバッタだ!

でかい!

火炎弾で倒して、ドロップアイテムを冷凍弾で凍らせる。

ちなみにドロップは白菜である。

そうして進んでいく。

「ローザ! ローザどこだ!?」

地下三階にいるはずだから、大声で呼んだ。

呼んで、歩き回って探した。

たまにバッタが出てきて、倒して、ドロップを凍らせる。

そうして地下三階をくまなく探していくと。

「ローザ――いた!」

少し入り組んだ所に女魔法使いを見つけた。

女は地面に倒れてて、意識がない。

息が荒く、胸が上下している――生きてはいる!

よし、後は彼女を連れて帰るだけだ。

と思ったらまたバッタが現われた。

倒そう、もう引き戻すから火炎弾だけで――。

「弾切れだと!?」

火炎弾はなかった、そして冷凍弾もなかった。

途中でパンパンうったせいで、両方とも切れてしまったのだ。

バッタが飛びついてきた、結構早い!

躱して殴り飛ばして、通常弾を連射で撃ち込む。

が、効かない。

力Sでも通常の銃弾でもまったく効かない。

オマケに早い!

どうしようかってちょっと迷ってるうちに攻撃を食らった!

スライムどもよりもゾンビどもよりもかなり重い一撃だ。

体力もSだからすぐにはどうにかならないだろうと思うけど、このままじゃどうしようもない。

なんとか倒せないかと、通常弾を撃ち続けた。

撃って撃って撃ちまくった、避けながらうって、気づいたら軽く百発以上打ち込んで、まわりが硝煙まみれになった。

「やったか」

が、だめ。

硝煙を突っ切って、バッタが飛んできた。

まずい、どうする?

ローザを担いでかばいながら逃げるか?

体力Sだし、地上にでるまでなんとか持つか?

ええい、考えても仕方ない、倒せないんなら逃げるしかない!

そう思ってバッタを一旦退け、ローザに駆け寄った。

意識のない彼女を担ぎ上げて、逃げようとする。

「……うそだろ、こんなに」

バッタが増えていた。

全部で五体。集まってきたそいつらはおれ達を取り囲んだ。

一体でもヤバイのに、五体だと?

これは……まずい。

どうする? どうしよう。

そう思っていたら、遠くから大群の音がした。

モンスターの気配、しかも大群。

さらに増えるのか!

と思ったらやってきのはゾンビだった。

ゾンビ? なんでゾンビ?

「ヨーダさん!」

「エミリー!?」

「ヨーダさんのボックス持ってきたです!」

「――っ! ありがとう!」

一瞬で理解したおれは真っ正面のバッタを退け、エミリーがつれて来たハグレモノのゾンビを倒して、火炎弾に変えた。

こうなったらこっちのものだ。

まず火炎弾でバッタどもを倒し、それからゾンビを一掃した。

回収した火炎弾を持って、エミリーとローザ、三人で脱出した。

途中でドロップからハグレモノ化したが、残った火炎弾で何とか突っ切って、ダンジョンから脱出出来たのだった。

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

「ありがとう、あなたは……命の恩人です……」

レイズ、そしてローザにものすごく感謝された。

「いいから、まずは病院とかいって」

「はい! 行こうローザ!」

「うん……」

レイズはローザを連れていった。

二人は最後まで、街中に姿が消えていくまで、何度も何度も振り返っては、お礼を言ってきた。

助けられてよかった、とおれはホッとしたのだった。