軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

249.亮太>アリス>レベッカ

フォスフォラスの外、少し離れた所の物陰。

隠れて見える出口から出てくる冒険者達は、ほとんどが不満だらけの顔をしていた。

「急にドロップしなくなったぞ、どうなってるんだ一体」

「明日また来ようぜ」

「とりあえずこの金で一杯だ」

金がドロップしなくなったフォスフォラス、そこから冒険者が続々と撤退してるみたいだ。

フォスフォラスがドロップしなくなった理由、それはもちろん――

「大成功だな」

「うん。メラメラがここにいるからね。アウルムちゃんと同じ」

俺の横にいるアリスが、新たなに仲間に加わったメラメラ――精霊フォスフォラスを肩に乗せて、笑顔で言い切った。

「同じって事は? いまからでも戻ったらドロップが復活するのか?」

「どうだろう……どうかな」

「……」

「するって」

無言だが、メラメラの炎が一瞬大きくなった反応を見せた。

今までの仲間モンスター同様、言葉は発しないが、アリスと意思の疎通は出来るようだ。

「え? あっ、そうじゃないよ。むしろ戻らなくていい――でいいんだよねリョータ」

「そうだな、その方がいい」

「そういうことだから。あっでも、ほかのダンジョンへは一緒にいこうね。みんなで♪」

アリスが言うと、同じように肩に乗ってるほかの仲間モンスター――ホネホネからガウガウまでわいわいと盛り上がった。

デフォルメされた姿なだけあって、わいわい盛り上がってるその姿もコミカルで可愛らしい。

「そだ! ねえメラメラこっち来て、それとホネホネも」

何かを思いついたアリス、彼女は手のひらを差し出して、そこを示した。

ホネホネはまったく躊躇することなく手のひらにのった。

まだアリスになれてないメラメラはすこし迷ってから、同じように手のひらの上にのった。

スケルトンのホネホネはアリスの手のひらの上に立ってる。

一方のメラメラは宙に浮かんでる。

骨と炎、一緒に並んでるとまるでガイコツに人魂って感じだ。

「似合うなそれ」

「だよね! 二人ともすっごくかわいいよね!」

「可愛いとは言ってない、がまあ似合う。多分ベストパートナーじゃないか?」

「あたしもそう思う」

満面の笑顔を浮かべるアリス。

それを受けて、ホネホネは器用にガイコツの目の所を笑みの形にして、カタカタと喜んだ。

一方のメラメラはゆらゆらと揺れて炎の色が明滅したが……まんざらでもなさそうに見える。

新入りのメラメラを中心に、アリス一派は楽しそうに盛り上がった。

楽しくてずっと見ていたかったが。

「アリス、セルに報告して来いよ」

「えっ、あたしが?」

「メラメラが解決の証拠だから、セルに直に見せた方が話が早いだろ」

「そだね! うん、じゃあいってくる」

頷くアリス、直後にマスタードラゴンのガウガウがモンスターサイズに戻って、アリスとほかの仲間を乗せて文字通り飛んでいった。

「呆れましたわ」

背後から声がきこえてきた。

レベッカ・ネオン。

俺を訪ねてきて、ダンジョンまで追いかけてきた彼女は、アリスがメラメラを連れてきてからはずっと黙って、距離をとって見守っていたが、アリスがいなくなったところで話しかけてきた。

そんな彼女に振り向いて、聞き返す。

「なにが?」

「話は聞きましたわ、フォスフォラスの異常滞在、その解決なのでしょう?」

「ああ」

「あれでは功績が彼女の物になってしまいますわ」

「しまいますも何も……」

俺は背中を振り向き、空に豆粒大に消えて行ったアリス達の姿をちらっと見る。

「解決したのはアリスだ、俺はなにもしてない。功績があるとすれば100%彼女の物だ」

「本当によろしいんですの?」

「ああ」

俺は即答した。

迷いは少しも無かった。

レベッカはじっと俺を見つめた後。

「……ふん」

と、不機嫌そうな顔で鼻をならして、立ち去ってしまった。

そういえば来た理由も聞いてなかったけど……いいのか?

シクロダンジョン協会、会長室。

アリスは珍しく亮太の同席なしでセルと対面し、フォスフォラスのメラメラを見せた。

それを見たセルはしっかりと頷いて。

「さすがサトウ様の仲間、精霊をも味方にしてしまうとは」

「味方じゃないよ、仲間だよ。ねっ、メラメラ」

メラメラは緩やかにその炎を明滅させた。

同意とも否定ともつかない、曖昧な返事。

彼は未だにアリスに困惑している。

記憶にある限り、フォスフォラス――自分のダンジョンに入って来た人間の中で「お金」を求めない初めての相手だからだ。

「さすがだ」

「これであたしも、あの人と同ランクになったかな」

「レベッカ・ネオンの事か」

「わかるの?」

「それとなくな」

「そか……どう思うかな」

アリスは期待を込めた視線でセルに答えを求めた。

舐められないようになりたい。

亮太の仲間として、ファミリーの一員として舐められないようになりたい。

そのために、同じような出自であるレベッカと同じ精霊付きを目指した。

その結果が出た今、外部の人間であるセルからどう見えるのか知りたかった。

「ふっ、同ランクではないな」

「え? まだダメなの? そんなにすごい人なのか、レベッカさん」

「いや、むしろ逆だ」

「ふぇ?」

どういうことだ? とキョトン顔でセルを見つめる。

「お前は既に向こうを越えている。故に同ランクなどではない」

「……えええ!? うそ?」

「無論だ、功績もろともダンジョンを一人占めするような女だ、しかもそれで勝手に嫉妬して不機嫌になる……ふっ」

セルはニヒルに口角をゆがめた。

佐藤亮太最大の信者である彼は亮太の周りで起きた出来事をほとんど把握している。

レベッカが一方的に劣等感を覚えて、不機嫌になって去っていったついさっきの出来事も当然の如く把握していた。

「お前は、レベッカ・ネオンよりも遥かに格上の人間になった。余が保証しよう」

「やた!」

喜ぶアリス、メラメラをのぞいたほかの仲間モンスター達も大いに喜んだ。

「今後も何かあったらいつでも頼ってくるがよい。セル・ステムの名にかけてできる限りの手助けをしよう」

と話すセルも、事件解決した協会長の立場だけでなく、心から嬉しそうにした。

セルは完全なる亮太の信者だ。

精霊付きさえも従えるほどの男。

そういう意味では、セルはアリスの精霊付きを心から歓迎した。

おそらくは、本人以上に、その事を歓迎していた。