軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

219.10000000%還元

別の日の夕方、加速弾を回収しに「リョータ」に来た。

モンスターたちの村、俺の名前をつけた、リョータ。

「おー……」

村に入ると、俺は感嘆したやら圧倒されるやら、そんな声を出した。

村はゴミがあふれかえっていた、とは言え散らかってる訳ではない。

モンスターたちの仕事、処理すべきゴミがあっちこっちに山積みになっている。

その量は今までの比じゃない、軽く倍はある。

そのゴミの山を相手に、モンスターたちは攻撃をしかけていた。

量が増えた事で遠目にはジオラマっぽく見える様になったこともあって、まるで映画に出てくる怪獣が街を破壊するシーンのように見えた。

「リョータさん」

村の中から、クレイマンが俺の姿を見つけてやってきた。

「こんにちは……いえこんばんは!」

「ああ。それよりこれはどうしたんだ? 普段よりゴミ、多くないか?」

「そうなんです。実はこの村の名前が「リョータ」になったという事をいろんな人にいったら、あっちこっちの村や町からうちのゴミも処理してくれって言ってきたのです。それを受け入れたらこんな事に」

「仕事が増えたって事か……」

この現象は知ってる。

広告塔だ。

企業が有名人を広告塔に立てて、それで売り上げが増えるという現象だ。

「新しく来た人は俺に宜しく、とか言ってた?」

「はい! さすがリョータさん、何でもお見通しなんですね」

なるほど。

広告塔もそうだが、それなら俺とつながりを持ちたいって相手も中にはいるんだろうな。

まあ、仕事が増えた事自体はいいことだ。

「ちゃんと代金は払われてるか」

「はい、それはもちろん! あっ、これが今度のリョータさんにお渡しする分です」

そう言ってクレイマンが差し出したのは一万ピロ札十枚、十万ピロだ。

最初にもらったのが二万だと考えればかなり売り上げが上がっていると言える。

もらわないとかえって気を病まれるので、俺は受け取ってポケットにしまった。

これまでもらった分は百万近くになる。

そのうち何かあったら彼らに還元しよう。

そう思い、加速弾を回収するために、怪獣大戦争になってる村の中に入った。

「ふぅ……」

ふと、なにやら疲れ切った顔のモンスターの前を通った。

巨大なカエルだ、体の色は紫色をしている。

名前は確かポイズンフロッグだっけ。

「大丈夫か?」

「え? ああ! リョータ様!? 大丈夫、自分はまだまだ行けるっす!」

ポイズンフロッグはそう言ってパッと立ち上がり、口から毒の息を吐いた。

毒の息は彼が担当してるゴミを包み、溶かしていった。

ゴミは処理したが、ポイズンフロッグの顔色がますます悪くなったのを俺は見逃さなかった。

「無理するな、体調の悪い時は休んでおけ……というか、そのまま立ってろ」

俺はそう言って、銃を抜いて無限回復弾を撃った。

「こ、これは……力がみなぎってくる」

「回復させただけの応急処置だ。それよりもあまり無茶はするな」

「ありがとうございます!」

「ありがとうございます、さすがリョータさん」

ポイズンフロッグとクレイマンに相次いでお礼を言われた俺、何気なく周りを見回すと。

「なんとなく、顔色の悪いのが多いな」

「……ええ、そうなんです」

クレイマンは複雑そうな表情で答えた。

「実はみんな、あまり回復できてないのです」

「仕事増えすぎたからか?」

「それもありますけど……我々モンスターは人間と同じ寝床じゃあまり回復しないのです」

「うん?」

「やっぱりというかなんというか、産まれたダンジョンと同じ環境の方が回復するのですよ」

「ダンジョンってことは、地下道だったり鍾乳洞だったりじゃないとだめなのか」

「はい。あっ、もちろん人間の寝床でもそれなりに回復します」

「なるほど……体調が悪いのって多いよな」

聞きながらもう一度周りを見回す、うん、俺の目にも分かるくらい体のキレとか、魔法の威力とか、吐いてる炎とか氷とか。

本来のパフォーマンスを出し切れてないものが多い。

「そうですね」

「よし、希望者を集めろ。今みたいに回復させてやる」

「――っ! ありがとうございます!」

クレイマンはお礼を言って、仲間のモンスターを呼びに走った。

無限回復弾で全員回復させるのはたやすいが、それじゃ解決にならない。

解決するためには……。

夜、シクロの街、なじみの不動産屋。

痩せぎすの顔見知り、アントニオと向かい合って座っている。

出された高級そうな茶を飲んで、一通り世間話を済ませた後。

「それで、今日はどのようご用ですか? また新しい屋敷をお探しですか」

「いや、家を建てたい」

「はい、ありがとうございます」

大口の取引になる事を知ったからか、アントニオは地味に声が上ずっていた。

「どのような家をご所望でしょう」

「寮、だな」

「寮、ですか?」

「ああ、大人数を住まわせる建物だ……わからないか?」

もしかしてこっちの世界に寮の概念がないかも知れないと思い確認してみたが。

「いえそれは存じてます。しかし寮……ですか」

「それもただの寮じゃない。内装はダンジョンみたいにして欲しい」

「ダンジョンみたいに?」

「そうだ」

俺はポケットから四つ折りの紙を取り出して、広げてテーブルの上に置いた。

ここに来る前にあらかじめ描いといた絵だ。

「これは……家というよりは塔のようなものですね」

「ああ、塔だな。例えばだけど、一階はテルルの様なダンジョン、二階はニホニウムの様なダンジョン。ダンジョンごとに特色があるだろ? 地下道みたいだったり鍾乳洞みたいだったり」

「屋敷風の様な所もありますね」

「そんなところがあるのか」

これにはちょっと驚いたが、話の要点じゃないのでひとまずスルーした。

「階ごとに違うダンジョン風に建てて欲しい。可能かな」

「特別な機能は……?」

「いらない、あくまで環境を似せればいい」

クレイマンから念押しで聞いた話を伝えた。

地脈の力とか魔力とかうんたらかんたらなそういうのはない、環境さえ似ればいい。

要するに「枕が変わると寝付けない」、それの大げさなバージョンだ。

だから環境の見た目を再現できればそれでいい。

「であれば可能です」

「そうか。これを新しい村……「リョータ」に立てて欲しいんだが」

「サトウさんが保護したモンスターたちが住む村ですね」

「それが分かれば話が早い。どうだろう」

「ざっと数億……場合によっては十億くらいかかりますけど」

結構な値段だ、だが予想内でもある。

「分割させてくれたら」

「わかりました。他ならぬサトウさんの頼みです、引き受けましょう」

「そうか、助かる。担保は――」

「いえいえ、サトウさんなら信用出来ますし、それにこれほど大口の取引、お礼を言うのはこちらです」

「そうか、ありがとう」

別の日にまたアントニオが職人とかを集めてくるので改めて打ち合わせすると言うことで、この日は彼の店を後にした。

とりあえず、モンスターたちの住処の改修は無事出来そうだ。