軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

20.新居で超まったり

次の日の朝、おれとエミリーは完全に仕事を休んで――ダンジョンに潜ることをやめて、街に出てきた。

前回、エミリーのために急いで部屋を借りたときにもお世話になった不動産屋にやってきた。

中の人がおれをみて、立ち上がって出迎える。

「あれ? サトウさん、でしたっけ。今日はどうしたんですか」

三十代前半の、物腰の柔らかい男性だ。

完全にやせ型で、悪い言い方をすればひょろひょろしているタイプの見た目。

ただし喋りははっきりしてるから、頼りない感はない。

えっと……たしか名前は……。

……えっと。

「アントニオって言います」

男性は微笑みながら答えた。

こっちが覚えてないと察して、先に切り出してくれた。

ちょっと助かった。

アントニオに案内してもらって、エミリーを交えた三人でテーブルを挟んですわった。

「新しい部屋を借りたいんだ」

「ありがとうございます。条件はどのような感じです」

「とにかく新しく、そして広く」

「わかりました、予算はどれくらいでしょうか」

「諸々込みで80万ピロ」

「ヨーダさん!?」

隣で静かに聞いていたエミリーが驚いて、おれを見つめた。

「80万ピロってヨーダさんの全財産なのです、大丈夫なのです? すこしは残した方がいいと思うのです」

「大丈夫だ」

金がなくなれば稼げばいい。

ドロップが全部Sで、それで㏋と力が上がってモンスターを楽に倒せるし、魔法カートで稼ぎの効率も上がった。

今、ここで全財産使っても何も困らない。

使ってもまた明日稼げばいい。

明日も稼げる力と確信。

それが今のおれにあって、この使い方に繋がっている。

「わかりました。それでは――こういう物件なんてどうでしょうか」

部屋はあっさり決まった。

街の中心にある、2LDKの物件。

新築で綺麗で、まわりの住人の質も折り紙付きだという。

家賃は15万――魔法カートを使った一日の稼ぎの半分程度だ!

即入居可能だから、その場で決めて、敷金に礼金と一ヶ月分の家賃を前払いして、契約をしてきた。

ちなみに前の部屋、2万ピロの物件はそのまま借りたままにしておくことにした。

引っ越しても前の部屋は借りたままにしておく、セカンドハウスに残しておく。

エミリーが手入れしたあの暖かい部屋も残しておきたい。

ちょっと贅沢だけど、それは無理なく可能だから、おれはその贅沢する事を選んだ。

次の日、新居初日。

起きたおれは綺麗なリビングでエミリーが用意した朝ごはんを食べた。

「すごいなあ、エミリーは」

「なにがなのです?」

「ここに引っ越したのは昨日だよな」

「はいです」

「なのに――」

リビングの中を見回した。

家の中は綺麗だった。

それは、ただ新築だからという綺麗じゃない。

新築の綺麗さと、長年住み込んだ暖かさが同時にあった。

昨日入ったときは間違いなくこんなんじゃなかった。

ピカピカの新品で、ものすごく綺麗で。

綺麗なだけ(、、、、、) だった。

それが今はこうだ、驚かない方がどうかしてる。

「ちょっとだけお掃除してみました」

「ちょっとだけってレベルじゃないだろこれ」

驚嘆に値する。

新品の靴で毎回靴擦れするおれからすれば、新しいのに温かい今の部屋は驚嘆に値する、としか言えなかった。

それをやったエミリーはやっぱりすごい女だ。

おれは実家にいる時以上に、実家にいるような暖かさを感じた。

「今日もニホニウムからテルルいくです? これヨーダさんのお弁当です」

そういって、小包を差し出すエミリー。

受け取るおれ、中身は間違いなく昼ご飯、お弁当だ。

エミリーの弁当、それはきっと美味しい。

ダンジョンの中でも、冷えてても美味しく感じるように作ってくれてる。

それがエミリーの腕だ。

ダンジョンの中でそれを食べて、一服するのは幸せ。

なのだが。

「今日は行かない」

「どうしてです?」

おれはもっとすごい幸せを、今日一日つぶしてでも堪能したい幸せを見つけた。

「今日は家でゴロゴロする、働かない」

「い、いいんです? ダンジョン行かなかったら収入ないです」

「大丈夫、明日やればいい。というかさ」

「はい?」

「毎日働くの馬鹿らしいと今思った」

「えええええ!? ま、毎日働かないでいいですか?」

「いいと思う!」

おれはきっぱり言い放った。

そう、いいと思う。

毎日働かなくてもいい、好きな時にダンジョンに出向いて必要な分だけ稼げばいい。

そうするための力をおれはもってるから。

だから丸一日だらだらする日があってもいいと思う!

というかだらだらしたい! エミリーが作ってくれたこの環境で!

そのエミリーはオロオロした、働かないことにたいしてのオロオロだ。

「エミリー」

「はいです」

「今日は休もう! 全力で」

「は、はいです!」

おれに押し切られた様子で、エミリーは休むのに付き合ってくれた。

この日はすごくのんびりした。

エミリーと一緒にいて、まったりして。

途中でニンジンをねだりに来たイヴに在庫のニンジンをあげて、彼女とも一緒にマッタリして。

そうして、一日がすぎて――この日の収入はゼロだった。

それでもまったく問題はなかった!