軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

151.全員出動

サルファダンジョン。

改めて入ると、やっぱり闘技場みたいな作りだな。

ダンジョンに入るとすぐにリングの様な場所に立たされて、まわりはそびえ立つ壁に囲まれている、壁の上にうっすらと観客席の様な作りになっているのが見えるが、観客はもちろんいない。

無人のコロシアム、そんな感じのダンジョンだ。

そして、モンスターが現われる。

成人男性より少し小柄な一つ目のモンスター、サイクロプス。

そいつがこん棒を振りかぶって襲ってきた。

モンスターにしては脅威が少ない、見た目通りのパワーだ。

小柄な男が振り回す木のこん棒をよけて、顔面にクロスカウンターを叩き込む。

レベル1に強制的に戻されるダンジョンだが、俺はずっとレベル1で、能力は「レベル1のまま」だ。

力SSの一撃でサイクロプスを瞬殺した。

サイクロプスは消えて、麦がドロップされた。

目測でやっぱり100ピロ程度の少ない量だ。

扉が現われて、点滅し始めた。

ここまでは前回と同じ、ここからはどうだ?

扉を無視して、その場で待機した。

約30秒、扉が消えて、モンスターが現われた。

おなじ緑色の人型モンスター、サイクロプス。しかしさっきよりも一回り大きかった。

あきらかにもう成人男性よりもおおきい、バスケ選手か相撲の力士くらいは大きい。

そいつはやっぱりこん棒を持って、俺を襲った。

振り下ろされるこん棒は肉体相応の威力だった。後ろに飛んでよけると、空振ったこん棒が地面にあたり、石くずを飛び散らせた。

当たったらただじゃすまない、レベルの低下も考えると一撃で粉砕骨折するレベルだ。

それをガードした。

ズシン、と体に響く衝撃だが、それほど痛くはなかった。

体力とHPともにレベル1のまま、SSだ。

こん棒を受けて、掴んでひねって奪いあげる。

それでフルスイングすると、サイクロプスは体のまん中から真っ二つに引き裂かれた。

サイクロプスが消えて――奪い取ったこん棒ごと消えて、また麦がドロップした。

さっきの約倍、200ピロ相当の分量だ。

同じように扉が出て、無視して次を待つ。

更に一回り大きいサイクロプスが現われた。

今までのダンジョンでは「階層」だったが、ここは「ラウンド」って感じだ。

ラウンド3のサイクロプスを倒す、はっきりと一段階強くなって、ドロップもはっきりと倍近く出た。

ラウンドを重ねるごとにモンスターが強くなって、ドロップも増える。

第十ラウンドになるとサイクロプスはちょっとしたビルくらいの巨人になって。

「ふっ!」

全力のパンチを一発は耐えられる様になって、二発じゃないと倒せなくなった。

こん棒攻撃もかなり強くなって、HPと体力のダブルSSでもガードしたら腕がしばらくしびれる位強かった。

それを倒すと、まわりのそびえ立つ壁が崩れた。

ガラガラガラと音を立てて崩れて、まばゆいほどの光が差し込む。

はっきりと「クリア」と分かる光景だ。

壁が全部崩れた後、ドロップと一緒にダンジョンの外に戻された。

「お帰りなのです」

エミリー達仲間が俺を出迎えた。

エミリーだけじゃない、エルザも来ていた。

「お疲れ様ですリョータさん」

「ありがとう。早速だけどこれを数えてくれないか」

「麦ですね、ちょっと待ってください」

ドロップの計算のために、俺がダンジョンに入ってる間にエルザを呼んできてもらったのだ。

魔法カートは持ち込めなかったし、何より気になることがあったから。

「あら」

「どうした」

「えっと……そうですね。うーん」

迷うエルザ、俺が持ち帰った麦を二度見して、何かに迷っている様子だ。

「どうしたんだ?」

「多分ですけど、ちょうど十万ピロです」

「ちょうど十万?」

「はい、今日の買い取り相場でちょうど十万になります。細かい数字が出るかも知れませんけど、うちだったらその誤差を切り捨てて十万っていいます。あっ、もちろん足りない場合ですけど」

「ちょうどなのか」

「はい。それに――」

「……アリスのヤツも十万だった、とか?」

「よく分かりましたね」

驚くエルザ。

いくつかの予測があって、そのうちの一つがそうだ。

そして、何より。

「麦ってのが大きいな」

「どういうなのです?」

「麦と言えば……この前の一件でリョータさんが価格を暴落させてしまったものね」

セレストがいい、俺が頷く。

「そう、それがジャスト十万ってのが大きい。もしかしたらクリアしたラウンドごとに報酬が固定してるのかもな」

「なるほどなのです!」

あごを摘まんで考える。それも確認しないといけないな。

今は稼ぐ時じゃなくて、ダンジョン協会の依頼を受けて調査してるところだ。

「アリス、もう一回入ってくれ。3ラウンドでいい」

「分かった。ラウンドってのはモンスターの回数だね」

「ああ」

アリスが仲間モンスターと共にサルファダンジョンに入る。

レベル1に戻るダンジョンで、自分のレベルが戦力低下にならない彼女の方が他の仲間達よりも戦える。

3ラウンドのみって事で、アリス達はすぐに戻ってきた。

そこそこのみかんと共に。

「お待たせ」

「エルザ」

「はい。……700ピロですね、多分ジャスト」

エルザの査定に俺はやっぱりだと思った。

1ラウンドだと100ピロ、2ラウンドで300ピロ、3ラウンドで700ピロ。

10ラウンドで10万ピロ。

その間も調査しなきゃ。

「手分けしてやろうか。アリスは何処まで行けそうだ?」

「全部いけるよ」

「全部?」

「うん。あのね、なかだとりょーちんが呼べたの。でも今は呼べない」

「……って、事は。サルファに入ると一回だけりょーちん呼べるのか」

「うん!」

「なら最後までいけるな……」

「それとね、レベルアップする。あたしは2になった。なってもなにも変わらないけどね」

「なるほど」

アリスからゲットした新情報で作戦を組む。

「エミリー、4ラウンド頼めるか。無理なら無理しなくていい」

「任せるのです! こん棒を奪えば多分やれるです」

「セレストは1ラウンドから2ラウンドを繰り返してくれ、ドロップに揺れがあるかどうかがしりたい」

「分かったわ。やってみる」

「イヴは――」

「うさぎはいや」

食い気味で断ってきた。

彼女がこうまではっきりと拒絶を示すのは珍しい。

つかみ所がないイヴ、いつもはなんだかんだで頼みを聞いてくれるんだけど。

「いやなのか?」

「中にいると低レベルになる」

「1に戻っちゃうのがいやなのか。どうしてもダメなのか? イヴの経験で4から5ラウンドまで任せたいんだけど」

「……」

イヴは唇を尖らせてすねた顔をした。

「ニンジン一年分――」

「わかった」

「――を、エミリーの料理で」

「って、事だけど?」

「任せるのです! イヴちゃんのほっぺが落ちるくらい美味しくするです」

「じゃあ、ガマンする」

多分今までで一番高価で付加価値のついた報酬を要求したイヴ。

「アリスと俺は6から10を臨機応変に回数をこなそう」

「分かった!」

「エルザはドロップのはっきりとした金額を査定してくれ。多分途中からそっちもわかってくると思うから」

「わかりました」

こうして俺たちは再び全員出動でサルファに潜る。

そうして分かったのは、やっぱりサルファはクリアしたラウンドに応じてドロップ品の金額が決まってるって事。

100、300、700、1500、3000、6000、12000、25000、50000、100000。

ラウンド10の最後までクリアしたら10万ピロの売り上げになるということだ。

そしてレベルが1に戻って戦わせるという事も影響してか、各人のドロップも関係なかった。

アリスは「タイミング関係ない」と証言したし、ほとんどFファイナルのようなセレストもその金額通りのドロップになった。

俺にはあまり魅力のないダンジョンだが、レベルとドロップが低い冒険者でも、最後まで戦い抜けば10万ピロという夢が見えるダンジョン。

モンスターのパターンも決まってる。

力押しじゃなくて詰め将棋が得意な冒険者向けのダンジョンだと分かり。

一日でおおよその調査が完了したのだった。