軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

135.MP全消費魔法

ダンジョンスノーが降りしきるニホニウム地下五階。

魔力の雪を受けて進化するレッドスケルトンを狩っていた。

真っ正面の地面から生まれてきたレッドスケルトンに銃口を突きつける。

そいつはすぐには襲ってこなかった、真横に飛んでぐるっと俺の背後に回り込もうとした。

速さに自信のある相手にありがちなスピードでの攪乱戦法、モンスターにしては珍しい動き。

そいつも速かったが、俺は更に速かった。

肩と銃口がまるでコンパスのように90度回転しつつトリガーを引く。

ただの通常弾、放った弾丸は先回りして、レッドスケルトンがそれに突っ込んで行った形になった。

速いだけでタフさはあがってない赤い骨、通常弾の一発でやられてMPの種をドロップした。

その調子で地下五階を周回していった。

リペティションの魔法があるが、こういう特に動きが必要なダンジョンはなるべく使わないようにしている。

ステータスだけじゃない、動きも常に鍛えて、維持するようにしている。

一回りして、MPの種が必要数にたまったので一旦外に出る。

ダンジョンの外、荒廃したニホニウムにつけられた唯一のナウボード。

それを操作して、ステータスを確認。

―――1/2―――

レベル:1/1

HP SS

MP SS

力 SS

体力 SS

知性 C

精神 F

速さ SS

器用 F

運 F

―――――――――

MPもちゃんとSSになって、着実に埋まっていったステータス欄はいよいよSSになったのだった。

シクロの街、なじみの魔法道具屋。

中に入ると、店主のアイザックは営業スマイルを浮かべつつ揉み手で俺に近づいてきた。

「ようこそサトウ様。本日は何をお探しですか?」

「魔法の実がほしい」

「またですか。魔法の実は複数食べると副作用が……」

「分かってる、それは大丈夫だ」

親切心でいってきたんだろうが、それは問題ない。

そもそも魔法の実というのは、食べればランダムで一つ魔法を覚えられるアイテムだ。

一つ食べると「レベルがこれ以上上がらなくなる」ようになって、二つ目以降はさらに「現在のレベルが1つ下がる」というデメリットがつく。

そのためレベルカンストした人間が生涯一つだけ食べて魔法を増やす、というのが一般的だ。

覚える魔法はランダムだから、今後上がらずかつレベルが下がるデメリットをおってまで食べるのはリスクが大きすぎる。

だから顔なじみの店主、アイザックはそう忠告してきたんだが……俺のレベルはそもそも1だ。

最初から上がりもしないし、下がりようもないレベルだからだ。

おそらく世界で俺だけ、何も気にしないで魔法の実をパクパク食べる事ができる。

「そこまでおっしゃられるのでしたら……それと近頃産出量が減っておりまして、値が一つ500万ピロと張りますが……」

「供給が少ないのならしょうがない」

それが市場経済だからな。

日常用品ならともかく、こういう需要が少ない高級品はもろに産出量に値段が反映される。値段が上がるのは仕方ない。

一つ500万ピロならまだ許容範囲内だ。

500万といえば高級車のいいものが買える値段だが、俺の日当くらいでもある。

というか……この場合例え5000万でもどうにか金をつくって買うだろう。

なぜなら、さっきからチラチラと見えているのだ。

店のカウンターの上にいつか見た着物姿の女の姿が。

人形サイズで半透明のその女は鏡と勾玉――ケルベロスが掘り当ててニホニウムに持ち込んだ勾玉を持って、俺に何度も頭を下げている。

そいつがここにいると言うことは――。

「今ある魔法の実を見せてくれ」

「かしこまりました、お待ちください」

アイザックは一旦店の中に引っ込んで、順番に三つの魔法の実を持ってカウンターの上に並べた。

「本店にある魔法の実全てです」

どれにする? って聞いて来るアイザック。

その間、女が動いた。

俺にしか見えていない女は鏡と勾玉を持って、真ん中の魔法の実の前に止まった。

ニコニコ顔で、「これだよ」とジェスチャーする。

「これをもらう」

「ありがとうございます」

リペティションを覚えた時と同じ、俺は女が示した魔法の実を現金一括払いで手に入れた。

屋敷の地下室、戻ってきた俺はエミリー、ケルベロスと一緒にここにやってきた。

「何をするんですかご主人様」

「魔法の実の下処理だ」

「ぼくに手伝える事はある?」

「そこでみてるだけでいい」

俺はそう言って、魔法の実を地下室の一番奥において、それからエミリーとケルベロスのところに戻ってきた。

そのまま、ハグレモノに孵るのを待つ。

「地下室があってよかったです、ここなら誰にも見られる心配はないです」

「野外でやってたときは気を配ってたし、孵った直後速攻で倒しに行かないとどこに行くのかわからないからな」

「ここなら大丈夫なのです」

笑顔で話すエミリー。

長い付き合いだからハグレモノにする時の注意事項がよく分かっている。

俺がハグレモノからドロップさせられる事は仲間内以外では秘密で隠す必要がある。

それを野外でハグレモノを孵した場合、距離を取るから、孵ったあとすぐに攻撃をしかけないと他にターゲットを見つけてふらふらとどこかへ行きかねない。

それが全て、この地下室が解決してくれた。

私有地の地下室の中、魔法の実がハグレモノに孵った。

メタリックカラーをした俺そっくりなモンスターだ。

そいつはまっすぐ俺に向かってきた。

地下室の端っこと端っこにいる俺とモンスター。一本道でこっちに来るしかないのだ。

「わわ、ご主人様そっくり。ど、どうしますかご主人様」

「大丈夫だ――リペティション」

ハグレモノに魔法を使って一撃で倒した。

洞窟内とは違って、地下室で激戦をやらかすと屋敷を壊す恐れがある。

ここでハグレモノを孵す場合はリペティションで速攻倒すようにしている。

ハグレモノが倒れ、魔法の実がドロップされた。

最初の魔法の実は皮に☆の紋様が一つ、新しくドロップされた魔法の実は☆が二つある。

それを取って、前と同じように食べた。

「ふむ」

「覚えたですか?」

「ああ、一つはヒール。回復魔法だな」

「ヨーダさんにはもう回復弾があるのです」

「回数無制限の上にMPも回復するからな」

俺は銃を取り出して、無限回復弾を注射するかのように自分に連続で撃った。

リペティションとヒールで使ったMPの回復だ。

これから使うもう一つの魔法、本命の魔法はMPを大量に使うからだ。

「エミリー、悪いけどポータブルナウボートを3つもって来てくれるか」

「はいです――」

「ぼくが取ってきます!」

ケルベロスは尻尾をゆらして地下室から飛び出していった。すぐに言われた通りポータブルナウボードを咥えて戻ってきた。

「はい、どうぞご主人様」

「よくやった」

「えへへ……」

頭を撫でて、あごの下も撫でてほめてやる。ケルベロスは嬉しそうに眼を細めた。

「そのまままず一個つかって見ろ」

「わかりました」

ケルベロスはポータブルナウボートを使った。

―――1/2―――

レベル:50/50

HP B

MP F

力 D

体力 C

知性 F

精神 F

速さ B

器用 F

運 F

―――――――――

「使いました」

「今度は俺が魔法を使う――クイックシルバー」

魔法をケルベロスに向かって使った瞬間、めまいがちょっとして脱力感を覚えた。

「ヨーダさん? 大丈夫なのです?」

「大丈夫だ、全魔力を消費しただけだ」

「そんなにすごい魔法なのです?」

「すごいといえばすごいかもな。ケルベロス、もう一回ポータブルナウボート使ってみろ」

「はい!」

素直に、言われた通りステータスを再表示するケルベロス。すると。

―――1/2―――

レベル:50/50

HP B

MP F

力 D

体力 C

知性 F

精神 F

速さ B

器用 F

運 E (+1)

―――――――――

「あれ? 一つ上がっています」

「運がFからEになったです」

「それがこの魔法の力だ。俺の全MPと引き換えに、一人の能力をランダム一つ、丸一日あげる魔法だ」

「丸一日ですか、それはすごいですね」

「でもランダムは不便なのです、全MP使ってランダムは割りに合わないようにおもうです」

「そうでもない」

俺は銃を使って自分を撃ちまくった。

クイックシルバーをうつ直前と同じ、無限回復弾を自分に撃ちまくった。

回復弾はMP回復の効果もある、そうして最大値まで回復したMPでもう一度クイックシルバーを使った。

「こんな風に使えばいい」

「なるほどなのです」

「そして……究極的には」

ここから先はちょっとした作業だ。

無限に使える回復弾でMPを回復、満タンになったらクイックシルバー、その後また回復弾でMPを回復――。

それを繰り返して、約二十回。

―――1/2―――

レベル:50/50

HP A (+1)

MP E (+1)

力 C (+1)

体力 B (+1)

知性 E (+1)

精神 E (+1)

速さ A (+1)

器用 E (+1)

運 E (+1)

―――――――――

「かぶるのがあるから回数は必要だけど……まあこんなもんだ」

ケルベロスの全能力が一段階上がっていた。

「すごい、すごいですご主人様!」

「こういう使い方が出来るのはヨーダさんだけなのです」

ケルベロスもエミリーも、ものすごく感動&感心した。

全MPを消費するクイックシルバー、そして無限回復弾。

実質ノーコストで、仲間の能力が一段階上がる魔法を覚えたのだった。