軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

112.大台

テルルダンジョン、地下一階。

現われたスライムに手をかざした。

銃ではなく、手を。

「リペティション」

新しく覚えた魔法、一度倒した事のあるモンスターを強制的に倒す魔法。

スライムが消えて、もやしがドロップした。

それを拾って魔法カートに入れる。

今までで一番楽だった。銃はもはやスライム程度では外すことはなくなったけど、狙う時はやっぱりそれなりに集中しなきゃいけない。

それに引き換えリペティションの魔法にそれは必要ない、かける相手を念じるだけだ。

それに――。

「MP消費は少ないな」

昨日はこれを一回だけ撃った、マーガレットを助ける為に、ニホニウムのダンジョンマスターに向かって撃った。

その時はMPを全部使い果たした様な脱力感に見舞われた。たった一発だけで。

でも今日は大丈夫だった、スライムに使ってもそうはならなかった。

もう一体スライムが現われた、同じようにリペティションを使った。

スライムは瞬殺され、もやしがドロップされた。

やっぱりMPを消費したという感覚はない。

リペティション、一度倒した事のあるモンスターを即死させる魔法、そして消費MPはモンスターの強さに依存する。

スライム程度じゃほとんど消費されないようだ。

「ある意味……いや違うな。普通にこの世界最強の魔法だ」

一度倒した事のあるモンスターを即死させる魔法、ゲームじゃ便利程度の魔法だろう、しかしこの世界では最強だと思う。

全てのものがモンスターからドロップされるこの世界で、ダンジョン周回は「生産」だ。

生産とはくり返しする事で、モンスターを安定して周回する能力が何よりも重宝される。

魔法を使うだけで、倒した事のあるモンスターが確定で死ぬのは最強といっても過言ではない。

「問題は……最強のこれが何回使えるかだ」

スライム相手で消費は少ないとはいえゼロではない、体感だが確かにちょこっとMPが消費された感覚がある。

それが何回使えるのか……試そう。

最弱のスライム相手にリペティションを使いまくった。

魔法を使って倒して、もやしをドロップさせて魔法カートにいれて。カートが満杯になったらスイッチを押してドロップをまとめて家に送る。

それを繰り返した。

一心不乱でくり返し続けた。

「……ふう」

やがてMPが切れる、会敵即殺を繰り返していると、普段の半分の時間で――午後の周回の3時頃でMPが切れた。

MPがSとはいえ、さすがに三時間近くノンストップで魔法を使ってれば切れるか。

さて、成果は?

家に戻ってくる。

テルルに入る日でこんなに日が高い時間帯に戻ってくるのは初めてだ。

「ただいま」

「お帰りなさいリョータさん」

三階建の一軒家、一階の開けた部分。

今やすっかり店舗のようになっているそこはエルザだけがいた。

買い取り屋・燕の恩返しから派遣されている彼女は笑顔で俺を出迎えた。

「どうしたんですか、今日は早いですね」

「今日の稼ぎを聞こうと思って」

「あっ、やっぱり」

「やっぱりって?」

にやりとわらうエルザに首をかしげて聞き返した。

「リョータさん、何か新しい事をはじめましたね」

「わかるか?」

「わかりますよ。普段通りに周回してる送り方と、普段と違う事をやってる時の送り方って違いますもん」

「なるほど」

第三者でも、見てると意外とわかるものなのかもな。

「じゃあ、はい通帳」

「ちょっと待ってくださいね」

エルザは通帳を受け取って、俺の今日の稼ぎを記帳する。

待ってる間はドキドキして、わくわくした。

しばらくして記帳を終えたエルザが、ニコニコとして通帳を俺に手渡した。

「どうぞ」

「どれどれ……300万ピロ!?」

通帳に記された数字は端数を切り捨てたら三百万という額だった。

この額は確か……。

「先日の最高記録とほぼ同じですね」

マーガレットにいいところを見せたくて、張り切って限界に挑戦した時と同じだ。

張り切って限界突破した時と同じ額、しかも今回使った時間は半分だ。

「すごいですリョータさん、自己ベストを半分くらいの時間でやってしまうなんて、実質自己ベですよ」

「新しい魔法のおかげだよ」

「覚えたんですか? 新しい魔法」

「魔法の実でな」

「そうなんだ……すごい」

エルザの尊敬の眼差しを受けつつ、俺は通帳を眺めた。

昨日出て行った金、今日はいってきた金。

新しい魔法の能力、そして普段の稼ぎまで残された時間。

「もう一回ダンジョン行ってくる」

「まだいくんですか?」

「ああ」

頷き、通帳を開いてエルザに見せた。

「後二百万弱で、合計一千万の大台乗るからな」

「ああっ! 間に合っちゃいますね! 今日のペースなら」

ハッとするエルザ、そんな彼女ににっこりと微笑みかけて。

「そういうことだ。行ってくる」

「頑張ってください! 私もがんばります!」

小さくガッツポーズして意気込むエルザに励まされて、俺は、再びテルルダンジョンに向かった。

MPは使い果たしたが、問題ない。

銃に回復弾を込めて注射器の如く自分に撃ちまくってMPを全回復させた。

MPがSで満タンの状態で再びダンジョンに入って周回した結果。

この日、元の世界でも一度もみることはなかった。

一千万の口座残高が出来たのだった。