軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

110.自己新記録

無限雷弾を また(、、) 外してしまった。

ニホニウムダンジョン、地下五階。

ダンジョンスノーが舞う中、レッドスケルトンへの一撃がまたしても外れ、雷弾はダンジョンの壁に炸裂した。

「くっ……50%切ってしまった……」

今朝は朝から調子が悪かった。レッドスケルトン相手に集計している命中率も初っぱなから外しての0%スタートで、今も50%を割ったばかりだ。

理由は分かりきっている……今もドキドキしたり、モンモンしたりしている。

背後に回り込まれたレッドスケルトンに骨でガツンと殴られた。

俺の後頭部にクリーンヒットしたそいつは赤い骨をカタカタならしながら笑った。

「な……めるなぁ!」

ぐっと地面を靴底で掴んで、全身の筋肉をぐぐぐと力を溜めて、振り向きざまの裏拳。

レッドスケルトンは超スピードで離脱するが、構わず踏み込んで裏拳をぶち当てる。

頭蓋骨が吹っ飛び、ダンジョンの壁に当たる前に粉々になった。

ドロップした種でMPを1あげて、ふぅ、と肺にたまった空気をまとめて吐き出す。

降りしきるダンジョンスノーの中、頭をわっしゃわっしゃとかきむしる。

不調なのはもちろんマーガレットが原因だ。

昨日不意打ちでされたキスが、未だに俺を悶々とさせている。

こうして絶不調の中、普段よりだいぶ長い時間をかけて――最終的には命中率が40%を割って。

昼休みまでずれ込む延長戦になって、結局MPを次のランクに上げる事ができなくて、俺はすごすごとダンジョンから退散したのだった。

午後、一人でテルルにやってきた俺だが、ダンジョンの入り口でマーガレットと遭遇した。

「リョータ!」

俺を見つけて、嬉しそうに駆け寄ってくるマーガレット。

ドキドキが倍増して、思わず「うっ」と呻いてしまった。

「待ってましたわ」

「待ってた?」

「はい、リョータの家に行ったのですけれど、リョータの 家人(かじん) が午後はテルルにいらっしゃると教えて下さいました」

「ああ……うん」

頷きつつ、それとなく目をそらした。

耳の付け根が熱くて、マーガレットの顔をまともに見てられない。

彼女の顔を見ると昨日のキスを思い出しそうだからだ。

「そ、それより何か用なのか?」

「はい、リョータの狩りを見学させて頂こうとおもったんですわ」

「俺の狩り?」

「はい。シクロに数多いる冒険者の中でも、今一番勢いのあるリョータの戦いっぷりを見学させて頂こうかと。わたくしも少しは立ち回りを勉強しなければと思ったのです」

「立ち回りか」

「私が動けるようになる分、ラトたちも楽になるはずですわ」

「まあ、バリエーションは増えるだろうな」

一口にフォローしてトドメを刺させるだけとは言っても、トドメを刺す人間の力量次第でやることが変わる。

攻撃力が高ければ削る分量を減らせるし、命中率が高ければいちいち拘束してる必要もない。

マーガレットが強くなればなるほどやれる事が増えるのは確かだ。

「……向上心がすごいな」

「はい? いまなんて?」

「なんでもない。分かった、ついて来い」

「はい!!」

マーガレットは満面の笑顔を浮かべて、俺と一緒にダンジョンに入った。

テルルダンジョン、地下一階。

「感慨深いな」

「え?」

「いや、俺もここにやってきた時はマーガレットとほぼ同じステータスだったんだよ。ドロップは全部高いけど、能力は全部Fだったんだ」

「そうでしたの?」

「ああ」

「でしたら、わたくしもリョータのようになれるかしら」

何をもって俺のように……って一瞬思ったが、そこはこだわる所じゃない。

「ああ、きっとな」

そう答えた事でマーガレットは未来への期待に瞳を輝かせる。

それだけで充分だと思った。

そうこうしている内に、俺はいつもの狩りをはじめる。

魔法カートを押して、ダンジョン内を進んで行く。

スライムが現われて、飛んで来た。

そのスライムを手のひらで受け止めて、魔法カートの真上で撃ち抜く。

通常弾がスライムを貫通・瞬殺する。ドロップしたもやしがそのまま魔法カートにはいった。

「すごいですわ、今のを一撃で」

「それと魔法カートの上で倒しただろ、あれでそのままドロップしたのがカートにはいって拾わずにすむんだ。スライムは弱くて余裕があるから、こうやって効率を上げられる」

「なるほど! 勉強になりますの!」

それと無限雷弾じゃなくて通常弾を使ったのも効率のためだ。

最近わかるようになってきたけど、雷弾だと電気でモンスターを焼き尽くしてドロップするまで時間がかかる事が多い。

通常弾だと致命傷になったら貫通した次の瞬間にドロップするが、雷弾だと黒焦げに焼き尽くさない限りドロップしない。

その分の――一体につき数秒の差だが、雷弾の方がタイムロスになる場合がある。

無限で使い勝手いいし、威力も高い。

だけど効率をとことんまで追求してタイムアタックのような事をする場合向かないのだ、雷弾は。

マーガレットを連れて、スライムをひたすら倒して行く。

倒して、もやしを魔法カートに入れて、また次を探す。

ふと、俺は足を止めた。

「どうしたんですの?」

「もう少しのはずだ」

首をひねるマーガレット。

俺は銃を構えたまま少し待った。

待つ事30秒、そこにスライムが新しく生まれた。

瞬時に倒して、魔法カートにもやしをいれる。

「い、今のは?」

「モンスターの湧きポイントはある程度決まってるんだ。このポイントのスライムは5分ごとに一匹湧いてくる。ぐるっと回ってここもそろそろだって思ったんだ」

「そんな事まで覚えてますの! すごいですわ!」

「慣れだ、ただの」

「他にも何かありませんの?」

また感心するマーガレット。

瞳を輝かせて、子供のようにわくわく顔で俺に聞く。

そういう顔には応えたく。

俺は覚えていること、体感で身につけた事を全部彼女に話した。

実践つきでテルルダンジョンの効率のいい狩り方をやって見せた。

その度にマーガレットは大いに興奮して、すごいすごいと言ってくれた。

その表情は綺麗で、可愛くて。その二つがハイレベルで同居している表情だった。

それをもっと見たくて、あれこれやって見せた。

「すごかったですわ」

夕方、テルルダンジョンを出て、マーガレットと一緒に街を歩く。

一階から七階まで、順番でモンスターの倒し方、効率的なやり方とダンジョンの攻略法を実演した。

マーガレットは終始大喜びで、俺はやった甲斐があったと思った。

「さすがリョータ、わたくしの王子様ですわ」

「王っ――」

マーガレットのストレートな物言いに、俺はドキドキを思い出してしまった。

彼女にいいところを見せたくてモンスターを狩っていた頃はすっかり忘れていたドキドキが今更ぶり返してきた。

桜色の唇が目に入った。

やばい、どうしよう。

一度意識してしまうと、本人が目の前にいる分更にドキドキしてしまった。

「あっ、いたいた。おーいリョータ」

「え?」

呼ばれて振り向くと、アリスの姿が見えた。

彼女は手を振りながら、三体のSDモンスターを肩に乗せたまま俺の方に駆け寄ってくる。

「どうした」

ある意味救世主の出現だ。

俺は少し収まったドキドキを流れでごまかしつつ、やってきたアリスと向き合った。

「速報、多分知りたがってるから先に教えてきてってエルザに頼まれたの」

「速報?」

「うん!」

アリスは大きく頷き、いつも通りの無邪気な笑顔でいった。

「おめでとう、今日の稼ぎ300万こえたよ」

「……おお?」

「リョータの自己新だね」

「そうか、自己ベストなのか」

「すごいよね、一日に300万ピロも。なにがあったの?」

「え?」

どきっとした、今までとちょっと違うドキッ、だ。

アリスからマーガレットの方を向く、彼女はキョトンしている。

分かってないのか、よかった。

彼女に――本人に分かってしまわれると、恥ずかしさでもだえ死にしかねないと思った。

午前中は普段の半分以下の効率なのに、午後はマーガレットにいいところを見せたくて新記録をたたき出せたのは。

「なんだか分かりませんけど、おめでとうございますわ」

「おめでとう、リョータってやっぱすごいよね」

本人にそう言ってもらえる事も含めて、ちょっとだけ恥ずかしい事だと思ったのだった。