軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

105.増える税金と減る税金

ニホニウムダンジョン、地下五階。

ダンジョンスノーが降りしきる中で、俺は通常の三倍早いレッドスケルトンを狩っていた。

レッドスケルトンの速度は通常のスケルトンの三倍。銃弾の命中率がはっきりと悪い。

他のモンスターに撃ってほぼ100%当るものだが、こいつだと90%あるかないかくらいだ。

はっきりと、体感できるくらい外れる事が多い。

「くっ!」

ただ速いだけじゃない、レッドスケルトンは倒しそびれると更に加速する特性がある。

初撃を外すと更に手がつけられなくなる、二発目以降の命中率は体感で70%くらいまで下がってくる。

三発に一発は外れる計算だ。

とは言え、70%でもまだまだ高い。

それに使ってるのは無限雷弾だから、いくら外しても問題はない――

「いかんいかん、それじゃ慢心だな」

乱射していればそのうち当たって倒せる――と思ったのを慌てて考え方を改めた。

HPや体力がSになってほとんどの攻撃が効かなくなった時と同じ、Sとか無限とか、新しくて強力な力を手に入れるとついつい惰性で動くようになって、慢心してしまう。

それはよくないと、俺は気を引き締めた。

心の中でカウントした、とりあえず体感の90%、10撃って9当たるからはじめた。

ニホニウム特有の壁から奇襲を受ける、レッドスケルトンが壁からいきなり現われて襲撃してくる。

それを落ち着いて避けて、一発で撃ち抜く。

これで11分の10、90.9%だ。約1%上昇だ。

種を拾ってMPを1あげて、次のターゲットを探す。

今度は天井からの奇襲になった、これも落ち着いて狙って、一撃で撃ち抜く。

12分の11、91.6%になった。

種を拾おうとした所、そこを新しいレッドスケルトンに狙われる。

攻撃を避けてあわてて反撃――したところ銃弾が外れた。

銃弾は13分の11、命中率は一気に84.6%まで下がってしまった。

「むぅ……ふぅ」

命中率が一気に下がったが、ここで慌てたら更に下がって負のスパイラルだ。

俺は立ち止まって、深呼吸して落ちつかせて、更に集中する。

出てきたのを倒す、ギリギリまで狙いをつけて撃ち倒す。

命中率を常に計算、それをあげる事を心がけた。

不思議な事に、数字を意識してると集中力がはっきりとあがった。

それだけじゃない、やる気も普段より出た。

集中力と、やる気。

高いステータスにその二つが乗っかった俺は、ニホニウム地下五階で無双した。

昼になった頃には、MPがCからBに上がって、命中率も98%を越えた。

ニホニウムを出て、一旦家に戻ってきた。

「お疲れ様です」

「お帰りなさいなのです」

一階のガレージにエルザとエミリーがいた。

二人はテーブルを挟んで座って、紅茶を飲んでいた。

テーブルの上にはサンドイッチや一口サイズのスイーツがのっかってる。

時刻は昼だが、まるでティータイムの様な空気とメニューだ。

「リョータさんもお一つどうですか?」

「お茶を淹れてくるです」

エミリーはそう言って、バタバタと二階に駆け上っていった。

残った俺はエルザの横に立って、腰を屈んでサンドイッチを一つつまむ。

イチゴジャムのサンドイッチだ。ほどよく甘くて、過集中で消耗した体にいい感じでエネルギーを補給してくれた。

「ど、どうですか?」

「うん、なにが?」

「その……サンドイッチの味は」

「すごく美味しいよ、今日は午前中だけでだいぶ疲れたからちょうどよかった」

「……やた」

エルザは何故か胸もとで控えめにガッツポーズをした。

「なんでガッツポーズしてるんだ?」

「え? いえそれは――」

「そのサンドイッチはエルザさんの手作りなのです」

エミリーが代わりに答えた。俺の分の紅茶を持って二階から降りてくる彼女はいつもよりニコニコしている。

「エミリーが作ったんじゃないんだこれ」

「はいです、私とエルザさんが一緒に作ったのです。ヨーダさんが今食べてるのは100%エルザさんが作ったものなのです」

「へえ」

イチゴジャムのサンドイッチをもう一つとって、口の中に放り込む。

「うん、やっぱりうまい。エミリーが作った物だって普通に納得したけど、エルザもすごく料理がうまいんだな」

「あ、ありがとう」

エルザは頬を染めてうつむいた。

「あの……また作ってもいい……ですか」

「作ってくれるのか? それは嬉しいな」

「作ります! いっぱい、美味しいものを作ってきます」

意気込むエルザ。

そのやる気で俄然楽しみになった、今度何を作ってくるのかと。

エミリーが淹れてくれた紅茶を飲んで、更にサンドイッチをつまんでエネルギーを補給する。

「そうだ、念の為記帳をしてくれないか」

といって、通帳をエルザに差し出す。

「記帳ですか?」

「ああ、午後の狩りは数字を把握した上でやってみたいんだ」

午前中は命中率を計算しながら狩りをした。

一体倒すごとに上がる命中率はその度に小さな達成感があって気持ちがよかった。

気持ちよさは集中力に反映されて、それを更にあげようと頑張って、結果あれから1発も外さないで命中率を98%まであげた。

それと同じ事を午後でもやってみたかった。

数字を把握して、小刻みな達成感でどうなるのかを試したかった。

昨日までのはドカンとくる大きい達成感だ、終わった後に記帳して、一気に増えた数字をみて気持ちがよかった。

よかったが、終わり間際にちょっとだれていたのも事実だ。

小さい達成感を積み重ねれば途中ずっと集中力を維持して、結果的にもっと稼げるんじゃないか、って考えた。

「わかりました、ちょっと待ってくださいね」

エルザは俺の通帳を受け取って記帳した。

「お待たせしました。残高増えてますね」

「増えた? 減ったんじゃなくて」

「増えてます、五十万くらい」

「へ?」

一瞬「なんで?」って思った。

昨日の夜から稼いでいないんだ。

あえて記帳したのは、思いつく限りのあっちこっちに届けをだしたから、今朝なにかが引き落とされた可能性があるからだった。

減る事はあっても増える事はない、そのはずなんだが……。

「本当だ50万近く増えてる、名目は……インドール?」

「街の名前なのです」

「……ああ、税金」

ハッとした。

たしかインドールは税金の一部を俺にくれるって話になったんだっけ。

それが早速入って来たってことか。

「税金ですか?」

首をかしげるエルザ。

俺は彼女にインドールの一件と結末までを説明した。

「なるほど、それで税金なんですか。でもすごいですね、これ、不労所得じゃないですか」

「言われてみるとそうだな」

不労所得か、いい響きだな。

インドールのダンジョンを攻略して、更にダンジョンドロップを倍にしたのは俺だから、正当な報酬なんだが、それでも不労所得なのは間違いない。

この先黙っててもインドールから金が入り続ける。

宝くじあてて利子生活とか、マンションを建てて家賃収入とか、株をいっぱいかって優待券生活とか。

そういう、夢の不労所得生活。

それがはっきりと数字になって表れたのが、ちょっと心躍る。

「ほええ……こんな風にお金が入ってくるですか。さすがヨーダさん、税金暮らしで左うちわなのです」

「ダンジョンには行くけどな、これが入り続けてても」

「もっとすごいです!」

「――あっ」

急にエルザがなにかを思い出したかのように手を叩く。

「どうしたんだ」

「また入金がありました……わわ、これはすごい」

「一体どうしたんだ?」

「還付です。リョータさん今年の買い取り金額が3000万を超えたので、税金がちょっとだけ下がります。昨日から適用されるので、差分が戻ってきたんです」

「下がる? 上がるんじゃないのか?」

入金があるって事でエルザに通帳を渡し、彼女はさっと慣れた手つきで記帳してくれた。

入金自体は二万ピロと、大した額じゃなかった。

「はい、下がります。リョータさんが前にいた街は上がるんですか?」

「街って言うか……まあな」

累進税率で、ある程度稼いだら逆に税金上がって損するって事がよくある。

学生時代がまさにそうだった。

バイトで年間100万まで税金かからないけど、100万円越えたら逆に税金持ってかれて損をする。

だから適当に調整して稼がないようにしてたっけ。

「シクロは買い取りが上がっていくと税金が下がるんです。そうした方が冒険者たち張り切ってダンジョン潜りますから」

「なるほど」

そっちの方が人情的に分かる話だ。副次的な効果がどうなるのかは知らないけど。

通帳に記入された2万ピロ、額としてはかなり小さい物だが。

今までコツコツ積み上げてきた結果の二万バックは、俺に大きい達成感を与えてくれたのだった。