軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

104.使っても増える

朝、日課のニホニウムに向かおうとしたら、家を出た瞬間急に地面に穴があいて、そこからイヴが出てきた。

「どわっ! び、びっくりした……何してるんだイヴ」

「普通のうさぎは穴を掘る、これ常識」

「そんな常識知らん」

「ずるいうさぎは穴をみっつ掘る、これ豆知識」

「そんな雑学使う機会は一生こないと思う」

ツッコミ倒していると、イヴは完全に穴から這い出て、その穴を綺麗に埋めた。

イヴ・カルスリーダー。

世にも珍しい、自前のうさ耳と尻尾を持ち、バニースーツを愛着している少女。

可愛い、と色っぽい。

二つの要素がハイレベルで同居している少女だが、そんな外見とは裏腹にかなりのパワーファイターで実力派の冒険者だ。

不思議ちゃんな要素も相まって、今みたいに急に現われると何を考えているのか今ひとつ分からない。

分からないから、直接本人に聞くことにした。

「どうしたんだこんなところに」

「低レベル、ポーション」

「うん?」

「ポーションなくなった」

「……ああ」

ポン、と手を叩く。

ポーションというのは、俺だけがドロップさせられる特殊アイテムの事だ。

効果はアイテムドロップ率を一時的に上昇させる優れものだ。

それを大量に生産して、仲間たちに使わせていたのだが。

「全部使い切ったのか」

「うん」

「わかったちょっと待って」

家の中にUターンして、自分の部屋に入ってアイテムを探す。

ポーションは何種類かあって、シクロで威力を発揮する植物ドロップアップのを探した。

ポーションは大量にある、が。

「ありゃ……もうない」

「ないの?」

部屋までついてきたイヴが言った。

トーンはいつもとそんなに変わらないが、心なしかちょっと落ち込んでいるように聞こえる。

「インドールにいってる間作ってなかったからな。ちょっと待って、今作るから」

「わかった」

俺は通帳を持って部屋を出た。

ドロップアップのポーション、それは「お金」からドロップされる物だ。

だから通帳を持って、金を下ろしてそれをハグレモノにして、ポーションにかえてイヴに渡す。

ポーションにする事自体失敗はしないし、今までも結構やってきたものだが。

「99万……」

昨日120万に届いた口座残高が、思いがけない支出で桁が減ってしまった事にちょっとダメージを受けた俺だった。

イヴと別れて、午前中はニホニウムで止まっていたMPをDからCにあげて、午後はテルルにやってきた。

預金の桁が減ってしまったのならまた稼げばいい。

そう思って頑張って稼ごうとした。

ちなみにあの後更にポーションを増産した。

仲間たちの稼ぎをあげる役割もあるポーションだが、イヴにとって「美味しいニンジン」をドロップさせる為の必需品だ。

彼女がニンジンをガジガジしている至福の表情を俺は知ってる、だから金はかかろうが残高の桁が減ろうがそれを絶やす訳にはいかない。

そのためのポーションを作る為に、預金残高がゴリゴリ減った。

減ったら――稼ぐ。

テルルのダンジョン、地下一階。

日殖がおわって通常運転のダンジョンで、張り切って無双した。

スライムを出会ったそばから撃ち倒してもやしをガンガンドロップさせる。

半周しただけで魔法カートが満杯になった、スイッチを押してドロップ品を家に送った。

効率が高い理由は二つある。

一つはもちろん日殖が終わってモンスターの数が戻った事だが、もう一つは冒険者の数が少ないからだ。

魔力嵐とかダンジョンマスターの時と一緒だ。

この世界、それかこの街だけなのか。

こういうダンジョンに入っても美味しくない時、冒険者は憂さ晴らしとばかりに街でがんがん金を使う。

そして冒険者という人種だからか、多くの人間は酒場で飲んだり食ったりする。

するとどうなるかというと――。

魔力嵐が去って、ダンジョンマスターが討伐されて、日殖が終わって。

ダンジョンの稼ぎが元に戻ったのに、冒険者の多くは二日酔いか食い過ぎでダウンして、その日は前の日とそんなに変わらないくらい、ダンジョンがガラガラなのだ。

中には二日酔いだから迎え酒だ! って負のスパイラルにずるずる引き込まれるだめっこ冒険者もいるけど、それはともかく。

初めての日殖翌日だが、魔力嵐の時とかと同じように冒険者が少なくて、張り切った俺は人の少ないダンジョンの中で暴れ回る事ができた。

地下一階を更に半周するとまたまた魔法カートが一杯になって、転送機能で家に送った。

これで四万ピロが二回、合計八万だ。

地下二階に入る、イヴがドロップしたニンジンをガジガジしていた。

小動物――リスを彷彿とさせるその姿は結構愛らしい。

……いや、そもそもウサギは小動物か。

「おう、やってるな」

「低レベル……ニンジンあげないよ?」

「とらないから」

むしろ――とは言わずにちょうど湧いた眠りスライムを無限雷弾で瞬殺。

ドロップしたSランクのリョータニンジンをイヴに差し出した。

「これも食うか?」

「低レベル大好き、愛してる、どうにでもして」

「現金だな」

クスッと笑って、ニンジンをイヴに渡した後、やっぱり人の少ない地下二階を一回りした。

イヴが乱獲した後だからか、3分の2周くらいで魔法カートが満杯になる。

それも送って、合計12万。

二階はやり過ぎるとイブの取り分が減るから、三階に降りた。

Gの様なコクロスライムを倒して、カボチャにして、一個ずつ送る。

こうして俺は休まずに狩り続けた。

せっかくだからまた口座残高を7桁の大台に乗っけようと、全力でダンジョンを周回し続けたのだった。

「ありがとうございました、では今月から引き落としにさせて頂きますね」

「……ああ、よろしく頼む」

夕方、テルルダンジョンを出てシクロの街に戻ってきた――ところで不動産屋のアントニオにつかまった。

俺がインドールに行ってる間に家賃が滞納していたのを、取り立てに来たのだ。

通帳を持っていたのをみられて、引き落としにしませんかといわれてじゃあするっていった。

引き落としが便利なのは分かってるから、ついつい応じてしまったのだ。

「それにしても取りに来ればよかったのに。エミリーとセレストがいるんだから」

「いえいえ、ダンジョン協会の依頼で出ている事は知ってましたし、それにサトウさんを信用してますから」

「ありがとう」

「では、またなにかありましたら」

「ああ」

頷く俺、頭をさげるアントニオを見送った。

ちょっと出鼻をくじかれた。

ダンジョンを出て、家に戻って出向してるエルザに今日の稼ぎを記帳してもらうはずだったのだが、アントニオにつかまって出費を強いられた。

まあ、仕方ない。

家賃はしっかり払わないとな。

俺は魔法カートを押して家路につく。

家に戻ってくると、一階にまだエルザだけがいた。

エミリーもセレストも戻ってきてなくて、イヴとアリスもいない。

エルザだけだ。

「お帰りなさいリョータさん」

「ただいま。これお願い」

エルザに通帳を渡す、彼女は受け取って開き、俺の今日の稼ぎを記帳する。

「あれ? なんかすごく引かれてますけど」

「結構使ったんだ今日は、ダンジョンにいくための消耗品とか、家賃とかな」

「なるほど、でもすごいですね」

「え?」

「こんなに使ったのに……ほら」

ニコニコするエルザから通帳をもらい、それを見る。

2,006,100

軽く目を疑った。

残高は約二百万ピロ、あんなに使ったのに減ってるところか、今朝の時点にあった100万よりも更に多い、200万に増えていた。

残高が減るかもしれないのでちょっとテンションが下がっていたが、逆に上がった事でテンションはV字回復して、より嬉しくなったのだった。