軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第115話 レオンはちからつきた

「――以上が事の顛末になります」

「うむ」

リーブラから説明を受けて分かった事は、どうやら俺は完全に出遅れたらしい、という事であった。

俺がベネトナシュを倒し、ここに来るまでの間に戦いも、そしてサジタリウスの問題も解決してしまい、後には全て終わった後にノコノコと戻ってきた間抜けな俺だけが取り残された。

うん、まあ……遅れた理由は分かっている。

王都観光とかやったり、魔物同士の戦いを観戦してギャンブルやったりしていたのが原因だ。

多分ベネトナシュとの戦い自体はそんなに長引いてはいない。

俺主観だと結構戦っていた気もするのだが、現実の時間にすればあんなのはほんの一分にも満たない戦いでしかなかっただろう。

俺は内心で冷や汗をダラダラ流しながらも表面上はあくまで冷静を取り繕う。

「其方等、苦労をかけたな。よくぞレオンを取り押さえてくれた」

「HAHAHA、なあに、ルファス様の命令とあらば容易い事ですよ」

「おや、盾としての役割も満足に果たせなかったタンクが何か言っていますね」

「盾なのにあっさりKOされた奴が寝言ほざいてるわあ」

「そもそもレオンを倒したのはアリエスであって、我等はドヤ顔出来るほど活躍しておらんな」

「Why!? 今回はミーだって結構活躍しましたよね!?」

俺の労いに答えたカルキノスだったが、そこにリーブラ、スコルピウス、アイゴケロスの無情の突っ込みが刺さった。

何かカルキノスは完全に弄られ役が定着してるな。

うむ、実に不憫な奴だ。

「しかし……なるほど、レオンを仕留めたのはアリエスか。よくやったな」

俺が褒めながら頭を軽く叩くと、アリエスははわはわ言いながら顔を赤くした。

嫌がっている、というわけではない。顔にはどこか嬉しそうな感情が浮かんでいるし単に恥ずかしいだけだろう。

うむ、愛い愛い。だが男だ。

「ところでレオンは? 戦闘不能にしたといっても奴のタフさは侮れん。

気絶しているうちにさっさと縛るなりしておいた方がいいだろう」

「それなら心配いりませんわあ、ルファス様」

レオンはアリエスによってHP1にされ、タウルスの攻撃によって吹き飛んだという。

ならば今は恐らく森の外で気絶して転がっているのだろうが、目を覚ました時にまた暴れないとも限らない。

そうなる前に行動を封じるべきだというのが俺の考えなのだが、しかしスコルピウスは俺を安心させるように言う。

「妾の毒はまだ続いております。あの裏切り者でしたら、今頃はとっくにHP0でくたばってますわあ。したがって縛る必要などありません」

「…………」

レォォォォン!!?

俺は慌てて飛び出し、森の外で転がっているでかい獅子を発見した。

レオンは白目を剥き、泡を吹いてピクピクと痙攣しており明らかにやばい。

これ、止めるどころかオーバーキルしてるじゃねえか!

「ディーナ!」

「は、はい! 『スター・オブ・アスクレピオス』!」

俺は未だに背に引っ付いていたせいで一緒に来てしまったディーナに指示を飛ばす。

『スター・オブ・アスクレピオス』――水属性天法の最上位に位置する蘇生術だ。

その効果は一定範囲内の味方のHPを回復させ、状態異常を消し、死者の蘇生すらも可能とする。

しかしエクスゲート・オンラインの蘇生には制限時間があり、死亡してすぐに使わないと街へ転送されてしまいデスペナを受ける羽目になる。

勿論この世界での死亡はそのまま死亡で、デスペナ受けて、はい町に転送、なんて優しいものではない。

というかゲームの仕様ならば魔物はHPが0になろうと強制的に戦線離脱させられるだけで死んだりはしないが、この世界では普通に死ぬのだろう。

レオンを囲うように星型の陣が浮かび上がり、中心に五匹の蛇が渦巻いた杖が顕現する。

そして杖が霧散し光の粒子へ変わると、それがレオンの身体へと吸い込まれた。

しばらくするとレオンは白目を剥いているのは相変わらずだが、緩やかな呼吸を始める。

……あ、危ねえ。

普通に考えれば明らかに蘇生時間オーバーだが、そこだけはゲームとの違いに助けられたのだろう。

あるいはレオンの生命力がそれだけ桁外れていたという事か。

「マスター、その裏切り者を生かすのですか? 私にご命令頂ければすぐにでも首を跳ねて御覧にいれますが」

「やめい」

追いついてきたリーブラが片腕を刃に変えて何か物騒な事を口にする。

俺が止めると、リーブラは何か勝手に結論を出したのかなるほど、と呟いた。

「あえて生かし、裏切りの報いは自らの手で与える、と……そういう事なのですね。

分かりました。では私は拷問用の道具を用意するとしましょう」

「何故其方は思考がいちいち物騒なのだ」

「ルファス様、拷問でしたら是非妾に! その裏切り者に生まれてきた事を後悔させてやりますわあ!」

「我も」

「其方等、話が拗れるからしばらく大人しくしてくれんか?」

「!?」

リーブラに追従するように出てきた蠍と山羊の馬鹿コンビを黙らせ、俺はレオンへ指を向ける。

「……『フォトンチェイン』」

俺の背後に浮かび上がった数十の魔法陣から一斉に光の鎖が伸び、レオンを絡め取った。

ディーナが驚いたような顔をしているが無理もない。

何せ今俺が使用したのは天法ではなく魔法……本来ならば天翼族である俺が使う事など出来ないはずの力だ。

ベネトナシュとの戦いで俺は確かに魔法を使い、その時の感覚もまだ残っている。

レベルは徐々に1000に戻りつつあるのだが、現在の俺のレベルはまだ完全には戻っておらず、1300ってとこだ。

じきに1000まで下降するだろうが、今ならまだメイジのクラスレベルが残っている。

ならば、と思い試してみたのだが何の問題もなくあっさり使えてしまった。

「ルファス様……今、魔法を?」

「うむ。ベネトの奴に痛烈に頭を叩かれてな……おかげで大分目が覚めてしまったらしい」

実は魔法の他にもう一つ『思い出した』感覚があるのだが、それはまた今度に試せばいいだろう。

少しばかりあれは強力過ぎる能力だし、それに俺がそれを行うと自動的に十二星までパワーアップしてしまう。

ま、流石にベネトナシュとの戦いの時ほどの馬鹿げた効果は発揮しないだろうがな。

スキル名は……そうだな、『 先を往く者(アルカイド) 』とでも名付けようか。

「レオンはこれでいいだろう。とりあえず、先ずはサジタリウスと話すとしようか」

レオンを森の外に置いたまま、俺達は一度サジタリウスの所へと戻った。

彼がレオンに協力していた理由はもう聞いているし、罰する気などない。

だから話すのはこれからの事だ。

そしてそれは、サジタリウスやケンタウロス達だけでなく、亜人全体にも関わる話である。

「サジタリウス」

「……はっ」

「まず、此度の件は全て不問とする。面を上げよ」

申し訳なさそうに頭を下げていたサジタリウスに顔を上げるように言う。

俺にサジタリウスを罰する気など最初からなく、そもそも今回の件はレオンなんて明らかにやばいのを十二星に入れて挙句の果てに何の対処もせずに消えた二百年前の俺に非がある。

自分の事だから分かるのだが、俺がレオンを捕獲した事に実の所深い意味や考えなど全くない。

単に面白そうだったから……最強の魔物を飼いならすのも一興かと思い、加えてこれだけの力を無駄に消すのは惜しいと考えた。

だから戯れに、味方に引き込んでみる事にした。

……何考えてるんだ、昔の俺は。

「それよりも先の事を考えよう。

これはケンタウロス達だけではなく他の亜人にも関係する事だ。其方等も聞くがいい」

俺がそう言って視線を向けたのは、縛られたまま地面に転がされている亜人達だ。

蜘蛛の蟲人に魚人、ドライアド、ラミア。どうやらこの四人が亜人連合の幹部らしい。

レベルは大体150前後ってとこか。この時代だとなかなか強いが、七曜といいウィルゴといい、300の壁を超える事が出来る奴が驚くほど少ないな。

亜人達は特にこれといって暴れる様子もなく、実に大人しいものだ。

俺や十二星へ向ける視線には恐怖が感じられ、力の差を痛感して大人しくしているのだろう。

無理もない。レオンとアリエス達の戦いを目の前で見てしまったのだ。

そりゃあ戦意を持続しろってのが無理な話だ。

「まず結論から言うとだ。このままだと其方等、主要国家からの集中砲火を浴びて里諸共焼き払われる事になるぞ」

俺の言葉に瀬衣やウィルゴといった面々が驚きを示し、逆に予想が付いていたのだろうガンツやエルフの兄さんは険しい顔をしている。

亜人達も覚悟の上で臨んだのだろうから驚きは見えず、だがその顔には絶望があった。

彼等の指導者であったレオンは倒れた。だが彼等がドラウプニルの守護竜を害した事実が変わるわけでもなく、むしろレオンという後ろ盾がいなくなった今、人類側にとっては攻め込みやすくなっただけだろう。

国に喧嘩を売ったという点で見ればむしろ亜人なんかよりアリエスやスコルピウスの方がやばい事をしているのだが、俺達は基本的に移動していて場所が掴みにくいだろうし、第一国のトップがメグレズやメラク、ミザールだ。俺や十二星の実力は周知の上だろうし、それが固まって移動している所にわざわざ貴重な戦力を無駄に投入する馬鹿でもない。

しかし亜人達の事情など彼等が知る筈もないし、現状の情報だけではただの敵と見なして軍を派遣してくる事も十分にあり得る。

そうなれば人類連合と亜人との戦争になってしまうわけだが……まあ亜人側に勝ち目はないわな。

スヴェルの賢王メグレズに守護神レヴィア、機動王都ブルートガングに量産型リーブラとゴーレム軍団。そしてギャラルホルンのメラク。ドラウプニル守護竜もそろそろ復帰してリベンジに燃えてる頃だろう。

このどれか一つでも出てくれば亜人側は詰む。守護竜だってスコルピウスが弱らせた所を袋叩きにしたに過ぎず、正面からやり合えば亜人総がかりでもよくて相打ちが関の山だろう。

レオンがいれば、それらを敵にしても十分やり合えたのだろうが、そのレオンもベネトナシュにちょっかいをかけていたので結果は変わらないだろう。

ベネトナシュが一人でレオンを抑え、他が亜人を袋叩きにする。それだけで簡単に終わっていたはずだ。

……というかベネトナシュならば広範囲魔法の一発でも撃てば里ごと亜人を滅亡させる事が出来るな。

やっぱ、あいつ一人だけ戦いの次元がおかしいわ。

しかし、元々を辿れば今回の騒動の種を撒いたのは他ならぬ俺だ。

レオンは言うに及ばず、亜人達が守護竜を襲撃したのだってスコルピウスが弱らせてしまったからだ。

そのスコルピウスも俺の配下であり、部下の不始末は要するに俺の責任である。

ならば俺に彼等を見捨てる選択肢などあるはずもなく、せめて彼等に道を示すだけの事はしなければならない。その義務がある。

それを示した上で断るか受け入れるかは彼等の自由だが、な。

「そこでだ。其方等全員、ほとぼりが冷めるまでマファール塔に身を隠すというのはどうだ?

別に余の傘下に加われとは言わん。どうせ今は使っていない塔だ……盗みを働きさえしなければ住居として提供する程度はわけもないし、無駄に高いから全員収容するなどわけもない」

こいつ等全員を隠せる建物となれば、それはブルートガングかマファール塔かのどちらかしかない。

今になって分かった。何故マファール塔があんなに高いのか。

それは俺の趣味もあったのだろうが、何よりも膨れ上がった部下を容れる為だったのだろう。

数多くの魔物を捕獲し、ゴーレムを造り、多種多様な部下を迎え入れた。

その結果、どうしても多くの人数を入れることが出来る施設が必要になり、マファール塔はその都度増設して高度を増した。

その結果が、あの天にも届く塔なのに違いあるまい。

つまり、それを思えば亜人くらい迎え入れるのはわけもない。

盗みは止めろと言ったが、実の所それは不可能に近く、重要な武器や道具は全て最上階にある。

そして以前言ったように、最上階には俺くらい高度まで飛べる奴でないと入る事すら出来ないのだ。

「こ、この里を捨てろというのか……」

ラミアが苦渋の表情でそう呟くが、同時にそれしか選択肢がない事も理解しているらしい。

彼女達にとってこの里は故郷のようなものなのだろう。

それを捨てるという選択には当然抵抗があるだろうが、しかしそうしなければ里と運命を共にする。

だが俺も鬼ではない。対処法くらい考えている。

「案ずるな。それはどうにかする手立てがある」

「その手立てって……」

「うむ、頼むぞディーナ」

「あ、やっぱりですか?」

里ごとディーナにエクスゲートでどっかに移動してもらう事。

それが俺の考えた対処法だ。

どこに飛ばすかはこいつに任せるが、幸いにしてこの世界には人類の目が届かない未開の地が溢れるほどある。

そもそもほとんどが魔神族の支配域だしな。

しかし、そこにエルフの兄さんと猫の獣人が同時に待ったの声をかけた。

俺はそれに、特にこれといって動揺する事もなく視線を向ける。

ぶっちゃけ予想出来た展開ではある。

さて……どう言いくるめたもんかね。あんまり口は回る方じゃないんだが。