軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第116話 ルファスのソーラービーム

「お、お待ちくださいルファス殿! 御身はまさか、その者達を匿うというのですか!?」

「な、ならん! なりませんぞ! その者達の処遇、どうか我等ドラウプニルに任せて頂きたい!」

エルフの兄さんと猫獣人が同時に声をあげたのを聞き、俺は視線をそちらへと向ける。

こいつらの名前は何だったかな……前も聞いた気がしないでもないんだが忘れてしまった。

ええと……そう、確かクルスとカイネコだ。今確認した。

『観察眼』は固有名があるとそれを見る事が出来るので結構便利なスキルである。

もっとも二つ以上名前があり、俺がその両方を知っている場合は俺が認識している方の名で表示されるらしいので完全ではない。

例えばディーナがそれで、彼女にはディーナの他にウェヌスという名もある。

だが彼女に観察眼を使っても表示される名前はディーナのままだ。

これは俺が彼女の名をディーナと認識しているからこそだろう。

ま、今はどうでもいいな。

「ドラウプニルに任せると……それはつまり、戦意のないこの者達を其方等が一方的に処刑するという事か?

物騒だな。皆殺しにせねば気が晴れぬか」

「これは何も我輩の私情だけで言っているわけではありませぬ。

その者達が先に仕掛けた以上、我等はそれを討伐したという事実が必要なのです。

一方的に仕掛けられ、何の報復もせぬのでは我等ドラウプニルは国家として侮られてしまう。

仮にここでその者達を逃がしたとしても、それで終わる話ではない……必ずや軍が派遣され、亜人を探し回る事になるでしょう」

俺は猫の獣人を見下ろし、こちらを見上げる彼の丸い目を見る。

確かに彼の言う事にも一理あると感じていた。

しかしそれ以上に、喉の辺り触ってみたいなとも思っていた。

いや、今が真面目な話というのは分かっているんだがな……何せ見た目が二足歩行の猫だ。

猫好きなら分かると思うが、こう、手が疼く。めっちゃモフりたい。

「なるほど。では私情による私刑を望むわけではないと」

「然り」

「他の者達はどうだ? どうしてもこの亜人を殺したいという者はいるか?」

俺は瀬衣少年や他の皆に向けて問いを発するが、誰もそれに肯定は返さない。

例外としてスコルピウスだけが立ち上がったがお前には聞いてない。座ってろ。

お前何でそんなに殺意高いんだよ。

「ではこの者等を皆殺しにしたという事実があればよいのだな?」

「え? ええ、まあ……」

「ならば問題はない。余もそのくらいは考えている。……ディーナ」

カイネコが言う事は尤もだ。

ほぼ宣戦布告に近い事をされて、それで何もせず許しましたでは国家として示しがつかないし国民も安心出来ないだろう。

地球の国で言うならこれは、イージス艦にミサイルか何かを撃ち込まれて実質宣戦布告されたのに、その国に何もせず許しているようなものだ。

…………日本なら本当に遺憾の意だけで済ませそうだな。

それはまあいい。問題はドラウプニルだけに留まらず、今頃は他の国でも戦争に備えているはず、という事だ。

特にやばいのがミョルニルで、レオン不在と分かった今、一気に仕掛けてくる可能性がある。

ならばやはり、亜人達は死んでしまった事にするのが一番早い。

だから俺はディーナに命じ、まずはこの里全てを転移させる事にした。

「分かりました。エクスゲート!」

ディーナが手を広げ、森ごと何処かへ移動させる。

場所を指定していない理由は簡単で、単純にこの世界の地理には俺より彼女の方が詳しいからだ。

俺は今まで立ち寄った場所しか知らないが、ディーナは色々な場所を知っている。

ならば彼女に一任してしまった方が変な場所に飛ばさずに済むだろう。

空間の裂け目に森が呑み込まれ、後には何が起こったか理解出来ていない各種亜人達だけが取り残された。

彼等からしてみれば普通に過ごしていたはずなのに、いきなり森で怪獣大決戦が始まるわ森が消えるわで散々だろう。

「次は……そこの亜人四人とサジタリウス。すまんが他の亜人達に事情を説明してやってくれ」

指を鳴らして亜人の拘束を解く。

ジャンから非難するような声があがるが、解いた所で問題はない。

悪いがこいつらが何をしたって俺達をどうこう出来るものではないし、ウィルゴや瀬衣といった弱いメンバーを狙おうとしてもその前に俺が割り込める。

俺を出し抜きたければせめてコンマ一秒の世界を自由に動ける程度の芸当が出来ないとな。

普通の時間軸で動いている限り、何をどうしようが俺やベネトナシュ、魔神王といった数段階上の時間軸で生きている者の先手は取れない。

とはいえ、それは杞憂だろう。

亜人達は現状、それしか道がないと悟っているらしく特に文句を言う事もなく他の亜人達へ説明を始めた。

何やら所々に『絶対に逆らうな』だの『あの化物達の戦いを見ただろう』だの『死にたくなければ今は大人しくしているんだ』だの、俺達への恐怖が見え隠れしているのが気になるが、やっぱ十二星同士の怪獣バトルは視覚的ショックが大きすぎたか。

やがて亜人達は納得したのか、ゾロゾロとその場から移動を開始し、後には森の無くなった無人の荒野だけが残された。

後はここに一手間加えれば、亜人滅亡に説得力を持たせることが出来るだろう。

「さて――其方等、下がっていろ」

俺は全員を後ろに下がらせると、片手をゆっくりと虚空へ翳した。

すると掌の上にマナが集い、巨大な火球を生成する。

一見すると火属性にも見えるだろうが俺の属性は日属性だ。

したがってこれは火であって火に在らず。日の力。

白光色に輝く火球は加速度的に大きさを増し、凄まじい熱風を撒き散らす。

そのまま放置すれば発射前の余波に過ぎないこの熱風だけで亜人達など千回全滅して御釣りがくるだろうが、魔法発動時に同時展開した結界に火球を閉じ込める事で被害は外に出ていない。

「――『ソーラーフレア』」

上位日魔法ソーラーフレア。別名、太陽面爆発。

勿論本物ではない。

本物の太陽面爆発は直径数万kmにも及び、その破壊力は水素爆弾一億個と同等とまで言われるが生憎と所詮はマナで創った偽物。到底それには及ばない。

だから大きさも精々数百メートル規模だし、威力も水素爆弾数十から数百個程度だろうと予測される。

……俺の感覚も相当にやばくなってきたな。今、自分で自分の思考にゾッとしたぞ。

水素爆弾数百を『その程度』と考えるとか、いよいよもってやばい。常識が目に見えて崩壊を始めている。

発射前に念入りに天法の結界を展開し、全員を包む。

更にこれから焦土になるだろう場所の周辺に天力を散布し、高速巡回させた。

これは日属性上位天法の一つ、『ヘリオスフィア』。天力を高速巡回させ、それを幾層にも張り巡らす事であらゆるマナを遮断する絶対魔法防御フィールドを形成する術だ。

ゲームなら何も考えずにぶっぱ出来たんだが、流石にこの世界で何の準備もなくソーラーフレア発射なんかしたら、いくら加減しようと周囲の被害が洒落にならん。

準備も終え、俺は手首を軽く動かす。

すると俺の上にあった火球もそれに合わせて発射され、亜人の里があった場所に着弾した。

――直後、大爆発。

まず発生したのは閃光。

文字通り視界を焼くほどの閃光が溢れ、周囲を白く染め上げる。

普通にこんなのを見たら失明確定だろうが、先に張った魔法無効結界があるので実際こちらに届く光は精々太陽を直視してしまった程度のものであり、反射的に目を閉じれば全く問題はない。

で、肝心の俺は目も閉じてない。この身体本当にチートだな。眼球の耐久力まで吹っ飛んでるとか恐れ入った。

次に爆炎が上がり、キノコ雲が発生する。

うむ、我ながらおかしいなこれ。一人の力で核爆発級の威力を出せるとか、もうアホかと。

だが信じられるか? これでもまだ、ベネトナシュの『銀の矢放つ乙女』と比べればその威力はちょっとした線香花火みたいなものでしかないんだぜ。

あいつの矢、マジで惑星砕くからなあ……。

核の何倍の威力が出ているとか考えたくもない。

……何か、昔の人達が俺を恐れて排除しようとしたの、当然な気がしてきた。

うん。怖いわこんなの。

俺と魔神王さんが魔法の撃ち合いなんかやった日には、それだけでミズガルズ全土が焼け野原になるんじゃないか、これ?

チラリと後ろを見るとその反応は三者三様。

十二星は全員、流石だとでも言いたそうな顔でこちらを見ておりウィルゴだけが魂の抜けたような顔になっている。

そして勇者一行もそれは同じで、全員が等しく白目を剥いていた。

あ、よく見たら虎だけダッシュで逃げてる。

「……ねえ軍曹……私ら、これと戦おうとしてたの?」

「……うむ……そうだな……レオン様に従うということは、そういう事だったのだろうな」

「アタシ等余波だけで死ぬだろ、これ」

「無謀すぎたんだな。もう戦いなんて見たくないんだな」

亜人幹部四人は何か小声でブツブツと呟き、もう笑うしかないといった顔をしていた。

やがて爆発も収まり、後には巨大なクレーターと焼け野原だけが残される。

ま、焼け野原っていっても元々荒野だったわけだから岩しか溶かしてないんだけどな。

ともかくこれで言い訳の為の場は完成した。

この惨状を見れば、俺が亜人を里ごと焼き滅ぼしたと誰でも思うだろう。

多分今の爆発は他の国からも見えていただろうしな。

後は亜人達を引っ越しさせれば完了ってわけだ。

「さて、カイネコ……と言ったな。其方等の気持ちも分からんではないが、ここは余に免じて亜人達を見逃してやってはくれんか?

国には今の一撃で亜人が滅びたと伝えて欲しい」

「はい、喜んでッ!」

「ん? 何だ、やけに協力的だな」

「はい、喜んでッ!」

「……あー、うむ。では頼むぞ? そちらのエルフもな」

「はい、喜んでッ!」

「イエス・マム!」

カイネコとクルスの二人からまだ反発があるかなと思っていたのだが、予想に反してやけに従順というか協力的だ。

しかし大丈夫かこいつら。顔は真っ青だし、足がガタガタと震えてるぞ。

んな怯えんでも襲ったりしないってのに。

むしろ俺としては猫科の動物はかなり好きなので仲良くしたいと思っている。

そう思いながらカイネコを見ると、彼は泣きそうな声で「ヒイッ」と悲鳴をあげた。

……地味にショックだ。

「では次に亜人達の牽引だが……」

「ルファス様、その役目はどうか俺に」

次の役目は結構大事だ。

亜人達をマファール塔まで牽引する役なのだが、もしこれが他の人類に目撃されたりすると折角の御膳立てが全て無意味になる。

だからこの役は気配に敏感で、かつ遠方を見通せる奴が最適なのでリーブラにやらせようと考えていたのだが、そこにサジタリウスが自ら買って出た。

「其方が?」

「なるほど。マスター、確かにこの場における適任はサジタリウスです」

「そうなのか? まあ其方が言うならば間違いはなさそうだが」

サジタリウスか。

まあ確かに目は良さそうだし、リーブラの次に適任ではあると思う。

しかしリーブラと比べれば大分不安も残るんだが。

そんな俺の不安が顔に出ていたのだろう。サジタリウスは何故か突然弓矢を取り出した。

「見ていてください、ルファス様。俺の矢にはこういう使い方もあるのです。

皆の者! 全員で手をつなぎ、先頭の者は俺に掴まれ!」

……?

一体何をする気だ、こいつ。

サジタリウスの指示に従って亜人達が手を繋ぎ、最後に先頭の亜人がサジタリウスに触れる。

何やら随分妙な事をやっているがまるで意味が分からない。

仲良く一列に並んで塔へ向かおうとでもいうのだろうか。

それ逆に目立ちすぎるだろ。

「ではゆくぞ。『アルナスル』!」

サジタリウスが矢を発射し、何故か発射直後の矢を自分で掴んだ。

一体何を考えているのか……。

しかし次の瞬間、俺はその行動の意味を理解する。

矢を掴んだサジタリウスがその場から消え、更に間接的に彼と繋がっていた亜人全員が消え去ったのだ。

「驚かれましたか、マスター」

「あ、ああ。今、あやつは何をしたのだ?」

「絶対必中の矢『アルナスル』は発射した後に敵の前に転移し絶対に命中する彼のスキルです。

それは勿論マスターもご存じでしょうが、彼はその矢を掴む事で矢と共に転移する術をも身に付けていたのです。私達もあのスキルに助けられました」

「……それは絶対命中というより絶対回避のスキルなのではないか?」

「どちらにも使えるという事ですね」

リーブラから教えられたサジタリウスのスキル活用法に俺は感心させられた。

空間を超えて絶対命中する矢を掴むことで空間移動や絶対回避にも転用可能とか、何それずるい。

つまりあいつはその気になれば一瞬でどこにでも行けるって事じゃないか。

とんでもないチートスキルもあったものだ。