軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話3:エリス

騎士団長の『ガチャ』という言葉に、この場にいた全員が驚愕していた。

……というのも、わたくしたちは皆、クレストの成人の儀が行われた会場にいたからだ。

ハバースト家当主が自慢するために呼びつけ、結果的には大恥をかいたあの場での出来事であったが……それゆえに、『ガチャ』については知識を多く持っていた。

騎士団長は最後の手紙を取り出した。

「この三つのスキルが、どうやら神様が遣わしてくださった力のようだ。また、ここからは教皇様の予想になるが、今後も強力なスキルを持った人が現れるだろう。スキル持ちに関しての扱いは慎重にしていく必要がある……だそうだ」

教皇様の手紙を閉じた騎士団長は一礼の後に、壁側へと移動する。

わたくしは、じっとハバースト家当主を見る。彼は顔を青ざめていた。

当主だけではない。ハバースト家の者たち皆が、同じような顔をしていた。

そんなことに気づいていないのか、王はニコニコと微笑んでいた。

……あまり有能な人ではない、とそういえば父は話していた。

こういった小さなやり取りで、わたくしはそれを感じ取った。

「そういうわけだ。つまり、ここにいる三家に強力なスキルを持った者たちがいるというわけだ! そして、今後ももっともっとたくさん現れるかもしれない! 魔物に関して、我々は臆する必要はないのだ!」

にっこにこである。

……わたくしたちに力があるとはいえ、所詮は三人だ。

仮に、魔物があちこちで大量発生した場合、所詮三人で対応なんて不可能だ。

……まして、今は二人ですし。

「さて……それでは神の寵愛を受けた三人のスキル持ちよ! 今前に出てきてくれ!」

王様がそういって、わたくしは一歩前に出た。

それから、ミシシリアン家から……ミヌが前に出る。

……わたくしは彼女があまり好きじゃなかった。一瞥だけして、視線を王に戻した。

ミヌは、わたくしと同じ――いや、わたくしよりは少し下くらいの美しい女性だった。

銀色の髪を揺らし、青色の瞳は海のように綺麗だった。

そんなミヌは――クレストに恋心を抱いていた。ミヌもあまり家での立場が良くなく、クレストと同じ騎士学科に所属していたからだ。

だから、わたくしは特にミヌが嫌いだった。

わたくしたちが一歩前に出たところで、王がきょとんとした目を向ける。

「ハバースト家の者はどうした? まさか、この場に来ていなかったのか?」

「そ、それが……」

絞り出した、といった様子でハバースト家当主が口を開いた。

「く、クレストは……つ、罪を犯した……ので、その……魔法陣を利用し、下界送りにしました」

「げ、下界送りだと!? 神の寵愛を受けたのだぞ!? 何をしているんだ!?」

「し、仕方ありませんでした! クレストは、大きな罪を犯したのです!! 彼を罰さなければ、我々の公爵家としてのプライドが!」

「一体どんな罪を犯したというんだ!? 言ってみろ!」

「そ、それは――」

王が声を荒らげると、ハバースト家当主ははげた頭に汗をびっしりと浮かべていた。

良い気味だ。

わたくしは、少し胸が軽くなるのを感じていた。

わたくしに話していた予定よりも早く下界送りにした。

……わたくしから、謝罪の機会を奪ったハバースト家当主が苦しんでいる姿をみて、ほくそ笑む。

その時だった。隣にいたミヌがハバースト家当主へと近づいた。

「……クレストは、何の罪も犯していない」

「ええ、そうですね」

ミヌの言葉に乗っかるように、わたくしの父がそちらへと近づいていった。

「ハバースト公は己の小さな苛立ちを晴らすため、クレストを嘘つきと決めつけ、下界送りにしたのです」

「……どういうことだ?」

王が首を傾げる。

それに対して、父が答えようとしたところで、ハバースト家当主が声をあげた。

「リフェールド公! 決してそのようなことは断じてない! 奴は」

「事実は、どうでしたか? 教皇の言葉を借りるのなら、クレストがあの場で言った言葉はすべて、本当だったようですが」

「……そ、それは!」

「クレストの言葉をまったく信じなかった。それはあなたが原因ではないでしょうか?」

「……」

ハバースト家当主は、何も言い返せない。

それに対して、父がにこりと微笑み、王を見た。

「王! クレストの捜索を我が家が全力をあげて行いましょう!」

「本当か!?」

「はい! ですから……クレストを連れ戻した暁には、彼をハバースト家の当主に任命していただけませんか?」

わたくしは……その一言で父の目的を理解した。

そして、ハバースト家当主が目を見開き、父に近づいた。

「何がどういうことだ! クレストは五男だ! 爵位を引き継ぐような権利はない!」

「ですから、王に相談しているのです。王、クレストに公爵家を引き継がせてはくれませんか? そうでないと、連れ戻すのも難しいかもしれません」

「何? どういうことだ?」

王が首をひねる。

……なぜクレストを連れ戻すのが難しいか。そんなのは簡単だ。

「これほど、酷い仕打ちを受け、家や……下手をすれば国に復讐の念を抱いている可能性があります。ですから、こちらもそれなりの対応をする必要があります」

「……なるほど、な。それが、公爵という爵位の用意か?」

「実際は少し違います」

「なんだと? 一体何がだ?」

「簡単に言えば、公爵家のすべての者たちをクレストの下にするのです。……ここにいる、クレストに不当な処分を与えた彼らに、クレストが鉄槌を下せるようにするのです」

「……なるほど、な」

王がちら、とハバースト家当主を見る。

「お、王! なにとぞ、お許しを!!」

「おまえたちは皆、国を守るために存在しているのだ! クレストが戻る条件を提示した場合、余はクレストのできる限りの要求を受けるつもりだ!! それが、爵位というのなら、くれてやるつもりだ!」

王のその発言によって、ハバースト家の者たちが絶望したような顔になった。

わたくしは、父が小さくほくそ笑んだのを見て、すべてを理解した。

……父はわたくしとクレストの婚約関係を利用し、実質二つの公爵家の力を得ようと考えているのだ。

そうなれば――王さえもしのぐほどの力となるかもしれない。近い将来、リフェールド家が王座につく日も来るかもしれない。

それが、父の狙いなんだろう。