作品タイトル不明
第41話
中は暗い。夜だから皆寝ているのだろう。
入ってすぐに大部屋があり、そこにはゴーレムたちが休んでいた。
さらに視線を向ければ右と左に通路があり、その先にも部屋があった。
「部屋は三つに分かれているんじゃ。三つの種族がそれぞれの場所で寝ているんじゃよ」
「……なるほどな」
改めて、ゴーレムたちを見た。
汚れた布団がそのまま床に敷かれている。
ただ、あまり質は良くない。
俺たちは内部を歩いていくが、誰にも気づかれている様子はない。各種スキルがしっかりと機能してくれているな。
「ヴァンニャ、ひとまずリーダーたちに話をしたい。声をかけてもらっていいか?」
「分かったんじゃ」
俺は一度スキルを解除する。
それから、ヴァンニャがゴーレムの首領に声をかけた。
「ゴルガ、ゴルガ、聞こえておるかの?」
そう呼びかけるとゴルガは目をうっすらと開き、こちらに気づいた。
そのタイミングで俺はゴルガの肩へと手を触れ、アサシンと忍び足術を発動した。
これで、ゴルガもこちら側に入っているはずだ。
「ん? ヴぁ、ヴァンニャ……!?」
驚いた様子で声を上げたゴルガ。その目が信じられないものでも見るかのように見開かれた。
「しー! しーじゃ!」
「わ、悪い。……その、どうした、ヴァンニャ。外、脱出していた、はず」
「救出に来たんじゃよ! そのあたりの詳しい話は、こっちのクレストがしてくれるんじゃ」
そういうと、ゴルガの視線がこちらに向いた。
この前いたぶられていたゴーレムだ。
今はもう傷などはないようだ。
「に、人間……。どうして、ここに?」
僅かに警戒するような声が上がる。
「俺は上界から下界に捨てられた人間で、今は亜人たちと一緒に暮らしてる。オーガたちがいずれ俺たちの脅威になると思って、そのついでに助けにきた」
下界に送られたとか説明してもややこしいため、それだけの説明にする。
それに、俺たちの目的に関しても伝えた。
こうやって伝えた方が、ゴルガたちも納得してくれるだろう。
「なるほど」
「ただ、今日はあくまで内部の情報を集めに来た。救出の決行はまた別日に考えているんだが、それら含めてドリアードの首領とも話をしたい。ちょっとついてきてもらってもいいか?」
「分かった」
ゴルガはゆっくりと立ち上がり、俺の後をついてくる。
ヴァンニャを先頭に、隣の部屋へと移動する。
そちらではドリアードたちが眠っている。
ドリアードといったが、見た目は普通の人とそう変わらない。
ただ、髪に根っこのようなものがついているというくらいか。
ヴァンニャはまっすぐに歩いていき、一人の少女の前で足を止めた。
この子が、ドリアードの首領なのか? ヴァンニャとそう変わらない小柄な子だ。
茶色の髪をぼさぼさと伸ばした子で、花がついている。それが髪留めのようになっていた。
ヴァンニャが先ほど同様にドリアードの首領へと手を触れる。
そのタイミングでスキルを解除し、その後もう一度スキルを発動して、彼女の肩へ控えめに手を当てた。
「カトリナ。カトリナ。起きるんじゃ」
「……ヴァンニャ?」
目を開けたドリアードの首領――カトリナはぼけっとした目でヴァンニャを見ている。
まだどこか意識がはっきりしていない様子だった。
「そうじゃ、ヴァンニャじゃよ。助けに……というか、ここから脱出するための打ち合わせに来たんじゃよ!」
「……脱出? どうやって?」
「それは、こちらの協力者に話をしてもらうんじゃ。ということで、クレスト頼んだのじゃ!」
ヴァンニャが俺を見てくる。ヴァンニャもスキルの恩恵を受けるため、俺の腕に触れたままだ。
「初めまして、カトリナとゴルガ。俺は南の村でゴブリン、ワーウルフ、スライムたちをまとめている人間のクレストだ」
「……人間が、まとめている?」
「ああ、そうだ。上界からこの下界に追放されてな。まあ、色々あって今は三種族の首領を務めているんだ」
細かい説明は省いたが、とりあえず理解してくれたようだ。
「でも、今こうやって話しているけど声とか大丈夫なの?」
「俺が触れている間は、姿も見えなければ声も周りには聞こえていないんだ」
「……そうなんだ」
ちら、とカトリナが俺が触れていた手を見てきた。
「悪いな。こうやって触れてないとダメで」
「ううん、別にそれはいい」
「そうか」
「というわけで。今の村内の状況把握とともに、みんなと脱出についての打ち合わせをしたいと思っている。準備はいいか?」
カトリナとゴルガは顔を見合わせ、それからこくんと首を縦に振った。