軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第970話 新たな決意

ドラリシオの群生地の北の里から、アクアに乗って目覚めの湖に帰還したライト達。

日は真上まで上りきり、時刻は正午を少し過ぎた頃。

ちょうどお昼ご飯の時間なので、目覚めの湖の小島で昼食を摂ることにした。

小島に上陸したライト達が、いそいそと昼食の準備をしている。

するとそこに、巨大クラーケンのイードに乗った水の女王が現れた。

『皆、おかえりなさい!』

「あッ、水の女王様!ただいまです!」

『ウィカちーだけでなく、アクア様もお出かけなさるなんていいなー。皆でどこに行ってたのー?』

「そしたら、ぼく達今から皆でお昼ご飯を食べるところなので、水の女王様もいっしょに食べながらお話ししましょうか!」

『あ、それいいわねー♪』

ライトの提案に、水の女王がノリノリで乗ってきた。

水の女王はイードの身体から飛び降りて、ライトの敷物敷きを手伝ったりしている。

ラウルが手持ちのサンドイッチやおにぎり、ハンバーガー等々の入ったバスケットやお重を空間魔法陣から取り出し、ライトはアクアとイード用のスペシャルミートボールくんをアイテムリュックから取り出す。

そうして皆の食べるものが全部準備できたら、いつもの挨拶タイムである。

皆敷物の上やその周りで、合掌しつつ「いッただッきまーーーす!」と唱える。

それから皆思い思いに好きなものを食べていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『まぁ……私がぐっすりと寝ている間に、遠い地でそんなことが起きていたのね』

「はい……昨日ラウルがたまたまネツァクの街に行ったから、ドラリシオさん達を救うことができたけど……それがなかったら、今頃あのドラリシオさん達はノーヴェ砂漠で全滅してたと思います」

『それを考えると、一番のお手柄はラウルね!』

水の女王の言葉に、ラウル以外の全員がうんうん、と深く頷いている。

実際のところ、もし昨日フギン達への人族見学にネツァク以外の街を選んで出かけていたら、今でもネツァクで起きていた事件のことを知らずに過ごしていただろう。

そしてそのifの未来は、ドラリシオの完全殲滅という形で終結を迎えていたはずだ。

そんな悲劇の末路を辿らずに済んだのは、ひとえにラウルがネツァクの街に行くことを決定したからに他ならない。

だが、ラウルとしてはそうは思っていないらしい。

向日葵亭直伝おいなりさんをパクパクと頬張りつつ、ラウルが話し始める。

「いや、決してそれは俺だけの手柄じゃないさ。フギンとレイヴンが人里見学に来たからこそ、俺もその案内のためにネツァクを行き先に選んだ訳だし」

『そうね、それも一つの要因ではあるわよねー』

「ですね!そしたらフギンさんやレイヴンさんもドラリシオさん達の大恩人だよね!」

「「え"ッ!?」」

大好物の唐揚げを食べていたフギンとレイヴンが、水の女王の相槌に同意したライトの言葉にびっくりしている。

それまで八咫烏兄弟達には、自分達がドラリシオ・ブルームの恩人だなどという自覚は一切なかった。

しかし、改めてここ数日のことを振り返ってみればラウルの言う通りで、フギンとレイヴンがオーガの里を訪問した後ライト達と合流したからこそ、あの日あの時ネツァクに居合わせることができたのだ。

そのことに、改めて気付かされた八咫烏三兄弟。

マキシがキラキラと輝くような瞳で、フギンとレイヴンを見つめる。

「フギン兄様、レイヴン兄様。僕は兄様方の弟であることを、誇りに思います!」

「マ、マキシ……そ、そんな……我らは我らにできることをしたまでであってだな……」

「それでもです!偶然だろうが何だろうが、兄様方はたくさんのドラリシオさん達を救ったんですから!」

「な、何か、マキシにそんなこと言われると、照れ臭いけど……でも、俺達がここに来たことでたくさんの命が救われたなら……それはとても喜ばしいことだよな!」

「ああ……我らはこれからも、里の外に目を向けて学んでいかねばな」

尊敬の眼差しで見つめるマキシに、フギンもレイヴンも照れ臭そうにしている。

だが、弟から尊敬されて悪い気などするはずもない。

そして、八咫烏の里に篭っているだけでは決して成し得なかった数々の出会いや功績に、改めてフギンは外の世界を学ぶ重要性を感じていた。

そうしたフギンの新たな決意に、マキシやレイヴンはもちろんのこと、ライト達もまた微笑みながら頷いていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「……さて、これからどうするかな。フギン、レイヴン、お前達はまだこっちにいられるのか?」

昼食を一通り食べ終えて、敷物の上でのんびりと食後の珈琲を飲んでいたレオニスがフギン達に問うた。

同じく食後のデザートの一口ドーナツを摘んでいたフギンとレイヴン。嘴の中に一口ドーナツを頬張りながら、レオニスの問いに答える。

「 ほ(そ) う れ(で) す え(ね) …… ほ(そ) ろ ほ(そ) ろ あれ(我) らも はほ(里) に はえ(帰) あ(ら) え(ね) あ(ば) あいあえ(なりませ) ん」

「 れ(で) すねーぃ」

もっしゃもっしゃと食べながらの答えなので、発音が若干どころかかなり怪しい。特にあの堅物生真面目なフギンが、他所でこんな不調法な姿を見せるというのもかなり珍しいことだ。

だがそれは、ある意味とても良い傾向だ。それは、ライト達の前でそれだけリラックスしているという証に他ならないのだから。

そんなフギンの姿に、レオニスが微笑みつつ話を進めていく。

「そしたら、明日あたり帰るか?」

「そうですね。我らもあまり長く里を空ける訳にはいきませんので。明日には帰りたいと思います」

「皆さんとお別れするのは、実に名残惜しいですが……俺達も里でやらなきゃならんことがたくさんありますしね!」

口の中のものを飲み込み、真面目モードに戻ったフギンと努めて明るく話すフギン。

思えば彼らの人里見学は、常に驚きに満ちたものばかりだった。

前回の初回見学時にも早々に帰郷してしまったため、今回は特別にその時の補填も兼ねて二度目の人里見学に遣わされたというのに。よりによってネツァクの大事件とかち合ってしまった。

おかげで今回も、本来の目的である人族の観察はあまりできていない。

だが、それについてフギンとレイヴンに不満などない。

カタポレンの森の中では決して見ることのできない、砂漠という異郷を直にその目で見ただけでも彼らにとっては貴重な経験だった。

その他にも、ドラリシオという異種族との邂逅、さらには水神アクアにも出会うことができた。

それらの数々の珠玉の出会いは、良い経験となって彼らの成長の糧となることだろう。

「よし、そしたら今からラキんとこに行くか。ラキにはフギン達が帰る時に、いっしょに八咫烏の里に行こうって話をしてたからな」

「そうですね、ラキ殿も我らの帰郷に合わせて八咫烏の里にお越しいただく約束をしてましたね」

「ラキ殿が八咫烏の里に来てくだされば、父様母様達だけでなくシア様もお喜びになると思います!」

フギンとレイヴンの帰郷が決定したところで、レオニスがオーガの里のラキを訪ねようと言い出した。

確かに一昨日オーガの里をフギン達が訪ねた際に、フギン達の帰郷時にラキもいっしょに大神樹ユグドラシアに会いに行こう!という話になっていた。

明日出かけよう!とは急な話だが、ラキはいつでも出かけられると言っていたので問題ないだろう。

午後の行き先が決まり、早速ライト達が動き出す。

昼食で使った食器類や敷物を、サクサクと手早く片付けていく。

そしてライトがアクアの胸元に駆け寄り、ヒシッ!と抱きつく。

「アクア、昨日も今日もたくさん助けてくれて、本当にありがとう!」

『どういたしまして。僕も皆のおかげでいろんなところに出かけることができて、すっごく楽しかったよ』

「また皆でブルームさん達のところに遊びに行こうね!」

『うん。僕もあの子達のことが気になるから、ライト君達がドラリシオの里に行く時には是非とも僕も誘ってね』

「うん!」

ライトがアクアに礼を言っている横で、レオニスとラウルもまたウィカに話しかける。

「ウィカ、明日も八咫烏の里へ移動を頼むことになるが、よろしくな」

『うぃうぃ、任せてー!』

「いつも世話になってすまんな。またウィカ用に美味しい刺身を仕入れておくわ」

『ラウル君のご馳走がいただけるなら、いつでも大歓迎だよー☆』

明日の八咫烏の里への帰郷に際し、ウィカの水中移動を依頼するレオニスとラウル。

ウィカには頼りっぱなしで申し訳ない、とレオニス達は思っているが、当のウィカは然程苦には感じていない。

むしろウィカ的には『いろんなところに出かけられて楽しいー☆』『オマケにラウル君の美味しいお礼のご馳走がもらえる♪ラッキー☆』くらいにしか思っていなかったりする。

「アクアもウィカも、今日はゆっくり休んでね」

『ありがとう。ライト君達も相変わらず忙しそうだけど、頑張ってね』

『ライト君、また明日ねー☆』

『また私にも、いろんなお話を聞かせてねー!』

『皆、またねー♪』

目覚めの湖の小島から、ラキ達のいるオーガの里に向かうライト達。

ライトは水上歩行、レオニスとラウルは空中飛行、マキシ達八咫烏三兄弟は八咫烏の姿で飛んでいる。

目覚めの湖の仲間達に見送られながら、ライト達は小島から駆け出していった。