軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第879話 宴の終了と畑の線引き作業

ようやく天使達の腹も膨れ、焼き野菜バーベキュー大会も終わりが近づいてきた。

ラウルが貸し出した皿やフォーク、ザル、ボウルなどが次々とラウルがいるテーブルに集められて返却されていく。

百組以上の皿とフォークに、バケツリレーの如く使われたザルやボウル等々、それはもう大量に集まってくる。

だがラウルは気にすることなく、どんどん空間魔法陣に収納していく。

この島にはまだ台所や水の設備が整っていないので、ラグナロッツァの屋敷に戻ってから洗うしかないためだ。

皿やボウルをラウルのもとに戻しにきた天使達は、皆口々にラウルに礼を言っていた。

「美味しいご馳走をありがとう!」「こんな美味しいもの、初めて食べたわ!」「またいつかご馳走してね!」等々、それはもう満足度100%の大好評を得ていた。

笑顔で礼を言う天使達に、ラウルも「どういたしまして」「そりゃ良かった」「またそのうちな」等々、微笑みながらクールに受け答えしている。

ちなみにその返却の列の中には、パラスに連れられた光の女王と雷の女王もいた。

本当はパラスが「まとめて私が返却しておきますから」と申し出たのだが、女王達はそれを良しとせず自ら返却の列に並んでいた。

『ラウル、グリンちゃんだけでなく私達にも美味しい野菜を食べさせてくれて、本当にありがとう』

『地上の野菜って今まで食べたことなかったんだけど、あんなに美味しいものなのね!私、本当に感動しちゃった!』

自分達が使った皿やフォークをテーブルに差し出しながら、ラウルに向けて心から感謝を伝える女王達。

そう、彼女達は自分の言葉でラウルに直接礼を言って感謝を伝えたかったのだ。

いつになく笑顔に満ちた、光の女王と雷の女王。

そんな女王達の真摯な言葉に、ラウルもまた笑顔で応じる。

「女王達にも喜んでもらえたなら幸いだ」

『これからの天空島の野菜作りにも、是非とも協力してね』

「もちろんだとも。さすがに毎日は来れんが、ここを管理する天使の皆がある程度作業に慣れるまでは、なるべく通って指導できるよう努めよう」

『そのお礼として、私達にできることがあったら何でも言ってちょうだいね!』

「ああ、その時には遠慮なく頼らせてもらおう」

二人の女王や天使達と、和やかな会話を交わすラウル。

その一方で、ライト、レオニス、マキシは皆から離れたところで、パラスとともに畑の開墾箇所等を相談していた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「とりあえず島の半分って話になったが……ひとまずざっくりと線を引いておくか。パラス、今から俺が線を引くから、島の全体が見えるくらいの上空から見ててくれるか?」

「承知した」

レオニスの要請に応じ、早速パラスが上空に向かって飛んでいく。

その間にレオニスは、空間魔法陣を開いて何かを取り出す。

それは退魔の聖水だった。

この退魔の聖水には、液体を振りかけた場所がしばらく発光するという特性がある。

光の色は淡い水色で、発光時間は地面に振り撒いてから十分程度。

これは、退魔の聖水の魔物除けの効果を十全に発揮させるための可視化だと言われている。

退魔の聖水とは、一時的な結界を作るアイテム。

結界を作るには、引いた線が円形なり四角形なりできちんと閉じられていなければならない。

振りかけた場所を光らせることで、聖水の線がちゃんと繋がっているかどうかを確認することができるのだ。

まず、島の中央と思しき位置にライトを立たせる。

そしてマキシを島の端、長辺側中央辺りに立たせる。

そしてレオニス自身はマキシと反対側の島の端、ライトとマキシを一本の線で結んだ延長線上に移動する。

三人の立ち位置を決めた時点で、レオニスが上空で待機していたパラスに大きな声で話しかけた。

「パラスー、この位置でどうだー? 島の半分くらいになるかー?」

「概ね良いと思うぞー」

「了解ー」

上空から見たパラスのOKを得たレオニス。自分の立っている場所から退魔の聖水を地面に振りかけながら、ライトの方へ向かって小走りする。

途中で退魔の聖水が切れたので、空間魔法陣から二本目を取り出して引き続き地面にかけていく。

そうしてマキシの立つ場所に辿り着くまでに、合計五本の退魔の聖水を消費しつつ一本の線を引き終えた。

レオニスが歩いてきた地面を見ると、薄っすらと水色に光っているのが分かる。その線が、この島を半分に分ける境界線だ。

退魔の聖水での線引きが完了したところで、レオニスはライトとマキシを連れて最初のスタート地点に移動した。

「そしたらライト、この線に沿って土魔法をかけて地面の土を掘り起こしてみな」

「うん、分かった!」

「マキシはライトが掘り起こしたところに、この石を置いていってくれ。間隔は密でなくても適当でいい、石は境界線の目安にするだけだから」

「分かりました!」

レオニスの指示に従い、早速ライトが土魔法をかけ始める。

薄っすらと水色に光る土に両手を翳し、畑の畝を作るイメージで魔力を送っていく。

すると、地面がポコポコと線状に盛り上がっていく。

それはよく漫画やアニメで見るような、まるでモグラが地下にトンネルを掘っているかのような図である。

その線状の土の上に、マキシがレオニスから受け取った鉄鉱石を置いていく。

間隔は石の二個分を空けて一個置く、といった感じで、半分くらい埋め込むようにしっかりと設置していく。

レオニスがマキシに渡している石は、幻の鉱山で採取したミスリル鉱石だ。

これまでレオニスは、幻の鉱山では水晶や宝石類以外はほとんど見向きもしなかったため、毎回捨て置いてきた。

だがライトとともに鉱山に行くようになってから、こうしたミスリル鉱石なども無駄にすることなく大量に入手可能になった。

今回のような『煉瓦代わりの置き石にする』というのは何とも微妙な使い道だが、他にも鍛冶屋など各種鉱物を必要とする業者に売ることもできる。

ちゃんと資産価値のある品なのだ。

「ライトー、退魔の聖水の発光時間は十分だからなー、早め早めに進めていかないと途中で光が消えちまうぞー」

「え!? が、頑張る!」

「おう、頑張れよー」

レオニスの檄に、ライトは懸命に応えようと魔力を注ぐスピードを上げる。

この天使達の住まう島は、鍛錬場としての役割もあるだけにかなり大きい。何しろ東京ドームクラスの大きさなので、レオニスが引いた線は200メートル以上もあるのだ。

本当ならもっと丁寧に土魔法をかけていきたいところなのだが、もたもたしていたらレオニスの言うように目安の光が消えてしまう。

そうならないように、懸命に横歩きで地面に土魔法をかけていくライト。

そのすぐ横を、マキシが同じく横歩きでミスリル鉱石を地面に埋め込んでいく。

そうして、ライトが土魔法で地面を盛り上げ始めてから約七分。

退魔の聖水の発光が消えるギリギリ手前のところで、ようやく島の端に辿り着いた。

「うおおおッ、ギリギリ間に合ったーーー!」

何とか無事ミッションクリアしたライト、思わずその場で尻もちをつきながら地面に座り込んだ。

光が消える前にやり遂げないと!と駆け足で魔法をかけ続けたため、最後の方は畝の線がかなり太くなったりもした。

だが、何とか時間内には間に合わせることができた。

任務を無事完了させたライトに、レオニスとマキシが労いの言葉をかける。

「よくやったな、ライト」

「ライト君、お疲れさまでした!」

「うん、すっごく頑張ったー」

「幼子ながら、よく頑張ったな!」

「えへへ……パラスさんも褒めてくれるなんて、嬉しいです」

座り込んだライトの左右にレオニスとマキシもしゃがみ込み、にこやかな笑顔でライトの頭や背中を撫でている。

ずっと上空で線引き作業を見守っていたパラスも下りてきて、頑張ったライトに労いの言葉をかけてくれた。

するとそこに、ライトと光の女王、雷の女王が歩いてきた。

どうやらラウルの方も、打ち上げバーベキュー大会の片付けが終わったようだ。

「ご主人様達よ、一体何をしてるんだ?」

「おう、ラウル。そっちが片付けしている間に、畑にする部分の線引きをしてたんだ」

「おお、この置いてある石の列がそうか?」

「そうそう。ライトが土魔法で土を掘り起こして、マキシが石を埋め込んでくれたんだ」

レオニスの答えに、ラウルが地面に引かれたばかりの線をざっと見回す。

そして感心したように、ライトとマキシに礼を言った。

「ライト、マキシ、ありがとうな。こんなに分かりやすい目安があれば、ここから向こう側の開墾もとてもやりやすくなる」

「どういたしまして!」

「僕だって、たまには皆の役に立たないとね!」

ラウルからの礼に、嬉しそうな顔ではにかむライトとマキシ。

ライトもマキシもまだまだ実力は低く、到底レオニスやラウルの足元にも及ばないと思っている。

だが、そんな自分でも皆の役に立てる―――そう実感できる機会が増えるのはとても良いことだ。

そんな功労者二人のために、ラウルがライトに手を伸ばしながら話しかける。

「ライトもたくさん魔法を使ったら、腹が減っただろ? そろそろ昼飯の時間にもなるから、皆でログハウスの中で飯にしよう」

「うん!ぼくもうお腹ペコペコ!」

「じゃあ決まりな」

ラウルの差し伸べた手を取り、立ち上がるライト。

朝早くからこの天空島に来たが、ドライアドの加護やらユグドラエルとの対話、神鶏へのご馳走に天空島専用転移門の設置等々、様々な用事をこなしていたらとっくに昼になっていた。

先程まで繰り広げられていた、ログハウス建設の打ち上げバーベキュー大会も、あれは天使達に振る舞っていた礼なので、ライト達は一口も口にしていない。

ライトだけでなく、レオニスもラウルもマキシも皆腹ぺこだった。

現にライトとレオニスのお腹からは『ぐー……きゅるるるる……』という腹の虫の声が時々鳴り響いている。

腹の中で暴れている虫をとっとと宥めたいところだが、、レオニスが二人の女王に向かって声をかける。

「良ければ女王達も俺達といっしょに、ログハウスに来てもらえるか? 今後の畑の開墾や運用についても話し合っておきたい」

『もちろんいいわよ』

『そうね、私もそのログハウスというものに興味があるわ!』

「ならば私も女王様方とともに同席しよう。私はこの島の管理者であるからな」

「分かった、そしたらパラスもついてきてくれ」

二人の女王のみならず、パラスも同席の意思を示す。

もちろんその提案を拒否する理由などない。

今後この天空島の畑の手入れを担うのは天使達であり、パラスはその天使達の上官である。

天使達を監理する最上級責任者であるパラスこそ、畑の運用方法を最も理解しておいてもらわなければならないのだ。

「じゃ、皆でログハウスに行くか」

「「はーい!」」

「おう」

レオニスの掛け声とともに、ライト達は建てたばかりのログハウスに向かって歩いていった。