軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第872話 ライトの選択

その後ラウルがユグドラエルの天辺にいるヴィゾーヴニルとグリンカムビを呼びに行き、神鶏二羽とともに戻ってきた。

久しぶりに見る神鶏達は見事にまん丸で、ぷりっぷりのツヤッツヤに輝いている。

「ヴィーちゃん、グリンちゃん、こんにちは!」

「二羽とも、一回り以上は大きくなったなぁ」

「素晴らしい雄姿ですね……尊敬しちゃいます……」

『クエエッ♪』

『コケケコ♪』

神鶏達に早速挨拶するライトに、その大きさに改めて感嘆するレオニス。

中でもマキシは感激の面持ちで、ヴィゾーヴニルとグリンカムビを眺めている。それは同じ鳥族、八咫烏としての観点であろう。

確かに全員が感じている通り、二羽は以前に比べて明らかに大きく成長した。

その身体の大きさは、竜の女王である白銀の君と同等くらいに見える。前回会ったのは一ヶ月ほど前のことだが、その時には二羽ともそこまでの大きさではなかった。

しかも成長したのは体格だけではない。見た目にもかなりの変化が起きていた。

輝きが増したのは羽根や翼のみならず、全身の至るところで見受けられる。

揺らめく炎のような形をした鶏冠は、その形に相応しく燃えるような赤さに満ちていて雄々しさを際立たせる。鶏冠と同じ色をした 肉髯(にくぜん) も、ふっくらかつ大きく垂れ下がっていて威厳を大きく増している。

まん丸に見えるフォルムから少しだけ覗く腿は、実はムッキムキの筋肉質。ふわふわの羽根でできた尾は、斜め上に向かってピン!と立っていてとても凛々しくカッコいい。

ヴィゾーヴニルとグリンカムビは、全てにおいて前回会った時より一回りも二回りも大きく成長していた。

そんな神鶏達に向かって、レオニスとラウルが声をかけた。

「ヴィーちゃん、グリンちゃん、すまんが俺達を天空神殿と雷光神殿まで乗せていってくれるか? 女王達と会って話をしたいんだ」

「もちろん用があるのは女王達だけじゃないぞ。今日もヴィーちゃんとグリンちゃんのために、美味しい野菜をたくさん持ってきたんだ」

レオニスの話はともかく、ラウルの言葉を聞いた神鶏達の目がキラーン☆と光る。

『クエエエッ!?』

『ケココケケ!?』

「ああ、前回ご馳走したトウモロコシやニンジンもあるし、他にも新しい野菜をたくさん用意したんだ。あっちの島でご主人様が女王達と話をしている間、俺がヴィーちゃん達に美味しいものをご馳走しよう」

『クエコケケ!』

『コッケリコー!』

ラウルの話を聞いたヴィゾーヴニル達が、興奮気味にラウルにグイグイと迫る。

特に『新しい野菜』という言葉に敏感に反応して、鼻息も荒くラウルに詰め寄る。

そして二羽とも翼を大きく広げだした。

そんなヴィゾーヴニル達を見て、ユグドラエルが微笑んだ。

『フフフ、二羽が『早く背中に乗って!』『女王ちゃん達のところに行こう!』と言ってますよ』

「そうなんですね!ヴィーちゃん達、ありがとう!」

「よし、じゃあお言葉に甘えて早速乗せてもらうとしよう」

神鶏達の言葉を翻訳するユグドラエル。

ヴィゾーヴニル達の快諾を得られたことを知り、早速四人はその背に乗った。

ヴィゾーヴニルにはライトとレオニス、グリンカムビにはラウルとマキシがそれぞれ乗り込んだ。

客人達を背に乗せた二羽が、ふわり……とゆっくり宙に浮く。

『ヴィーちゃん、グリンちゃん、いってらっしゃい』

『コケケッケェェェェ!』

『クックルキョェェェェ!』

『レオニス、ライト、ラウル、マキシもいってらっしゃい。女王達にもよろしく伝えておいてくださいね』

「はい!いってきまーす!」

ユグドラエルがヴィゾーヴニルとグリンカムビ、そしてライト達一人一人にいってらっしゃい、と声をかける。

ライトが明るく大きな返事を返し、レオニスやラウル、マキシも笑顔で手を振る。

天空樹に見送られながら、ライト達は二羽の神鶏とともに天空神殿と雷光神殿に向かっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして二つの神殿がある島に移動したライト達。

ヴィゾーヴニルが雷光神殿横に、グリンカムビが天空神殿横にふわりと着陸する。それぞれちゃんと自分のホームに着陸するあたり、縄張り意識や帰巣本能があるようだ。

神鶏達の背からストン、と地面に飛び降りるライト達。

降りてすぐに、それぞれヴィゾーヴニル達に礼を言った。

「ヴィーちゃん、ありがとう!すっごく楽しかった!」

「ああ、ふわふわな羽根で最高の乗り心地だったな!」

『コケクエッ♪』

「グリンちゃんもありがとう。素敵な空の旅を楽しませてもらったよ」

「偉大な神鶏の背に乗せてもらえたなんて、本当に光栄です!」

『ケケココケ♪』

皆嬉々として口々に礼を言い、それを受けるヴィゾーヴニル達も誇らしげに胸を張る。

それはたかだか一分二分程度の飛空だったが、いつもとは違う空の旅に皆心から楽しみ堪能したようだ。

するとそこに、光の女王と雷の女王が神殿から出てきた。

『皆、ようこそいらっしゃい』

『パラスから話を聞いて、ずっと待ってたのよ!』

嫋(たお) やかな光の女王に、溌剌とした雷の女王がライト達のもとに楚々と寄ってくる。

「光の女王様、雷の女王様、こんにちは!」

「久しぶりだな」

「ご無沙汰してるな」

「女王様方にお会いできて光栄です!」

四人が二人の女王に向けて挨拶をする。

女王達と挨拶をしている間に、神殿の島に着陸した二羽がシュルシュルと縮んでいく。

普通の鶏サイズになったヴィゾーヴニルとグリンカムビが、女王達の胸に飛び込んでいった。

彼女達の腕の中にぽすん、と収まった神鶏達を、二人の女王はとても愛おしそうに優しく撫でている。

『グリンちゃん、お疲れさま』

『ヴィーちゃんもお利口さんね!』

『コケッ☆』

『クエエ☆』

麗しい女王達に撫でられてご満悦な神鶏達の姿に、傍で見ていたライト達も思わず和む。

だが、ずっと和んでばかりもいられない。

早速訪問目的を果たすべく、レオニスがその口火を切った。

「さて、そしたら俺は光の女王と雷の女王と話をしてくるが……ラウルはヴィーちゃんとグリンちゃんに野菜をご馳走するとして、ライトとマキシはどうする?」

「僕はラウルのお手伝いをしたいです!」

「そうか。そしたらライトはどうする?」

レオニスの問いかけに、マキシが真っ先に応じて答える。

マキシは同じ鳥族として、ヴィゾーヴニルとグリンカムビを心から尊敬している。故に、ラウルとともに美味しい野菜をご馳走して少しでも神鶏達の近くにいたい、と思うのは当然のことである。

となると、残るはライトだ。

レオニスとともに女王達との会話に加わるも良し、ラウルやマキシとともに神鶏達と戯れるも良し。

だがライトが選んだのは、そのどちらでもなかった。

「ンーとねぇ……ぼくは、閃光草の採取をしたいかな!」

「ン? また草むしりすんのか?」

「うん!今周りを見ると、また閃光草がたくさん生えてるようだし。光の女王様、雷の女王様、また閃光草をいただいてもいいですか?」

思いがけないライトの選択に、レオニスも思わずきょとんとする。

だが、ライトにとってこれは絶好の機会だ。

閃光草は様々な場面で使える素材。クエストイベントのお題に出てきたり、各種薬剤の材料にもなったりする。

そう、閃光草は在庫がいくらあってもいいアイテムなのだ。

しかもそれは、この天空島にしか存在しない。

地上では簡単に入手できないアイテムだけに、採取できるチャンスは絶対に逃せないのである。

ライトからの問いかけに、二人の女王は快く応じる。

『もちろんいいわよ。この天空島では、閃光草はいくらでも生えてくるし』

『しかも生える速度がまた早いのよね!こないだ君が散々草刈りしてくれたのに、もうわっさわっさと生い茂るくらいですもの。いくらでも持っていっちゃって!』

「ありがとうございます!」

ライトは閃光草採取、レオニスは二人の女王との話し合い、ラウルとマキシはヴィゾーヴニルとグリンカムビに野菜をご馳走する。

それぞれにやることが決まり、ひとまずレオニスが他の三人に向けて声をかけた。

「じゃ、俺も女王達との話し合いが終わったら、一度外に出てラウル達と合流する。俺が神殿から出てくるまで、ラウルとマキシはヴィーちゃん達に野菜をご馳走しててくれ」

「了解ー」

「はい!」

「ライトも草むしり頑張れよ。でも、崖っぷちは危ないから行くなよ?」

「はーい!」

こうして四人は、それぞれ別々の行動に移っていった。