軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第873話 植物魔法の実験

レオニスが二人の女王とともに天空神殿に入った後、ラウルは早速空間魔法陣を開いた。

中から取り出したのは、トウモロコシにニンジン、キュウリ、サツマイモ、ピーマン、カボチャ等々。中には謎の葉っぱも大量にある。

それらを一種類づつ取り出しては、同じ場所に出し続けていくラウル。

マキシはそれらがあちこち転がっていかないように、綺麗に積み重ねていく。

色とりどりの美味しそうな巨大野菜が、次々と神鶏達の目の前に並べられていく。

その様子を見ながら、じっと待っているヴィゾーヴニルとグリンカムビ。その目はもうキラッキラに輝きまくっている。

しかし、分別なくすぐにがっつくことなくちゃんと待っていられるあたり、実にお利口さんである。

神鶏達へのご馳走を一通り揃えたラウルが、改めてヴィゾーヴニルとグリンカムビに声をかけた。

「ヴィーちゃん、グリンちゃん、お待たせ。おかわりもたくさんあるから、遠慮なく思う存分たらふく食ってくれ」

「ラウルが丹精込めて育てた野菜だから、すっごく美味しいですよ!」

『『コッケケッコケーーー!』』

ラウルがOKを出し、待ちかねたヴィゾーヴニルとグリンカムビが勢いよく巨大野菜を食べ始めた。

どの野菜も美味しそうに食べる神鶏達。喉に詰まらせないか心配になってくるくらいだ。

謎の葉っぱも時折、巨大野菜を食べる合間に摘んでは美味しそうにもしゃもしゃと食べている。レタスやもやしなどのように、口中さっぱり要員として活躍しているのであろうか?

ちなみにこの謎の葉っぱ、実はサツマイモの葉である。

ハート型の葉っぱはどれも50cm以上あって、大きなものは1メートル近くある。

カタポレンの畑で育てた巨大野菜だけあって、野菜だけでなくその葉っぱも実に巨大である。

サツマイモの葉っぱを利用することをラウルに伝授したのは、もちろんライトだ。

鶏の餌やサツマイモの栽培方法など、ラグーン学園図書室で調べてきたライト曰く『鶏って、サツマイモの葉っぱも好んで食べるんだって!しかもサツマイモの葉っぱの茎も普通に食べられるし、食べられなさそうな固い蔓は畑に埋め込んでやれば肥料にもなるんだってさ。トウモロコシの緑肥と同じだね!』とのこと。

それらは本来なら、燃やすなどして捨てるはずの部分。それがヴィゾーヴニル達の好む食べ物の一つになり、さらには畑の肥料として再利用できる―――これ程素晴らしいことはない。もちろんラウルはそのアドバイスに素直に従う。

うちの小さなご主人様は、本当に天才じゃね?とつくづく思うラウルである。

ラウルはそんなことを考えながら、少し離れたところでヴィゾーヴニルとグリンカムビの食べっぷりを眺めていた。

すると、神鶏達の傍でつきっきりで世話をしていたマキシがラウルに声をかけた。

「ラウルー、トウモロコシとサツマイモがそろそろ終わりそうなんだけど、おかわりあるー?」

「おう、今すぐ補充する」

マキシの声に、ラウルがハッ!と我に返る。

前回大好評だったトウモロコシはもちろんのこと、新作のサツマイモも神鶏達の口に合ったようで他の野菜よりも明らかに好んで食べている。植物魔法で追熟を促進させたサツマイモは、甘みが増えて美味しいのだ。

ラウルは急ぎヴィゾーヴニル達のもとに駆け寄り、おかわりのトウモロコシやサツマイモを出していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ラウルとマキシが神鶏達にご馳走している間、ライトは彼らから少し離れたところで閃光草の採取をしていた。

閃光草の生えている箇所の土を柔らかくするため、土魔法で草の周囲の土を少しづつ盛り上げていく。

あまり急激に盛り上げると根がブチ切れてしまうので、時間をかけてゆっくりと土魔法を施していく必要がある。

地面にしゃがみ込み、閃光草の根元に向かって両手を翳すライト。「ぬぅぅぅぅ……」と呻りながら魔力を送り、懸命に魔力調整に励む表情は真剣そのものだ。

こうした操作は、ライトの魔法操作修行にもなるもってこいの作業なのである。

土が程よく解れたところで、閃光草の根元からゆっくり引き抜く。

引き抜いた閃光草は、根についた土を軽く払い落としてからアイテムリュックに仕舞い込む。

ある程度収穫したら、まだ採取していない場所に移って土魔法を施すところから始める。

これをひたすら繰り返していく訳だが、時折神鶏達の方を見ては彼らの食べっぷりを眺めて和んでいた。

「やっぱりラウルが育てる野菜は、ヴィーちゃん達にも美味しいご馳走なんだろうなぁ」

「あんだけ美味しそうに食べてくれたら、作る側もやり甲斐があるってもんだよね!」

「今日はぼくにも【ドライアドの加護】をもらえたことだし。これからラウルの野菜作りの手伝い頑張ろうっと!」

ぷりっぷりのツヤッツヤなヴィゾーヴニルとグリンカムビ。

その愛らしさと神々しさは、遠目からでもよく分かる。

美味しい食事でご機嫌な神鶏達に和みつつ、ライトも引き続き閃光草採取に励んでいた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして神殿のある島の、ほぼ全ての閃光草採取を終えようとしていた頃。

ライトは閃光草未採取エリアの最後の一角に移動した。

「とりあえずここで最後かな。今日も結構たくさん採れたし、当分は閃光草関連で困ることはないよね!」

立ったりしゃがんだりを何度も繰り返したことで、腰が疲れてきたライト。

両手を拳にして、トントン、と軽く腰を叩いている。

するとここで、ライトがふとあることを思いついた。

「……そういやこの閃光草にも、植物魔法って効くのかな?」

そう、ライトが思いついたのは『植物魔法で閃光草を増やせるのか?』ということであった。

もし他の植物のように増やせるなら、根以外の部分、葉や茎、花などが採り放題になる。

これは実験してみるしかないでしょう!ということで、早速ライトは実験に取りかかる。

まずアイテムリュックから水入りのバケツを取り出す。一滴の水も与えずに植物が育つ訳がないからだ。

そして閃光草の前にしゃがみ込み込むライト。土魔法を使わずに、数cm程の茎と根を残して上の部分の茎や葉を切り取る。

切り取った後の切り株にたっぷりと水を与え、両手を翳して植物魔法をかける。

ちなみにこの植物魔法には、特に名前はない。

植物に対して『育てー、育てー、大きく育てーーー』とひたすら念じながら魔力を送り続けるだけだ。

もしかしたらこの広いサイサクス世界、探せば名前のある植物魔法も存在しているかもしれないが。少なくとも【ドライアドの加護】に頼る植物魔法は名無しである。

そうしてライトが閃光草に植物魔法をかけた瞬間。

数cmだった切り株から、ブワッ!と勢いよく茎と葉が伸びたではないか。

あまりの勢いのよさに、ライトは思わず「おわッ!」と驚きの声を上げる。

ライトは翳していた両手を一旦下ろし、一気に伸びた閃光草を観察する。

周囲にある閃光草と比べて、葉や茎の艶、大きさなどは申し分ない。

茎の先端には花の蕾がついている。これも植物魔法をかければ咲くのだろうか?

それを確かめるべく、再び閃光草に向けて両手を翳すライト。今度は根元ではなく、花の蕾に向けて魔力を注ぐイメージをした。

すると、閃光草の蕾がみるみるうちに膨らみを帯び、やがて白く輝く花を咲かせるに至った。

この花も、周囲にいくつか咲いている閃光草の花と比べて全く遜色ない。完全に閃光草の花そのものである。

「おおお……閃光草の栽培に成功しちゃったぞ……」

まるで白熱灯のようにキラキラと輝く閃光草を前に、思わず感嘆の声を漏らすライト。

少し離れた場所にラウル達がいるので、大きな声を出して大喜びする訳にはいかないのだ。

しかしこれは、ライトにとって大きな収穫だ。

天空島とは、普段から気軽に立ち寄れる場所ではない。故に、ここでしか採れない素材をより多く確保することは至上命題なのである。

「あ、そしたらここの土を持って帰れば、地上でも閃光草を栽培できるかな?」

「でもなぁ、言ってみればこの閃光草って高山植物みたいなもんだろうし、地上で育てるのは難しそうだなぁ」

「……とりあえず、一回やるだけやってみるかな。よし、そしたらこの土も少しだけいただいていこう」

ライトはそう呟くと、植物魔法で再生させた閃光草の周辺に土魔法をかける。

そしてアイテムリュックから空のバケツを一個取り出し、柔らかくなった土ごと手で掬った閃光草を入れた。

閃光草の周辺の土をさらにバケツに足していき、バケツの半分くらいになったところでアイテムリュックに仕舞い込んだ。

「これでよし、と。さ、残りの閃光草は普通に採取して、ラウル達のところに戻ろうっと!」

閃光草の土ごと採取を完了したライト。

残り十数株の閃光草の採取を再び始めていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そんなこんなで、ライトが閃光草の採取を完了したライト。

ラウル達のいるところに戻ると、ヴィゾーヴニルとグリンカムビが相互羽繕いをしていた。

どうやら食事の方は無事済んで、食後ののんびりタイムを過ごしているようだ。

神鶏達の傍で休憩しているラウルとマキシに、ライトが声をかけた。

「ただいまー。ヴィーちゃんとグリンちゃんへのご馳走はもう終わったの?」

「お、おかえりー。さっきまで食べてたんだが、二羽とも満足したようでな。今はのんびりと互いの羽繕いをしているところだ」

「ライト君、おかえりなさい!」

帰還したライトの挨拶に、ラウルとマキシも返事を返す。

ライトは手前の方にいたヴィゾーヴニルの羽を優しく撫でながら、神鶏達にも話しかける。

「ヴィーちゃん、グリンちゃん、お腹いっぱい食べた?」

『クエエエエ♪』

「ラウルのお野菜、美味しかった?」

『コケコケケ♪』

「そっか、満足してもらえて良かった!……ていうか、ヴィーちゃん達、また大きくなった??」

ライトの問いかけに、目を細めてにこやかに答えるヴィゾーヴニルとグリンカムビ。その表情とご機嫌そうな鳴き声から、二羽がとても満足していることがライトにも伝わる。

しかし、それ以上に驚いたのは、二羽の体格がまた大きくなっていたことである。

カタポレン産の巨大野菜をたらふく食べたことで、今回もまたヴィゾーヴニルとグリンカムビの身体が大きくなったようだ。

「ヴィーちゃん達に喜んでもらえて、ラウルも良かったね!」

「ああ。カタポレンの森に畑を作った甲斐があったってもんだ」

「ぼくもドライアドさん達から加護をもらったし、ラウルの野菜作りをもっともっと手伝うからね!」

「おお、そりゃありがたい。よろしく頼むな」

ご馳走した野菜を神鶏達に喜んでもらえたことを、我が事のように喜ぶライト。

ヴィゾーヴニルとグリンカムビは、神樹ユグドラツィを救ってくれた大恩人ならぬ大恩鶏。その大恩鶏に喜んでもらえることは、ラウルにとっても大きな喜びなのである。

そんなラウルに、マキシもまた声をかける。

「ラウル、僕も皆さんのおかげで【ドライアドの加護】をもらえたから、アイギスがお休みの日には僕も野菜作りを手伝うよ!」

「マキシも手伝ってくれるとはありがたい。これから皆でガンガン美味しい野菜を作ろうな」

「「うん!」」

ライトだけでなく、マキシも野菜作りの手伝いを申し出た。

アイギスは基本不定休で決まった曜日の休みはないが、少なくとも土日祝日に休むことはない。これはラグーン学園に通うライトの休日である土日祝日とは全く被らない。

ライトとマキシの手伝いが分散されることで、手伝えることも増えて効率良く野菜作りを進められることだろう。

ライトとマキシ、二人の心強い味方を得たラウルは嬉しそうに微笑んでいた。