軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第838話 マッピングのレベリングと明日の予定

ライトが新たなる移動手段『マッピング』と『幻のツルハシ・ニュースペシャルバージョン』を手に入れてから、早五日。

週末を前に、ライトは平日の間ずっとあれこれと計画を練りつつ行動していた。

まずは兎にも角にもマッピングのスキルレベルを上げるために、ラグーン学園から帰宅以後は暇を見てはマッピングを使いまくる。

スキルレベルが1のうちは、マッピングの指定ポイントはまだ一ヶ所しか登録できない。スキルレベルを1上げる毎に、指定ポイントが一ヶ所増えていくのだ。

なので、登録ポイントを自室のベッド横にしたままいろんな場所からマッピングを用いて自室に戻る、をひたすら繰り返す。

それは、家の敷地内からだったり、あるいは少し離れた魔石生成魔法陣から飛んでみたり。ラグナロッツァの屋敷の転移門のある旧宝物庫からだって、難なく瞬時に移動できる。

そして、マッピングの優れているところは『1SPさえあれば、長距離短距離重量等々一切関係なく移動可能』なことだ。

魔力を使用して瞬時移動する転移門も、基本的に距離は関係なく移動できる。だが、転移門を使用する者や荷物の総重量によって消費魔力が変動する。

その点ライトのマッピングは、重量に関係なく移動可能だ。

ライトも試しとして、カタポレンの森の中で適当に拾った巨大な石を持って移動してみたが、何の問題もなくA地点の自室に移動できたので間違いない。

ちなみにその石は、ライトが両腕を回しても手が届かない大きさで重量は100kg以上はあると思われる。

もちろんその石も、素材としてライトがいただいてマイページ内に収納しておいた。石は交換所で『砥石』という武器用の強化素材と交換できるからだ。

ライトのもったいない精神は、いつでもガッツリ健在である。

重量や距離に関係なく、ポイントさえ指定登録すれば以後は世界中どこでも移動可能なことが分かり、安堵するライト。

さすがにラグーン学園内にいる間はマッピングを使用する訳にはいかないので、ラグナロッツァの屋敷に帰宅してからが本番だ。

夕方から寝るまでのほんの数時間、おやつや食事、入浴、宿題をするなどでところどころ中断されるが、それはそれでSPのクールタイムとして自然回復が図れるので問題はない。

帰宅から就寝までの約七時間の間が、ライトのマッピング修行タイムである。

スキルレベルアップの効率化を図るため、まずはスキルレベル2を目指す。

指定ポイント一ヶ所だけだと、ライトがスキルを行使するために離れた場所にいちいち移動しなくてはならないが、二ヶ所目が指定できればA地点とB地点を往復するだけでよくなるからである。

二ヶ所目が解放されれば、極端な話ライトの部屋の両端にポイントを登録して、隅から隅に移動するだけでいいのだ。

傍から見たら、それはまるで奇術や手品の練習でもしているかのようでさぞかし奇っ怪な図であろう。

しかし、誰に見せる訳でもないので全く問題はない。むしろ誰かに見られた方が大問題である。

そして、一日でも早くこの力を活用するには初期投資が肝要!と考えたライト。使い魔達のお使いの成果やクエストイベント報酬など、これまで貯めてきたエネルギードリンクをここぞとばかりに飲んではひたすらマッピングを使い続ける。

そのおかげで、マッピングのレベリングを開始してから二日目にスキルレベル2に、五日目にはレベル3に到達した。

ライトがマッピング修行を開始したのは、ルティエンス商会に行った翌日の月曜日。

月曜日から早々に修行に励み、修行五日目の金曜日にレベル3に至ったライト。

今週の土日のどちらかには転職神殿に行って、皆にマッピングの瞬間移動を披露しよう!と思っていたのだが。

その日の晩御飯の時に、レオニスから思わぬ提案を持ちかけられた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ライト、明日俺といっしょにエンデアンに行くか?」

「エンデアン? レオ兄ちゃん、エンデアンに出かける用事があるの?」

「ああ。前に話したと思うが、エンデアンのクレエとディープシーサーペントを引き合わせる約束をしていてな。そろそろ行こうと思ってるんだ」

「あー、そういやそんなこと言ってたね!」

カタポレンの家で、晩御飯をもっしゃもっしゃと食べながらライトにお出かけの誘いをするレオニス。

そのお誘いの行き先はエンデアンで、冒険者ギルドエンデアン支部の受付嬢クレエと海底神殿の守護神ディープシーサーペントを会わせる、というものだった。

「クレエさんの方から、一度デッちゃんとちゃんとお話をしたいって言ってたんだよね?」

「ああ。エンデアンとディープシーサーペントは長きに渡る因縁の関係だ。それを自分が直接出向くことで改善できるなら、と思ってのことなんだろう。あいつも冒険者ギルドエンデアン支部の一人で、責任感が強いからな」

「そっかぁ……レオ兄ちゃんが同行するとはいえ、勇気の要ることだよね」

クレエの心情を推し量るライトとレオニス。

これはクレエに限ったことではないが、クレア十二姉妹全員とも『冒険者ギルド受付嬢は己の天職である』と思っていて、各支部の顔として常に誇りを持って仕事をしている。

冒険者ギルドとは、街とそこに住む全ての人達を守る存在。

もしエンデアンで、長年悩まされてきたディープシーサーペントの襲来を解決することができるなら―――クレエは一肌でも二肌でも脱ぐだろう。

彼女達姉妹のことをよく知るレオニスだからこそ、クレエの思いをよく理解できていた。

「でも、クレエさんとデッちゃんをどこで会わせるの? エンデアンの港とか?」

「いや、街から離れた人気のない海岸で会わせる。エンデアンの港に再びディープシーサーペントが現れたとなると、また冒険者ギルドが総出で迎撃することになるからな」

「あー、そうだねー。それでまたデッちゃんが大怪我しても困るよね」

「ま、ディープシーサーペントは大怪我する前にとっとと海に帰るだろうがな」

ライトの疑問に淀みなく答えるレオニス。

確かにいつものようにエンデアンの港にディープシーサーペントが出現したら、エンデアン支部に所属する冒険者総出で迎撃に出なければならない。

その結果、ディープシーサーペントが大怪我でもしようものなら今度こそ海の女王の怒りを買ってしまう。

その怒りは大きな波となって、エンデアンの街に襲いかかるだろう。

エンデアンがこれからも存続していくためには、決して海の女王を激怒させてはならないのだ。

「じゃあ、どこかの浜辺でクレエさんに待っててもらって、そこにぼく達がデッちゃんを連れていくような感じ?」

「いや、浜辺だとディープシーサーペントが陸地に近寄れなくてダメだ。エンデアンからウスワイヤに向かう道の途中に、切り立った崖になるところがある。そこにディープシーサーペントを連れていくつもりだ」

「そっかー、そうだねー。よくよく考えたら浜辺じゃデッちゃんが近くに来れないから、クレエさんともろくにお話できなさそうだもんね」

「そゆこと」

クレエとディープシーサーペントが落ち合う場所が、どんどん決まっていく。

クレエはライトやレオニスと違い、本当に普通の人間だ。間違ってもその身一つで海底神殿に行けるなんてことは、天地がひっくり返ろうとも絶対にない。

そして、クレエを海底神殿に連れていくためだけに彼女に水の女王の加護をつけるというのも、さすがにそれは大仰過ぎて憚られる。

クレエを海の中にまでわざわざ連れていく必要などないのだ。

ならば、海と陸地が最も近い場所にクレエとディープシーサーペントを連れてくれば良い。

レオニスの言うように、エンデアンとウスワイヤを結ぶ道の途中で断崖絶壁になるところがある。

崖の高さは5メートル程度。然程高くないが、蛇龍神であるディープシーサーペントが鎌首をもたげて崖の上の人物と対峙するにはちょうどいいだろう。

「そしたら明日はどんな順番でいくの? 海の女王様に挨拶したり、デッちゃんやクレエさんを崖まで連れてったり、結構いろんなことしなきゃなんないよね?」

「そうだな。まずは俺がクレエを連れて崖まで行く。海底神殿にはライトとラウルの二人に行ってもらって、海の女王への挨拶とディープシーサーペントに同行して崖まで連れてきてもらいたい」

「え? ラウルも行くの?」

レオニスの計画の中に、ラウルの名が出てきて驚くライト。

確かにエンデアンは海産物が豊富で、ジャイアントホタテの殻処理依頼もたくさんあって、ラウルにとっては非常に魅力的な街であることは間違いない。

だが、まさかクレエとディープシーサーペントの逢瀬にまでついて来たがるとは思ってもいなかったライト。

あまりの意外性にびっくりするばかりだ。

「ああ……俺が明日エンデアンに行くって話をしたら、俺もついて行きたいから連れてってくれ!って言われてな……」

「そのままエンデアンの街に留まって、市場で買い物三昧したい!とか、殻処理依頼で稼ぎたいから、とかじゃなくて?」

「それが、どうやらそうじゃないらしい」

レオニスの話によると、ラウルは純粋に海産物の産地である海に興味があるらしい。

ラウルはもう何度もエンデアンに行くようになって、海を見る機会は増えた。だが、まだ海の中には入ったことがない。

だから今度は海の中に入って、海というものがどんな姿をしているのか見てみたい!ということのようだ。

「そうなんだ……まぁね、ラウルもカタポレンの森生まれだから、海なんて一度も入ったことないだろうし」

「水の中ってだけなら、目覚めの湖にも何度か潜ってはいるがな。でも、海と湖はまた別物だしな」

「うんうん。同じ水場であっても、海と湖って全ッ然違うからね!」

「お前、嫌に力説するね……ま、カタポレンにもラグナロッツァにも海はないから、海に興味が湧くのは分かるがな。俺だって海なしのディーノ村で育ったから、初めて海を見た時はやたら感動したもんだったし」

前世も今世も海に縁のないライト。『海と湖は別物!』と力説する。

目覚めの湖の主である水の女王が聞いたら、 拗(す) ねそうな程の力説ぶりだ。

だが、実際に海と湖はいろんな面で大きく違う。

その面積もさることながら、海水は塩辛い、住んでいる魚や貝類が違う、海には渦潮や波がある等々、すぐに思いつくだけでもいくつもの違いがある。

そうした様々な違いに、ラウルが興味を示すのも当然である。

「明日の海底神殿への移動は、アクアに頼んであってな。もちろん水の女王も『海の女王ちゃんに会いたい!』ってことで、いっしょに来る予定なんだが」

「あー……確かにアクアにも来てもらった方がいいよね、デッちゃんとの話し合いの時に、何かあったら仲裁してもらえそうだし」

レオニスは、既にアクアと水の女王に海底神殿までの移動を頼んであるらしい。

いつものようにウィカに頼むこともできるのだが、今回は海底神殿の守護神であるディープシーサーペントに会ってクレエに会わせる、というのが主目的だ。

そうなると、水の精霊であるウィカ単体で行くよりは、湖底神殿の守護神であるアクアに同席してもらった方が何かと安心だ、とレオニスは考えたのだ。

水神アクアと蛇龍神ディープシーサーペント、どちらも神殿の守護神。精霊のウィカや精霊の長である水の女王よりも格上だ。

ディープシーサーペント自身がクレエのことを好いているとは言え、蛇龍神という神殿の守護神を陸地近くまで引っ張り出すなら、同格のアクアに同席してもらった方が何かと都合が良いだろう。

するとここで、ライトがふと何かを思いついたのかレオニスに再度質問した。

「そういやクレエさんは、デッちゃんに会うために冒険者ギルドを抜け出してもいいの?」

「そこら辺は大丈夫。三日前にエンデアンに俺が行って、クレエに直接話をつけといたから」

「え、そなの?」

「ああ、だからクレエも「今週の土曜日は絶対に休暇を取ります!」って言ってたわ」

「なら安心だね!」

ライトの懸念、それは『クレエが日中に仕事を抜け出せるのか?』ということであった。

クレア十二姉妹達がいる各支部には、いつ行っても彼女達が窓口にいる。

一体いつ休んでるの?とライトは常々不思議で仕方なかったのだが、たまには休暇を取ることもあるようだ。

「じゃあ、明日は何時に行く? ていうか、ぼくとラウルはレオ兄ちゃんと別行動になるよね?」

「そうだな。とりあえず俺は朝の九時には屋敷を出る。ライト達もそれくらいの時間には出るようにしてくれ」

「分かった!じゃあ今日は早く寝るね!」

「おう、早寝早起きは大事だからな」

明日のエンデアン行きについて、だいたいの話がまとまった。

ライトとしては、今週エンデアン行きになるとは思っていなかった。

だが、ラグナロッツァにも少しづつ秋の気配が近づいてきた。エンデアンや海底神殿に行くなら、今くらいの季節が一番いいだろう。

海の女王やディープシーサーペントとの再会に、今から楽しみで仕方がないライトだった。