軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第822話 初めての挑戦

暗黒の洞窟に単身乗り込むライト。

いつもなら入口付近だけで素材集めの魔物狩りをするか、もしくは手間も時間もかけずに最短で最奥に行くために魔物除けの呪符を使うのだが。今日はたくさん素材採取したいので、呪符を使わずに最奥に向かう。

覚えたての初級光魔法『 点灯虫(テントウムシ) 』を使い、洞窟の中を照らす。

これは、レオニスが『今からでも覚えておいていい光魔法』として、ライトのためにラグナ神殿で購入してきたスクロールで得た魔法だ。

ライトはこれまでずっと『自分は果たしてこの世界の魔法を覚えられるのか?』と悩んでいた。だが、少なくとも市販品の初級魔法は覚えることができた。

これは、ライトの魂や記憶が埒外であっても、肉体はこのサイサクス世界で生まれついたものだからだろうか?

そこら辺は分からないし、ライト自身に正解を知る術もない。

だが、何はともあれこのサイサクス世界の魔法を使えるのは非常に良いことである。

初級とはいえ、暗闇の中であまり出力を上げ過ぎると眩しくていられないので、極力弱めの出力で周囲を照らす。

すると、ぽつりと光る点灯虫に群がるかのように、次々と魔物が襲いかかってきた。

一層では暗黒茸、暗黒蘭、暗黒蜂、ブラックスライムなどの、ライトもよく狩るお馴染みの雑魚魔物が出てくる。

もちろんそれらはライトの敵ではない。必中スキルを繰り出し、バンバン仕留めていく。

今回ライトが使っているのは、物理系必中スキル【手裏剣】ではなく、魔法系必中スキルの【氷水槍】である。

いつもは手裏剣で倒しているのだが、今世のステータスはカタポレンの森に住むおかげで魔力量が異常に高い。

前世ではレオニス同様、腕力至上主義だったライト。だが、せっかくサイサクス世界に生まれついたんだから、これを機に魔法も極めてみよう!という考えに至ったのである。

ちなみに【氷水槍】を繰り出すのも、手裏剣同様手を横に薙ぎ払うだけで氷の槍が出てきて、自動的に魔物を追尾する。

【氷水槍】は必中スキルなので、敵に当たるまでホーミングミサイルのようにしつこく魔物を追いかけ回す、という訳だ。

そして【氷水槍】を使うにあたり、最初のうちは魔法使いっぽくワンドを使ってみたのだが。魔物を倒した直後にアイテムリュックに収納するのにワンドが邪魔で、結局ワンドは使わずに仕舞ってしまった。

ワンドを持つより、エネルギードリンク片手にSP補充しながら戦った方が余程効率良く前へ進めるのだ。

だが、純粋に戦闘時の出力だけで見ると、ワンドを使用した時の方が威力が高いような気がするライト。ここら辺はまた後で検証してみないとなー、と考えている。

そうして小一時間ほどかけて、暗黒の洞窟の一層最奥に辿り着いたライト。

行き止まりにある転移用の円陣を見つけ、さっそくその中に入る。

今日は二層の魔物狩りにもチャレンジするつもりなのだ。

一層から二層に転移し、ここでもエネルギードリンク片手に【氷水槍】で魔物をガンガン狩りまくる。

これまでずっと、魔物除けの呪符で回避してきた二層の魔物達。

二層には暗黒蛇、シャドージャッカル、ハーミットホーク、ブラックローズがいて、ライトも初めて見る魔物達だ。そしてもちろんそれらは一層の魔物達よりも強い。

だが、それでも今のライトの敵ではない。襲いかかってくる魔物達を【氷水槍】の一撃だけで仕留めては、ヒョイヒョイー、と拾ってアイテムリュックにポイポイー、と収納していく。

そうして二層も余裕で進んでいき、最奥の行き止まりの円陣前まで到着したライト。

ここで一旦止まり、しばし考え込む。

「三層にいるのは、闇の精霊、暗黒蝙蝠、カオスゴーレム、暗黒の魔獣、だったよなー……」

「暗黒蝙蝠やカオスゴーレムはともかくとして、暗黒の魔獣がどれくらい強いのかが分からないんだよなぁ……アレ、もとはレベル1のレイドボスだったし」

「レイドボスから通常フィールドのレアモンスターに降格したとして、ステータスも弱体化してればいいけど……もしそうでなかったら……あいつ、HP80000以上あったよな?」

うーーーん……と悩ましげに唸るライト。

その間にもブラックローズや暗黒蛇などが、ライトに容赦なく襲いかかってきているのだが。ライトも容赦なく返り討ちにしては、こまめにアイテムリュックに収納している。

そうして考え込んだ結果、ライトは決めた。

「……よし、三層は飛ばして最奥に行くか!」

これまで一層と二層を難なく攻略してきたライト。だが、三層の魔物達の強さがどれ程のものなのか、まだライトは知らない。

特に暗黒の魔獣は、ライトの記憶ではBCOのレベル1レイドボスで、HPが85000ほどあったはずだ。

如何に今のライトが同年代の中では規格外の強さであっても、まともな武器もなしに暗黒の魔獣を素手で仕留めきる自信はさすがにない。

それに、ここで危険を犯して万が一にも大怪我を負うようなことになれば、レオニスやラウル、マキシに心配をかけてしまう。

よしんば回復スキルの【フルキュア】で身体の傷を治せても、アイギス特製のマントや装備品がボロボロになってしまったら、そこから今日の戦闘がバレてしまう。

BCO関連の行動は、誰にも知られず秘密裏に進めなければならない。それがバレるリスクだけは、何としても回避しなければならなかった。

洞窟内にある転移用円陣は、どの円陣からも好きな層に移動することができる。

それは闇の女王がライト達のために施してくれた措置であり、闇の勲章を持つ者だけが使える機能だ。

ライトは早速アイテムリュックから闇の勲章を取り出し、手に持って円陣に入る。

そして暗黒神殿がある最奥に瞬間移動していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

二層の転移用円陣から、最奥層に移動したライト。

広々とした空間に、ぽつりと佇む暗黒神殿。そこからノワール・メデューサのクロエが飛び出してきた。

『お兄ちゃん!いらっしゃい!』

「ンがッ」

暗黒神殿から駆け出してきて、ライトに飛びつくようにして抱きついてきたクロエ。

三週間ほど前に会ったばかりだが、その時よりもまた少し体格が大きくなっている。形の良いお胸はさらにたわわに実り、流線型の美しい腰の括れと相まって実に艶めかしい。

クロエは人族ではないが、『絶世の美女』とはまさしく彼女のためにあるような言葉だとすらライトは思う。

だが妖艶なのは外見だけで、その中身はまだまだ子供のクロエ。

目元こそ鋼鉄の包帯で覆われていて見えないが、口元はニッコニコの笑顔で何とも愛らしい。

クロエは『♪♪♪』という、非常にご機嫌な様子でライトに頬ずりする。

一方のライトは、クロエの熱烈な歓迎を受け止めるので精一杯だ。

何しろクロエの体格は既にレオニスの身長を優に超えており、地上からの高さだけでも3.5メートルを上回っている。

そんな大きなクロエを、身長150cmにも満たないライトが受け止めることは困難を極める。

だが、ここはクロエの兄として踏ん張り続ける。クロエに押し倒されて後ろに尻もちをつく―――そんな格好悪い姿を晒すなど、何が何でも絶対にあってはならないのだ。

クロエの巨体をガッツリと受け止め、何とかギリギリ踏ん張るライト。これまでに得てきた数々の称号、そのステータス補正を存分に活かしている。

だが、クロエの抱きつく力が予想以上に強い。これもBCOレイドボスの成せる技か。

ライトの体勢が次第に仰け反っていき、あと数秒で押し倒されてしまうかと思われた、その時。

クロエより遅れて暗黒神殿から出てきた、闇の女王がクロエに向かって声をかけた。

『これこれ、ココ様。ライトが潰れてしまいますよ?』

『???……ッ!!!お兄ちゃん、ごめんなさい!』

「おごッ」

闇の女王の言葉を聞き、我に返ったクロエが慌ててライトの身体から身を離す。

その反動で、ライトは勢い余って今度こそ尻もちをついてしまった。

だが、クロエの熱い抱擁は全て受け止めきった。そのことにライトは内心で満足している。

膝をつくように蛇腹を折り、慌ててライトに改めて手を添えるクロエ。

今度は力が抜けた優しい添え方で、ライトの身体を支えようとしている。

兄と慕うライトに出会えた喜びの笑顔が一転し、オロオロとした様子のクロエに、ライトが優しい声で語りかける。

「だ、大丈夫だよ、ココちゃん。久しぶりだね」

『う、うん……お兄ちゃんに久しぶりに会えて、つい嬉しくなっちゃって……ごめんね、お兄ちゃん』

「ぼくなら大丈夫!だってぼくは、ココちゃんのお兄ちゃんなんだから!」

『!!……うん、お兄ちゃん、大好き!』

苦しい思いをさせたであろうに、怒ることなく笑顔で 妹(クロエ) を許す 兄(ライト) 。

心の広い兄の優しさに、クロエの顔にも再び笑顔が戻る。

そんな兄妹の仲睦まじい様子を見ながら、闇の女王もまた微笑みつつライトに声をかける。

『ライト、よく来たの。今日は一人か?』

「あ、はい。今日はレオ兄ちゃんは用事がありまして。ぼく一人で来ました」

『そうか。それにしても、ここに来るまでにかなり暴れたようだの?』

「そ、それは……す、すみません……」

闇の女王の言葉に、ライトは思わず恐縮する。

暗黒の洞窟は闇の女王の領域。この洞窟の中で起きていることを、闇の女王は全て把握しているのだ。

『良い良い、気にするな。あれらはこの最奥の暗黒神殿を目指す者を、一時的にでも阻み足止めするためのもの。際限なく涌き出ては、外部からの侵入者に容赦なく襲いかかる。力無き者は、一層すら踏破できぬのだ。それに、例え力ある者でも吾が認めなければ、決してここに立ち入ることはできぬしな』

「ありがとうございます」

闇の女王が理解を示してくれたことに、ライトは心底安堵する。

ここは他の無名の洞窟と違い、『暗黒の洞窟』という名有りの洞窟。しかも闇の女王という主が存在しており、そこで魔物狩りをすることは荒らし行為と捉えられかねないのだ。

だが、闇の女王は洞窟内での魔物狩りに対して、特に思うところはないようだ。それは、魔物達が際限なく涌く存在だかららしい。

『ささ、ここで立ち話も何だ、ココ様とともに茶会でもしようぞ』

「はい!」

『お兄ちゃんとお茶会? やったー♪』

「ココちゃんもお手伝いしてね!」

『うん!』

ここでも恒例となりつつあるお茶会。闇の女王自ら所望しているとあつては、ライトもその願いに応えなければならない。

三人は暗黒神殿の庭園にあるテーブルに移動し、早速お茶会の準備を始めていった。