軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第819話 週末の予定

ライトのラグーン学園二学期が始まり、しばらくは平穏な日々が続く。

ライトは日々ラグーン学園に通うようになったし、レオニスも主にカタポレンの森の警邏や魔石生成の魔法陣を増やしたりするなど、のんびりと過ごしている。

ライトの夏休みに合わせてあちこち出かけまくったので、ここらで少し長めの休憩しても罰は当たるまい。

そうして平穏に過ごすうちに迎えた初めての週末、土日に入る前の金曜日の夜のこと。

ライトはラグナロッツァの屋敷で、レオニスやラウル、マキシとともに晩御飯を食べながら話をしていた。

「レオ兄ちゃんとラウルは、明日の夜は遅くなるんだよね?」

「おう、明日は冒険者仲間達がラウルの歓迎会をしてくれるって話になってるからな」

「ラウル、歓迎会を開いてもらえるなんて良かったね!」

「ああ。俺のような新人にまで歓迎会を設けてくれるなんて、本当にありがたいと思う」

ラウル特製の美味しいご飯を食べながら、明日の予定について話し合うライト達。

そう、明日の夜はレオニス達が以前から話していた『ラウルの冒険者登録祝いの歓迎会』が開かれるのだ。

ちなみに今日は八月三十一日で、明日は九月一日。

九月になったら歓迎会をするか!なんて話をレオニス達がしていたのは、ライトも知ってはいたが。まさか九月になってすぐ、いの一番に開催されるとは、せっかちもいいところである。

だがこれには、実はちょっとした事情がある。

レオニスがラグナロッツァの街を歩く度に、すれ違う他の冒険者達に「おーい、レオニス、歓迎会はいつだー!?」と頻繁に問われるのだ。

さっさと歓迎会を開催しなければ、この問答はいつまで経っても終わらない。ならばとっとと開かねば!という訳である。

「そしたら明日の晩御飯は、ぼくとマキシ君の二人だけでお留守番だねー」

「そうですねー。そしたらフォルちゃんやウィカといっしょに、このお屋敷でのんびり過ごしましょうかー」

「あー、それいいね!夕方になったらウィカも呼ぼう!」

「フィィィィ?」

テーブルの上で、ライト達とともに食事をしていたフォル。

己の名を呼ばれたことに反応して、小首を傾げている。

相変わらず愛らしいフォルの仕草に癒やされつつ、ライトはレオニスに釘を刺す。

「レオ兄ちゃん、明日は間違って強いお酒飲まないでねー?」

「大丈夫だ、あんなもんそうそう間違えないし。それにもし万が一また俺が潰れちまっても、明日はラウルやグライフもいるしな!」

「グライフも歓迎会に参加してくれるんだ?」

「おう、しかも明日の歓迎会はグライフが幹事だ。あいつは『枠被りの 大蛇(おろち) 』なんて二つ名がつくくらい酒に強いんだ。間違ってもあいつが酒に酔って潰れるなんてことは絶対にないし」

「あー、だから前にも潰れたレオ兄ちゃんをグライフが運んできてくれたんだね……」

レオニスの話によると、ラウルの歓迎会の話を聞きつけたグライフが自ら幹事を買って出てくれたという。

かつてグライフも、数年ぶりに冒険者に復帰した時に仲間達に復帰祝いをしてもらい、温かく迎え入れてもらったという経緯がある。

自分も温かく迎え入れてもらったのだから、新たに冒険者の世界に入ってきた 新人(ラウル) にもその手を差し伸べたくなったのだろう。

先輩から後輩に送る心温まるエールはそうして連綿と続き、次代に受け継がれていくのだ。

「ラウルも、冒険者の先輩さん達に仲良くしてもらえるといいね!」

「そうだな。今のところラグナロッツァの総本部内で変に絡まれたりしたことはないし、何だかんだ恵まれているとは思う。これもご主人様のおかげかな」

ライトの励ましに、ラウルが『これもレオニスのおかげ』と言うではないか。

レオニスのことは、呼び方こそ『ご主人様』なんて呼んではいるラウルだが、その割には敬ったり恭しく従うようなことなどほとんどない。

ラウルにしてはかなり珍しいことに、レオニスが驚いたような顔でラウルに声をかける。

「おお、ラウル、お前にしちゃ珍しく殊勝なこと言ってくれるじゃねぇか」

「まぁな。冒険者界隈でご主人様のことを知らないモグリなんて、マジで一人もいないもんな。いくら人族の世俗に疎い俺でも、冒険者ギルドに出入りするようになってからはそのことが身に沁みて理解できたわ」

「そうかそうか、そりゃ良いことだな!」

「ただし、如何に最強のご主人様であっても、受付嬢の姉ちゃん達には勝てんことも分かったがな」

「うぐッ」

ラウルに本当に認められたことを知ったレオニス、ご機嫌そうな笑顔になる。

だがその直後、クレア十二姉妹には全く勝てないことをツッコまれて、即効で撃沈してしまうレオニス。

持ち上げてから落とすラウルも大概酷いものだ。だが、レオニスがクレア達に勝てないのは紛れもない事実なので、反論の余地は一切ないのである。

「くッそー、そんなところまで知らんでもいいのに……」

「それは仕方ないよ、冒険者になったらいずれは知ることだしさ」

「何ッ!? ライトまでそんなこと思ってたのかッ!?」

「えー? だってー、レオ兄ちゃんがクレアさん達に勝てた試しあるの?」

「うぐッ」

ラウルの言い分にレオニスがぼやくも、今度はライトにツッコまれて再び撃沈するレオニス。

そう、ライトの前でも散々クレア達に『寝言は寝て言え』とレオニスは言われ続けてきた。その度にレオニスが撃沈するのをずっと見てきたライト、何なら『この世で一番最強なのはクレア説』を唱えてもいいくらいだ、と思っている。

「くッそー、俺だってなぁ、本気を出せばクレアにだって勝てるんたぞ?」

「レオ兄ちゃん、できないことは言わないの。それに、クレアさん達が最強の受付嬢なのは本当のことだし。何てったってクレアさんは『サイサクス大陸全ギルド受付嬢コンテスト』の殿堂入りしてるくらいなんだからさ!」

「その話なぁ、何度聞いても信じられんのだが……それ、ホントにホントのことなのか?」

クレア大好きっ子のライトが、手放しでクレアを絶賛する。

だがレオニスにしてみれば、ライトの言う『受付嬢コンテストの殿堂入り』がどーーーしても信じられないらしい。

まぁ、そのコンテストが一体どのようなシステムで、どういった審査をしているのか全く分からないので、レオニスが疑うのもある意味仕方のないことかもしれない。

だがしかし、疑われる方にしてみたら心外だ。本人が誇りに思っていることを疑うということは、それ即ち『お前、嘘ついてんじゃね?』と言っているも同然なのだから。

ライトはそれを懸念して、レオニスに再び釘を刺す。

「レオ兄ちゃん……それ、クレアさん達の前では言わない方がいいよ……ていうか、クレアさんがそんな嘘つく訳ないじゃん? だから絶対にホントにホントのことだって」

「ぃゃ、もう既に本人に聞いたことがある……もちろんクレアからは『寝言は寝て言え』と言われたがな……」

「え、もうクレアさん本人に言っちゃったの? レオ兄ちゃん、それダメなやつだってば」

「ああ、おかげで危うくクレア主催の『冒険者のイロハ講座』に一週間ほど連れ去られるところだったわ……」

レオニスの答えに、ライトが呆れ返る。

ライトの懸念と釘刺しは、もはや手遅れだったようだ。

レオニスの減らず口も大概酷いが、これはもう一生治らないやつであろう。その都度クレアに締め上げられても一向に懲りないのだから、どうしようもない。

ライトははぁ……と小さなため息をつきつつ、ラウルの方に向き直る。

「ラウル、レオ兄ちゃんが粗相しないように、近くでちゃんと見ていてあげてね?」

「おう、任せとけ。つーか、グライフもいるなら大丈夫だろ」

「そうだね、グライフにもよろしく言っといてね!」

「ああ、ライトもマキシやフォル達といっしょに留守番しててな」

「うん!」

ラウルにレオニスのお子守を頼み込むライト。ラウルはその歓迎会の主賓であり、主役だというのに。

歓迎会の主役にこんなことを頼むのもどうかとは思うのだが、如何せん心配なのだからしょうがない。

未だにブチブチと小声で文句を言っているレオニスを他所に、ラグナロッツァの夜は穏やかに更けていった。