軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第818話 向日葵亭での再会

皆で向日葵亭の美味しい昼食を食べるライト達。

向日葵亭のメニューはいつもどれも美味しいが、大勢の友達とともに食べるとまた格別に美味しく感じる。

そうして全員が完食してすぐに、女将が見計らったように食後のドリンクを持ってきてくれた。

「はーい、食後のドリンクよー」

「わーい!おばさん、ありがとう!」

「どういたしましてー」

「じゃあ、私はお皿を下ろしてくるね!」

「リリィちゃん、頑張ってねー」

リリィも母親との約束通り、皆のお皿をお盆にまとめて厨房に持っていく。

その間に、女将がライト達に話しかけた。

「皆、まだここでお話したりお土産交換したりするんでしょう?」

「はい、そのつもりです」

「そしたら奥のリリィの部屋に行くといいわ。ここはまだお客さんの出入りもあるし、騒がしい大人達の中じゃゆっくりお話もできないでしょ?」

「そうね、おばちゃん達のお仕事の邪魔しちゃ悪いし。じゃあ、皆でリリィちゃんのお部屋に行きましょ!」

女将の提案にイヴリン他皆が納得し、リリィが戻るのを待つ。

そしてリリィが帰ってきたところで、イヴリンが先程の女将の提案を伝えた。

「リリィちゃん、おばちゃんがリリィちゃんの部屋でゆっくりしていきなさいってー」

「あー、そうだねー。そしたら皆でドリンク持って移動しよっか!」

「「「賛成ー!」」」

話がまとまったところで、皆で席を立つ。

その瞬間、何故かライトの背筋に強烈な悪寒が走った。

「…………ッ!!!」

夏の真昼なのに、全身が粟立ち震えが止まらない。

ライトは震える身体を必死に抑えながら、つい最近も同じようなことがあったことを頭の中で思い出していた。

ライトが後ろを振り返ろうとした直前。ライトの前にいたリリィが、明るい声で背後の人物に向けて話しかけた。

「あッ、ねむちゃまだー!」

ライトの背後に立っていたのは、レオニスが『大陸一の剣豪』と評した眠狂七郎その人であった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

眠の姿を見たリリィが、眠のもとに駆けていく。

リリィの嬉しそうな声と、パタパタという軽い足音にライトは我に返り、やっと後ろを振り向くことができた。

するとそこには、リリィの言った通り眠がいた。

若干眠たそうな声で、眠がリリィの呼び声に応える。

「おや、リリぷっぷではないですか……おはようございます……」

「ねむちゃま、もうお昼だよー。だから『おはよー』じゃなくて『おそよー』だよー?」

「ふゎぁぁぁぁ……リリぷっぷ、死刑」

眠たそうに寝ぼけ 眼(まなこ) を擦り、その手で口を抑えながら大きな欠伸をする眠。その仕草は、まるで本当に先程起きたばかりかのようだ。

しかもその出で立ちが、これまた異様だった。

彼のデフォルト衣装であろう黒い着物に黒い羽織に、三角錐の白いポンポン付きナイトキャップを被っているのだ。

これは絶対に、間違いなく、完全に、寝起き直後の姿である。

しかし、半分くらい寝ぼけているはずなのに、何故か『死刑』のところだけはリリィに向かってビシッ!と二本の人差し指を向けながら宣告している眠。これもまた眠らしさの一つ、なのであろうか。

そんな眠に、リリィはぷくー、と頬を膨らませながら抗議する。

「あー!ねむちゃま、またリリィのことを『リリぷっぷ』って呼んだー!」

「それは仕方ないでしょう。だって貴女は『リリぷっぷ』なのですから」

「違ーう!それじゃ太ってるみたいでイヤー!もっと可愛い呼び方がいいのー!」

「我儘娘ですねぇ……では『リリぺっぺ』で」

「何かツバ飛ばしてるみたいでもっとイヤーーー!」

「なら『リリぷっぷ』の方がいいということですね。では『リリぷっぷ』で決まりで」

「ぬぅーーーん……」

眠に『リリぷっぷ』と呼ばれたリリィが抗議するも、今度は『リリぺっぺ』と呼ばれてもっとキャンキャンと騒ぐ。

しかしライトに言わせれば、眠に面と向かって彼のつけた愛称に抗議できるだけでもすごいことだ。

先日のライトなど、眠から『ライぴっぴ』と呼ばれた時には完全に声を失ってしまって、抗議するどころではなかったというのに。

リリィちゃん、あのねむちゃまに文句言えるとか、ホントすごい……もしかして、リリィちゃんって実はかなりの大物?

ライトがそんなことを考えながら二人を見ていると、眠もライトの存在に気づき声をかけた。

「おや、ライぴっぴもいるではないですか。こんにちは」

「……ぁ、はい、こんにちは!」

「ライぴっぴは、どうしてここに? もしかして、あちしを探して来たのですか?」

未だ眠たそうな感じの眠だが、レオニスとともにいたライトのことはすぐに思い出せたようだ。

しかし、半分しか開いていない目の奥にギラリとした鋭い光が宿る。

ライトが己の目の前に現れたことに対し、何かしらの警戒心を抱いているようだ。

眠から滲み出る圧に、ライトは内心でビビりながらも努めて平静を装い、彼の問いかけに答える。

「あ、いえ、リリィちゃんはぼくの同級生でして。今日からラグーン学園の二学期が始まって、初日は半日で帰るのでお昼をここで皆で食べようって話になったんです!」

「……そうでしたか。ライぴっぴとリリぷっぷは学友だったのですね」

「はい。リリィちゃんとぼくは同じ組で、いつも仲良くしてもらってるんです」

ライトの解説に、眠の眼差しが柔らかいものになる。

ライトとリリィが仲良しの同級生だということを知り、警戒心を解いたようだ。

眠の圧など全く感知できないリリィが、二人の顔を交互に見ながら不思議そうに問うた。

「えー、何ナニー? ライト君とねむちゃまって、知り合いだったの?」

「ぁ、えーとね、眠さn」

「ねむちゃま」

「ぅぐッ……ね、ねむちゃまは、レオ兄ちゃんのお友達なんだ。この間、たまたまジョージ商会にいたところにバッタリと会って、その時にぼくも居合わせてたんだ」

「そうなんだー」

眠のことをそのまま名字呼びしようとして、即効で眠に訂正を食らうライト。

容赦ないツッコミにライトも一瞬言葉が詰まりながらも、何とか言い直してリリィに顔見知りの理由を説明していく。

その間眠は、女将に向かって「女将、今日のあちしの 朝ご飯(・・・) は、天ざるでよろぴこ」と食事の要望を伝えている。

女将は女将で「はーい、今日のねむちゃまの お昼ご飯(・・・・) は天ざる一丁ねー」と返し、女将もまた眠から「女将、死刑」と死刑宣告をされていた。

「ったく……ここの母娘は、揃いも揃ってあちしの言うことを素直に聞きませんね」

「だってー。ねむちゃまの言うことを全部聞いてたら、絶対におかしなことになっちゃうもん!」

「リリぷっぷ、死刑。というか、人間素直が一番ですよ?」

「うん、リリィはいつでも素直だよー!」

リリィ母娘に対してブチブチと文句を言う眠に、リリィも負けじと言い返す。

リリィも眠から常に死刑宣告されるくらいには、眠と仲良しのようだ。

このリリィという女の子、やはり大物かもしれない。

突如現れた変な大人に向かって、堂々と渡り合うリリィ。

一方眠のことを全く知らないイヴリンやジョゼ、ハリエットは、その異様なやり取りにただただ固まるばかりだ。

だが、リリィの底知れぬ胆力と度胸ある姿に、ライトを含むイヴリン達は次第に感動を覚え始める。

「リリィちゃんって、ホントにすごいわよね……」

「うん……向日葵亭って人気の宿屋だからいろんな人が泊まってて、リリィちゃんもいろいろ慣れてるんだろうね……」

「私には、とても立ち向かえませんわ……」

「ぼくも立ち向かうのは無理……」

ライト達がゴニョゴニョと小声で話す中、女将が早々に眠の注文品である天ざるを持ってきた。

「はーい、ねむちゃまの注文品の出来上がりよー」

「おお、早いですね。では早速いただきましょう」

眠は一番手近にあったテーブルに着き、女将もそのテーブルに天ざるを置いた。

眠は合掌した両手で箸を持ち、ペコリと一礼してから改めてライト達の方に顔を向けた。

「あちしは今から食事です。リリぷっぷやライぴっぴ達は、お外で遊ぶなり勉強するなりしてらっしゃい」

「そうだねー。皆、リリィのお部屋に行こー!」

「「「「うん!」」」」

眠とリリィの言葉に、ライト達も頷きながらリリィの部屋に移動していく。

去りゆくリリィが眠に「ねむちゃま、またねー!」と笑顔で声をかけ、眠もまた天ざるをもっしゃもっしゃと頬張りながら、左手をひらひらとさせてリリィに応えていた。