軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第795話 それぞれに手伝えること

その日の晩御飯も、ラグナロッツァの屋敷で食べたライトとレオニス。

八咫烏の里からの留学生?がいる間は、その日の出来事を振り返って話し合ったり、翌日の予定を決めたりなどするためである。

食事を済ませた後ライト達は広間に移動し、ゆったりと寛ぎながら食後のお茶を飲んでいた。

「今日は何というか、とっても濃いぃ一日だった……でも、楽しかった!」

「だなぁ……ま、濃いぃと感じるのは主にねむちゃまのせいなんだが」

「全くだ……ライトや俺にまで、名前に『ぴっぴ』がつくことになるとはな……でもまぁ、俺も久しぶりにガーディナー組の皆に会えて良かったよ」

「皆お疲れさまです。兄様方の案内をしてくださり、本当にありがとうございます!」

今日一日を振り返り、疲れた中にも楽しかったことや良かったことなどを話すライト達。

マキシだけは今日もアイギスで仕事していて、ライト達と行動をともにできていない。だが、兄達を観光案内?してくれたライト達に感謝を示しつつ、フギン達にもその感想を問う。

「兄様方も、一日中人里を見て回ってどうでしたか?」

「人の数、物の量、街に満ち溢れる活気……全てが我等の想像のはるか上をいく規模で、驚かされてばかりだ」

「どこを見ても八咫烏の里にはないものばかりで、全く飽きることがないな!」

晩御飯に出された唐揚げを、もっしゃもっしゃと頬張りたらふく食べたフギンとレイヴン。

いつにも増してまん丸体型な二羽には、ライト達のような疲れなど全くないようだ。

「肝心な人族の観察もできてますか?」

「もちろんだとも!我等は一日も早く、人化の術を会得すると決めたのだ!なぁ、レイヴン!」

「はい!俺もミサキに負けてはいられん!」

「兄様方、すごい意気込みですね……何かあったんですか?」

兄達の奮起に驚くマキシ。

実際のところ、今のところ人化に最も熱心に励んでいるのはミサキであり、その熱意は他の八咫烏達の追随を許さないところがあった。

だが、今のフギンとレイヴンは『ミサキにだって負けないぞ!』という気概に満ちている。

その理由である今日の出来事、【Love the Palen】で入店をお断りされたことなどの一連の経緯を切々と語るフギン。

それを聞いたマキシは、納得しながら兄達に語りかける。

「あー……確かにそれは、入店拒否されても仕方ないですね……人族は特に飲食店―――ものを食べたり飲んだりするところでは、衛生面の問題をかなり気にすることが多いですから」

「衛生面、か……我等のような野に生きる者には、全く無縁の慣習だが……人里で何かを学ぼうと思ったら、人里の慣習を無視する訳にもいかないしな」

「ですね。皆で人化できるようになれば、鳥の姿のままでは立ち入ることのできない場所にも行けるようになりますし」

兄達の前向きな姿勢に、マキシは笑顔で励ましの言葉をかける。

「そしたら兄様、今から僕の部屋で人化の術の練習をしませんか?」

「……いいのか? お前だって、一日働いて疲れているだろうに」

「大丈夫です!僕だって、慣れない人里で頑張る兄様方の力になりたいんです!」

「そういやマキシは、一日中ずっと人化していられるんだもんな? マキシに人化の術のコツを教えてもらえば、俺達も早く会得できるかも!」

「そうだな……確かにそれが最も近道ではあるな……」

マキシの申し出に、驚きながらもマキシを気遣うフギンとノリノリのレイヴン。

今のところ、寝る時にはマキシも八咫烏の姿に戻る。だが日中や人前など、起きている間はずっと人化の姿を保つことができている。

人里でその正体を知られることなく活動するには、人の姿に長時間化けていられることが必須条件。そしてその条件をマキシは既にクリアしている。

人化の術に関しては一日の長があるマキシに、そのコツを伝授してもらうことは最も合理的であった。

「じゃあ、フギン兄様もレイヴン兄様も、早速僕の部屋に行きましょう!」

「相わかった。レオニス殿、ライト殿、ラウル殿、我等はこれにて失礼いたします」

「おう、お疲れさまー」

「フギンさん、レイヴンさん、人化の術の練習頑張ってくださいね!」

「マキシも先生頑張れよ、おやすみ」

早速自分の部屋に行こうと促すマキシに、フギンがライト達に退出の挨拶をする。

ライトに励まされた八咫烏兄弟は元気よく「はい!」と気合いの入った返事をし、ラウルに先生と呼ばれたマキシは「え、僕が先生!?」とびっくりしている。

文鳥サイズに変身したフギンとレイヴンが、マキシの左右の肩に一羽づつ留まる。

二羽の兄達を肩に乗せたマキシは、照れ臭そうにしながらもいそいそと広間の入口に向かっていく。

そして扉を開きながら、ライト達のいる方に振り返った。

「皆さん、おやすみなさい!」

「「「おやすみー」」」

仲睦まじく広間を出ていくマキシ達の後ろ姿を、ライト達は微笑みながら見守っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

マキシ達が広間を出ていった後、しばしの間静かな空気が広がる。

夜の静けさを最初に破ったのは、レオニスだった。

「……さて、明日はどこに行こうか」

「どこがいいかなぁ? 今まで出かけた場所以外で、ぼくがラグナロッツァで知ってるところって、ラグーン学園とか翼竜牧場、スライム飼育場くらいしかないし」

「ンー、どれも人化の術の参考にはならんだろ……」

「だよねぇ……ラウルはどこかいい場所知ってる?」

「俺がいつも行くのなんて、ヨンマルシェ市場くらいしかないぞ?」

「だよねぇー……」

明日の行き先をどこにするか、懸命に話し合うライト達。

お出かけの第一義はフギンとレイヴンの人族観察なので、なるべく人がたくさんいる場所が好ましい。

市場は今日サラッとではあるが通ったし、数多のむさ苦しい男達が集う冒険者ギルド総本部にも行った。

同じ場所に行って何度も繰り返し観察させてやるのもいいが、それではライト達がつまらない。どうせなら、全部違う場所に案内してやりたい、と思う。

うんうんと唸りつつ悩むライト達。

ここでふとライトがレオニスに問うた。

「ねぇ、レオ兄ちゃん、ラグナロッツァに剣術道場はないの?」

「剣術道場?」

「うん。ムニンさんとトリスさんの時には、ホドのヴァイキング道場を見せてあげたでしょ? フギンさんとレイヴンさんにも、道場を見せてあげられたらいいんじゃないかな、と思ってさ」

「あー……うん、そうだなぁ……確かに剣術道場なら、男が多くてフギン達の参考になるだろうなぁ……」

ライトの提案に、同意しつつもあまり乗り気そうではないレオニス。

提案自体は良いものの、レオニス的には何かが引っかかるらしい。

意外にも乗り気そうではないレオニスに、ライトが不思議そうに尋ねる。

「もしかして、ラグナロッツァには剣術道場ってないの?」

「いや、あるぞ」

「だよね? 首都なのに剣術道場が一つもない、なんてことないよね?」

「ああ、一応あるにはある。だが、ちぃとばかし問題があってな……」

レオニスが難しい顔をしながら、問題点を語る。

レオニスの話によると、ラグナロッツァにある剣術道場は一ヶ所のみ。

その名も『ラグナロッツァ剣術道場』という名で、流派の名もそのまんま『ラグナロッツァ流』。

そして道場は、何とラグナ宮殿の敷地内にあるのだという。

「えええ……何でラグナ宮殿なんかに道場があるの?」

「道場ってのは名ばかりというか、実質的には宮殿に仕える騎士団員養成所みたいなもんなんだよな」

「ぁぁー……そゆこと……」

レオニスの解説に、ライトが脱力しながら得心する。

ライトがホドで見たヴァイキング道場は『街の道場』という感じだった。

ヴァイキング流剣術を習うことで、将来は騎士を目指す若者達もいたが、それ以外の騎士を目指さない普通の者達も多くいた。

だが、ラグナロッツァ流剣術はそうではないらしい。

「ラグナロッツァ道場に通うのは貴族の子息ばかりだし、その就職先はほぼほぼラグナ宮殿関連の騎士団なんだ。行き先は近衛騎士団とか第一騎士団から第五騎士団まで、様々あるらしいが」

「それはまた……レオ兄ちゃんとはあまり相性良くなさそうだね……」

「俺は別にあいつらのことは何とも思っちゃいねぇが、向こうはどうだか分からん。何しろ宮殿の騎士団とは、ほとんど関わりがないんでな」

ホドのヴァイキング道場とは懇意だったレオニスが、何故ラグナロッツァ道場とは縁が薄いのか、完全に理解したライト。

ラグナロッツァ道場は、門下生全員が貴族の子息。基本的に貴族嫌いなレオニスが、積極的に関わろうと思うはずがなかった。

「じゃあ、剣術道場はダメだねー」

「ああ、できれば他のところがいいな」

「……そしたら、オーガの里にでも遊びに行く?」

「オーガの里か……それもいいかもな」

「でしょ?」

剣術道場は一旦諦めて、別方向に転換したライト。次の案にオーガの里を挙げた。

その案を聞いたレオニス、先程と違い今度は肯定的な口調で同意する。

「人族観察ではないけど、身体の大きさとか角とか肌の色を除けば、オーガの見た目は人族に近いし。何よりフギンさんが異種族交流に積極的だからね」

「そうだな。フギンが将来ウルスの後を継いで八咫烏一族の族長となるなら、次期族長としてラキ達と交流しておくのは良いことだよな」

「うん。フギンさんとラキさんが今のうちから仲良くなれたら、絶対に両方の里にとって良いよね!」

ライト達は、フギンが異種族交流に意欲的であることを知っている。それは、昨日のナヌス族との交流から得た学びであった。

ならば、ナヌス族以外の異種族を紹介してあげることはフギンのためになるはずだ、とライトは考えたのだ。

オーガ族と人族だって仲良くなれたのだ、理知的な八咫烏族だってオーガ族とも仲良くなれるに違いない。

オーガ族と八咫烏族、両方を知る人族が彼らの友好の架け橋になれれば、ライトとレオニスにとってもこれ程嬉しいことはない。

「よし、そしたら明日はオーガの里に行くか」

「うん!」

ようやく明日の行き先の一つが決まった瞬間だった。