軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第790話 忘れ得ぬ者との再会

ライト達が冒険者ギルド総本部の大広間で、多数の冒険者達と楽しく会話しながら過ごすこと約一時間半。

ようやくレオニスが大広間に戻ってきた。

レオニスを見つけたライトは、早速駆け寄っていく。

「レオ兄ちゃん、おかえり!」

「ぁー……えれぇ目に遭ったわ……」

「どうしたの? 結構時間かかってたけど、何かあったの?」

「ぃゃ、何でもない……」

右手をこめかみに当てながら、まだ少しクラクラする頭を軽く振るレオニス。

ギルドマスター執務室で何が起きたか、レオニスは言及しないもののかなりダメージが残っているようだ。

世界最強冒険者と謳われるレオニスに、ここまでダメージを負わせられるのは世界広しと言えどマスターパレンを置いて他にはいないだろう。

「だいぶ待たせちまったな」

「ううん、大丈夫だよー。先輩冒険者の皆さんが、いろんなお話をしてくれてすっごく楽しかったし」

「そうか。お前ら、ありがとうな」

思った以上にギルドマスター執務室での面談時間がかかってしまったことを謝るレオニス。

だが、その間冒険者仲間達がライトやラウルを構ってくれていたことを知り、レオニスが近くにいた冒険者仲間達に礼を言った。

「いいってことよ!」

「そうそう、坊っちゃん達は未来の有望な後輩だからな!」

「将来有望株な坊っちゃん達と仲良くしておくことは、俺達のためにもなるしな!」

「「「なーーー!」」」

臆面もなく『自分達の利益になる!』と宣う冒険者仲間達。

だがそれは彼らの真意ではなく、本当のところは単なる世話好きでお人好しなだけだったりする。

照れ隠しのためにちょっぴり悪ぶるあたりが、何とも強面冒険者達らしい。

「じゃ、俺達もぼちぼち行くわ」

「おう、お前らも頑張れよー」

「新人兄ちゃんの歓迎会、日にちが決まったら教えてくれよー」

「おう、ちゃんとクレナに伝えとくわ」

「坊っちゃん、ラウルの兄ちゃん、またなー!」

「はーい!」

「またなー」

ライトの保護者が帰ってきたことで、自分達も請け負った依頼をこなすべく冒険者ギルド総本部を出ていく冒険者仲間達。

子供のライトや新人のラウルが迷ったり不安にならないよう、最後まで付き添ってくれる非常に面倒見の良い者達ばかりである。

その後ライト達も、次の目的地に向かうべく総本部を後にした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さっきのあの建物の中にいた人達。人当たりが良くて優しい者達ばかりだったな」

「ですねー。俺やフギン兄様のことも、普通のちっこい文鳥だと思って撫でたり頬擦りしてくれましたもんねー」

「三本足を気取られぬよう、真ん中の足を隠すのに少々苦労したがな」

「早いとこ俺らも人化の術を会得したいっすね!そしたら、わざわざ足を隠すなんてことしなくてもよくなるし」

「全くだ。そのためにも、人族観察により一層励まなくてはな!」

ライト達とともにいた八咫烏兄弟が、先程まで触れ合っていた冒険者仲間達のことを語る。

背中や翼を撫でられるだけならともかく、むさ苦しい男達に頬擦りされていたとはご愁傷さまである。

とはいえ、フギン達にはまだ人族の美醜が分からないので、強面の冒険者達に囲まれても特に何も感じないのだが。

そんな話をしながらライト達が次に向かうは、東の塔の近くに建設中のラグナロッツァ孤児院。

東の塔は文字通りラグナロッツァの最東部にあるので、中心部に近い貴族街や冒険者ギルド総本部からはかなり離れた場所にある。

だが今日はフギンとレイヴンというゲストがいるので、のんびりと歩いていくことにする。時間を惜しんで急いで移動するよりも、フギン達の目により多くの人間の姿を見て観察させてやりたいからだ。

少し迂回して、ヨンマルシェ市場を通りながら東の塔に向かうライト達。

そこはラウルがよく通う食品系エリアではなくて、武器防具職人が集う『その他エリア』である。

唯一よく通うペレ鍛冶屋以外の店には、とんと縁がないエリア。せっかくだから、この機会によく見ておこう!とライトは内心で考える。

剣、刀、槍、杖、弓、斧、鎌、鎚、暗器、様々な武具屋が立ち並ぶ。

その向かいには、革、木、布、青銅、鉄、ミスリルなど素材別の防具屋が所狭しと並んでいる。

やはりこのサイサクス世界では、種類別と素材別で武器防具屋が存在しているようだ。

「ねぇねぇ、レオ兄ちゃん。ラグナロッツァの武器防具屋って、レオ兄ちゃんから見てどうなの?」

「ンー、ここら辺で売ってるのは中級者から上級者向けってところかな。もっと腕が上がって階級も上がって、さらには金も貯まったらファングの街で良い武器を買うってのが一般的な考え方だな」

「中級者向けってことは、初心者向けはどこで買えばいいの?」

「初心者向けなら、ジョージ商会に行けば間違いない。あすこは初心者から中級者、そして上級者でもそこそこ満足させられる品揃えがある」

「そうなんだねー。今度またジョージ商会をよく見てこよっと」

レオニスの話では、やはり武器防具は職人の街ファングで作られたものが最上級とされるようだ。

ライトは腰につけたホルダーに入れてあるワンドに手を触れながら、ありがたいと思う。

子供用のものとはいえ、それは冒険者達が憧れるファングの街の有名工房でオーダーメイドした逸品だ。しかも持ち込んだ材料は神樹ユグドラツィの枝という極上の素材。

極上の素材に極上の職人の手で作られた品。まだ冒険者登録もできない自分には、過分な品物であることを改めて実感していた。

市場では特に何を買ったり寄り道したりすることなく、歩き続けるライト達。

次第に店や建物が少なくなり、民家も疎らになっていく。

そうしてまるで広い公園かと思うくらい、周囲に何もなくなってきた頃。はるか遠目からでも、それは見えてきた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

都市を囲む外壁の中に、さらに高く聳え立つ東の塔。

そしてその東の塔より手前にある、建設中の何か。

それこそが、レオニスがガーディナー組に発注した新ラグナロッツァ孤児院である。

「あっ、レオ兄ちゃん、あれがラグナロッツァ孤児院の新しい建物?」

「だな。簡単な柵も見えるが、あれがラグナロッツァ孤児院の敷地ってことだろう」

「かなり広くて良いね!」

「ああ、これなら子供達も思う存分外で走り回れるだろう」

歩を進めるにつれ、だんだん近づいてくる新ラグナロッツァ孤児院。

ちゃんとした門扉や壁などはまた後日できるのだろうが、既に作られている柵もあり、ぱっと見た感じではかなり広く見える。

その広さは、現代日本で言うところの田舎の小中学校の校庭くらいは優にあるだろう。

これだけ広ければ、野球でもサッカーでもラグビーでも、何でもできそうだ。もっとも、このサイサクス世界に野球やサッカー、ラグビーが存在するかどうかは定かではないが。

そして、本命の建物に近づいていくライト達。

絶賛建設中と思しき建物の周囲には、山積みの煉瓦とともにたくさんの作業員が忙しなく動いている。

建物自体は、一階部分を作り終えるかどうかといったところか。

ちなみにレオニスが設計段階で依頼したのは三階建てなので、全体の約三分の一くらい進んでいる、と思えば良さそうだ。

誰に声をかければいいかなー、と思いつつレオニスが周囲を見回してみると、黄色い地に緑の線と十字、そして『安全第一』という文字がデカデカと書かれたヘルメットを被った人物がいるのが見えた。

それは、ラグナロッツァのレオニス邸でガラス温室四棟を建設した時にもよく見ていたヘルメット。後ろ姿も、どことなく見覚えのある姿のような気がする。

お、あれはイアンか?とレオニスが考えていた傍で、ラウルが躊躇なくその人物に声をかけた。

「よう、イアン」

「???…………ああ、ラウルさんじゃありませんか!」

「久しぶりだな」

「ご無沙汰しております!……ああ、レオニスさんもいらっしゃったのですね!」

突如背後から声をかけられ、不思議そうな顔で振り返ったイアンの顔がパッ!と明るくなる。

そして振り返った先にレオニスもいるのを見て、イアンが小走りに駆け寄ってきた。

「皆さん、ご無沙汰しております。今日は孤児院建設の進捗具合を見に来られたのですか?」

「ああ、どれくらい進んでるか気になってな、様子を見に来たんだ」

「わざわざお越しくださり、ありがとうございます。建設は見ての通り、順調に進んでおります」

「そのようだな。ガーディナー組に依頼して正解だったよ」

「過分なお言葉、痛み入ります」

レオニスからの褒め言葉に、イアンが恭しく頭を下げる。

「進捗状況の他にも、イアンにいろいろと聞いたり相談したいことがあるんだが。時間は取れるか? それとも、もう少し待った方がいいか?」

「そうですね……もうそろそろ昼食の休憩時間が近いので、少し前倒しで休憩時間にしてしまいましょう。少々お待ちくださいね」

イアンはそう言うと、建設現場にいる作業員達のもとに小走りで向かっていった。

「皆さーん。少し早いですが、お昼休みにしましょうー!」

「うッす!」「はい!」「おう!」

「午後の開始時間は、いつも通りでいいですからねー!」

「やったー!」「ラッキー!」「ヒャッホーィ!」

イアンからの思わぬ指示に、作業員達が喜んでいる。

現場監督公認のもと、いつもより長い休憩時間をもらえるとあらば作業員達が大喜びするのも当然である。

作業員達に指示を出し終えたイアンが、ライト達のもとに戻ってきた。

「お待たせいたしました。どこでお話をしましょうか?」

「あんた達は、いつもどこで昼飯を食ってんだ?」

「ここら辺には外食できるような店も施設もないので、各々が弁当を持参しています。食べる場所は、主に建物の日陰ができる場所で皆集まって食べてますね」

「あー……ここら辺には木もなさそうだし、真っ昼間に直射日光浴びながら飯食いたかねぇもんな……」

「そういうことです」

そんな会話をしながら、建物の陰になる位置に移動していくイアン。

ライト達もイアンの後についていく。

日陰部分に行くと、そこには既に多数の建設作業員がいた。

「イアンさん、お疲れさまッすー」

「……お? ラウルさんじゃねぇか!」

「おお、ホントだ!ラウルさん、お久しぶりー!」

「あのお屋敷のご主人に、坊っちゃんまでいるじゃねぇか!」

「ようこそ、俺らの建設現場へ!」

建設作業員の中には、イアン同様ガラス温室建設時に来ていた者達もいた。

彼らがラグナロッツァの屋敷のガラス温室建設に関わったのは、今から四ヶ月ぬらい前のこと。黄金週間直前の四月半ばから二週間弱という、本当にほんの僅かな短い期間だけ。

だが、彼らにとってレオニス邸での仕事は忘れ得ぬものとなっていた。

それはひとえにラウルからの差し入れ等々、心尽くしの世話があったからこそである。

とびっきりの笑顔でライト達を迎え入れる建設作業員に、事情を知らない他の作業員達は不思議そうな顔をしている。

だが、快く受け入れてもらったライト達にとってはありがたいことだ。

一番大歓迎されているであろうラウルが先陣を切り、既知の建設作業員達に声をかける。

「おう、久しぶりだな。お仕事ご苦労さん」

「またラウルさんといっしょに飯を食える日が来るなんて、夢にも思ってもいなかったぜ!」

「ラウルさん、もし良かったらあの美味い水を一杯だけくれないか?」

「ああ、俺も欲しい!休憩時間に入る時のあの一杯の水が、すんげー美味かったんだよなぁ!」

「俺も俺も!」

建設作業員達からのおねだりに、ラウルが苦笑いしながら応える。

「ちょっと待ってな、今人数分出すから」

「「「やったーーー♪」」」

万歳三唱よろしく、両手を上げて大喜びする建設作業員達。

八月下旬のまだ暑い盛りの昼下がり。ラウルが出すツェリザークの氷水はさぞかし美味だろう。

期待に満ちたワクテカ顔の建設作業員達のために、ラウルが氷の洞窟の氷を取り出しながらレオニスの方に声をかける。

「そしたらご主人様達よ、俺達も少し早めの昼飯にするか?」

「そうだな、イアンと話をしながら俺達も昼飯食うか」

「じゃ、ご主人様達も昼飯の支度しといてくれ。俺は皆に水を出してくるから」

「了解ー」

建設途中の新ラグナロッツァ孤児院の建物の陰で、ライト達とガーディナー組の昼食会が始まった。