軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第780話 眩しい光景

ライト達とともに里の中央に戻ったヴィヒトは、すぐに他の長老や幹部達に招集をかけた。

レオニスやラウルなど、ナヌスから見たら大型種?も交えての会議になるので、族長宅他ナヌス達が使う既存の建物には入れない。必然的に話し合いは里の中央広場で行われた。

里の中央広場に集まったのは、八人のナヌス。族長ヴィヒトの他、三人の長老、魔術師団正副団長、守備隊正副隊長である。

まずはナヌスの重鎮達の協力を仰ぐため、レオニスがヴィヒトに先程話したことを再度皆に説明していく。

神樹襲撃事件のあらましを聞いたナヌス達は、痛ましい表情をしながら静かに聞いていた。

「皆の者、今回レオニス殿は我等に神樹を守る結界作りを依頼しにいらした。無論私はレオニス殿のお話に賛同している。皆はどう思う?」

「神樹は森の守り神。我等の手で守り神をお助けできることに、否やなどあろうはずもない」

「それに、もし万が一にも神樹が悪漢の手に落ちるようなことになれば、近くに住む我等とて無事では済むまい」

「私は族長や長老達のご意見に賛成です」

「私も異論などありません。是非とも神樹の御力になりたいです!」

ヴィヒトの問いかけに、他のナヌス達も全員頷きながら賛同している。

先程ヴィヒトが言っていたように、神樹の結界作りの依頼に異を唱える者など一人もいないようだ。

里の民達への信頼が正しかったことを証明できたヴィヒトは、誇らしげな顔でレオニスの方に向き直る。

「レオニス殿、聞いての通りだ。我等ナヌスは、神樹ユグドラツィの結界作りを全面的に支持し、一族で総力を上げて支援しよう」

「ありがとう……これ程心強い支援はない。ナヌス達の英断に、心より感謝する」

「ナヌスの皆さん、ありがとうございます!」

「俺からも礼を言わせてくれ。ツィちゃんのために力添えしてくれて、本当にありがとう」

ヴィヒトの力強い宣言に、レオニスだけでなくライトとラウルもその場で頭を下げて礼を言った。

そんなライト達に、ナヌスの長老達はカラカラと笑いながら応える。

「何の何の!我等の結界が森の守り神をお助けできるとは、夢にも思わなんだぞい!」

「全くじゃ、末代まで語り継げる誉れよの!」

「しかし、我等の里と神樹の御座す場所まではかなり遠い。人族の貴殿らにも、手伝ってもらわねばならんことはたくさんあろう」

「だのぅ。貴殿らをかなり扱き使うことになると思うが、それでも良いか?」

一人の長老の言葉に、ライト達は力強く頷く。

「もちろん!俺達でできることは何でも協力する」

「ぼくだって、たくさんお手伝いします!」

「俺にも手伝えることがあったら、遠慮なく言ってくれ」

任せろ!とばかりに明るい笑顔で応えるライト達に、ナヌスの重鎮達の顔も綻ぶ。

「おお、さすがは森の番人と呼ばれる御仁とそのお連れさん方じゃ」

「その意気や良し。我等の手で神樹をお守りしようぞ」

「「「おう!」」」

皆がそれぞれに手を差し出し、固い握手を交わしている。

その光景を、静かに横で見ていたフギンとレイヴン。まるで眩いものを目撃したかのような気持ちで眺めていた。

「……思えば我等八咫烏一族は、マキシ以外に今まで里の外に出ようとした者は一羽もいなかったな……」

「ええ、そうですね……今まで他者の力を借りようなどと思うことすら、これまで全くなかったですからね……」

「だが、彼らの姿を見ていると……如何に我等の視野が狭かったかを思い知らされるな」

「はい……今なら俺も、マキシの気持ちがよく分かります」

ライト達がナヌスと笑顔で握手を交わす姿を、二羽の八咫烏兄弟はじっと見つめながら己達の里の有り様を振り返る。

人族と小人族という、異種族同士の心温まる交流の光景。その様子はフギンとレイヴンの目にはとても眩しく映っていた。

「あの時マキシが言っていた『外の世界は広い』というのは、本当のことで……そんな広くて大きな世界のことを、もっともっと知りたいとマキシが思うのは、当然のことでしたね」

「そうだな……我等も此度の人里見学で、もっともっと見識を広くせねばな」

「……ですね。俺らもマキシに負けちゃいられませんね!」

ライト達とヴィヒト達の交流を目の当たりにしたフギンとレイヴン。

八咫烏の里のこれからの発展のために、そして己自身のためにも、人里見学でたくさんのことを学んでいこう!と強く心に誓った。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さてそうすると、今度はどのような結界を神樹の周囲に廻らすかが課題となってくるが……レオニス殿、神樹ユグドラツィの高さはどれくらいあるか分かるかね?」

「そうだなぁ……」

レオニスに向かって、ユグドラツィの樹高を尋ねたヴィヒト。

例えば今までのようなナヌスの里やオーガの里ならば、周囲の森の樹高程度あればいいので普通の結界でも問題ない。だが、神樹は周囲の木々とは違う。

普通の木々よりはるかに高いであろう神樹を守るためには、神樹の天辺もきちんとカバーできるようにしなければならないのだ。

ヴィヒトからの問いに、レオニスはしばし思案する。

「もとから100メートル以上はあったと思うが……襲撃事件後のラウルの献身的な看病?で、前よりさらにデカくなってる気がするんだよな……」

「その『ひゃくめーとる』というのは、どれくらいのものなのだ?」

「……ああ、ナヌスはメートルとか使わんもんな……えーと……俺が縦に六十人積み重なったくらい、と言ったら分かるか?」

「レオニス殿が、六十人分とな……」

レオニスの答えに、ヴィヒト他ナヌス達全員が呆然とする。

一番屈強そうに見えるヴィヒトですら、その身長はライトの膝丈くらいしかない。

ナヌス達から見たらレオニスですらかなりの背の高さなのに、それが六十人も積み重なるなどとはもはや想像もつかないようである。

「高さもだが、神樹の周囲の敷地の状況も気になるな」

「実際に現地を見ることができれば、一番いいのだがなぁ……」

うーむ……と唸るヴィヒト達ナヌスの重鎮。

するとここで、フギンがヴィヒト達に声をかけた。

「あの……皆様、もし良ければ我等の背に乗って、今からツィ様のところに行きませんか?」

「ぬ? フギン殿、よろしいのか?」

「もちろん!ここには我が弟レイヴンもおりますし、我等一羽につきナヌスの方々三人は乗れましょう。そしてレオニス殿やラウル殿にもご協力いただければ、ここにいる皆様方全員をツィ様のもとにお連れできるかと」

いつになく力説するフギンに、横にいるレイヴンもコクコクと頷く。

しばし無言で顔を見合わせていたヴィヒト達。一同を代表して、ヴィヒトが口を開いた。

「霊鳥八咫烏の背に乗せてもらうなど、畏れ多いことではあるが……他ならぬ当のフギン殿から申し出てくださっていることだし、ここはありがたくお言葉に甘えさせていただきたい」

「畏れ多いなどと、とんでもない!我等八咫烏にとって、神樹は最も崇敬して止まない偉大な方々。それをお守りする手助けの一助となれるならば、我等にとってもこれ程嬉しいことはございません!なぁ、レイヴン!」

ヴィヒトの『畏れ多い』という言葉に、慌てて否定しながら横にいたレイヴンにも話を振るフギン。

兄に話を振られたレイヴンは、動じることなくにこやかな笑顔で兄に同意する。

「はい!ツィちゃん様は、我等が主にも等しい大神樹シア様の妹御ですからね!ツィ様をお守りすることは、シア様の意に沿うことにもなります!だからナヌスの方々も、どうぞ遠慮せずに我等の背にお乗りください!」

「……八咫烏の方々というのは、神格が高い霊鳥であるにも拘わらずとても気さくな御仁達なのだな」

感心したように呟くヴィヒトに、周囲にいたナヌスの重鎮達も得心しながら頷いている。

「全く全く。儂もこのナヌスの里にて長く生きてきたが、よもや霊鳥八咫烏の背に乗せてもらえる日が来るとはのぅ。ほんに、夢にも思わなんだわ」

「パウルの爺様、感激のあまりにぽっくり逝かないでくれよ?」

「フフン、ハナタレ小僧が言いよるわ。シモン、お前が嫁をもらうのと儂がくたばるの、どっちが先か賭けても良いぞ?」

「俺の嫁だぁ? あと五百年待っててくれりゃ何とかなるぜ!…………多分?」

「シモンよ、お前はそれでいいんか……?」

話が若干逸れつつある重鎮達に、ヴィヒトが声をかける。

「これ、お前達、客人の前で恥ずかしい会話をしてるんじゃない……」

「おっと、これは申し訳ない!思いがけぬ栄誉に、ついはしゃいでしもうたわ」

「八咫烏のお二方、我等一同お世話になります。どうぞよろしくお願いします!」

ヴィヒトに苦言を呈されたナヌス達が、襟を正して謝りつつ全員がフギンとレイヴンに向けて頭を下げながらお願いをした。

彼らの微笑ましい戯れを眺めていたフギンは、特に怒ることもなく応える。

「いえいえ、皆様方のお役に立てるなら幸いです」

「ささ、三人づつ乗ってください!……あ、レオニス殿、ラウル殿。申し訳ないですが、我等の背に乗りきれない二名の方々の移動のお手伝いをお二方にお願いしてよろしいですか?」

フギンの言葉に頷きつつも、レイヴンは彼らが背に乗せる人数に限界があることに配慮してレオニス達に声をかけた。

今ここにいるナヌスは八人。フギンとレイヴンに三人づつ乗ったとしても、二人乗れない勘定である。

そのことを心配したレイヴンの依頼に、レオニスもラウルも快く頷く。

「おう、任せとけ」

「もちろん俺も協力するぞ」

「じゃ、皆で行こうか!」

「「「おーーー!」」」

話がまとまったところで、ライトが早速出立を促す。

ライトの掛け声に、この場にいた全員が気勢を上げる。

こうしてライト達は、神樹ユグドラツィのもとに向かっていった。