軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第771話 華やかな手土産と職場訪問

定食屋『唐瓜』での昼食を終えた一行は、冒険者ギルドホド支部に向かっていた。

レオニスは店を出た時に「見送りはいらん、ここでいい」と言ったのだが、ハンザ達の「そんなこと言わずに!」「我らも門下生達の冒険者登録について、冒険者ギルドで相談したいからいっしょに行こう!」という言葉に押されて、皆でいっしょに行くことになったのだ。

実際ハンザ達は浴びるように酒を飲んだので、今日の道場での稽古はもう無しなのだろう。とはいえ、ハンザ達の様子は素面の時と全く変わらず、微塵も酔っ払っていないようだが。

ホド支部に向かう道中、一軒の花屋があるのが見える。

その店を見たレオニスは、歩きながら呟いた。

「……よし、あの花屋で花束を買うか」

「え? レオ兄ちゃんが花束を買うなんて、珍しいね?」

「いや何、これからカイ姉達のところに行くだろ? その手土産代わりにどうかと思ってな」

「あー、それいいね!カイさん達もきっと喜んでくれるよ!」

美しいもの、綺麗なものをその手で作ることができるアイギス三姉妹だ、きっと綺麗な花束を手土産に持っていけば喜ぶに違いない。

普段は朴念仁のレオニスだが、たまにはそうした紳士的な振る舞いもできるらしい。

早速レオニスは花屋に入り、あれとこれと、この花を……といくつかの種類を指定しながら、花束の作成依頼をし始めた。

ライト達は店の前で待ちながら、のんびりと会話を交わす。

「ハンザさん、そういえばさっきのお店でご馳走になった、ぬるぬるドリンクパンプキン味なんですけど……せっかくだからお土産に買いたいんですが、どこで買えますか?」

「ああ、今から行く冒険者ギルドのホド支部の売店にも確か置いてあるはずだが」

「そうなんですね!そしたら帰るついでに売店見てみます!」

「是非ともそうしてみてくれ。あのパンプキン味は、ホドでしか買えない限定品だからな。珍しい土産としてももってこいだと思うぞ」

「教えてくれてありがとうございます!」

先程ライト達が定食屋で飲んだジュース、ぬるぬるドリンクパンプキン味はどうやらホドのご当地限定品らしい。

ツェリザークの氷蟹エキス入りぬるシャリドリンクや、エンデアンの海色のぬるぬるドリンク炭酸ラムネ味の姉妹品のようなものか。

この世界のスライム系素材を用いたぬるぬるドリンク、そのバリエーションの豊富さにいつも驚かされるライト。

これが本来は武器強化素材だったことなど、もうどうでもいいくらいにはすっかり馴染んでしまっている。

そんな情報収集をしていると、レオニスの買い物が終わったようで店から大きな花束を抱えて戻ってきた。

ヒマワリを主役として、デンファレやグラジオラスなどの華やかな色合いの、それはもう夏らしい豪華な花束に一同は、ほぅ……と感嘆のため息を洩らす。

「レオ兄ちゃん、おかえりー。すっごく綺麗な花束だね!」

「おう、ここの花屋はセンスが良くて価格もお手頃なのが有名でな」

「そうなんだ? レオ兄ちゃん、ここで何度かお花を買ったことがあるの?」

「いや、ここで花を買うのは初めてだが。実はこの花屋はな、スパイキーの実家なんだ」

「え、そなの!?」

目の前にある花屋が、ライトやラウルも馴染みの『天翔るビコルヌ』の一員であるスパイキーの実家だと聞き、ライトがびっくりしている。

見た目は壮絶にゴツくて強面のスパイキー。花屋の倅にはとても思えない風貌だが、その性格は穏やかで優しく常識人である。

あの見た目に反した優しい性格は、きっとこのお花屋さんで育ったからなんだろうなー……とライトは内心で考えていた。

レオニスはひとまず花束を空間魔法陣に仕舞い、再び冒険者ギルドホド支部に向かう。

ホド支部に到着した一行は建物の中に入り、ギルド内売店で一通り買い物をしてからロビーで改めて別れの挨拶を交わす。

「では我々は、これから窓口にて冒険者登録に関する相談に行ってくる。レオニス君達も、気をつけて帰れよ」

「ありがとう。今日は良い運動もさせてもらった上に、昼飯まで奢ってもらって悪かったな」

「とんでもない!また近いうちにホド遺跡に行くのだろう? その際には必ずやまた我が道場に来てくれたまえ」

「おう、遠慮なく寄らせてもらうぜ」

レオニスとハンザが握手を交わす後ろで、コルセア他師範代達もレオニスに声をかける。

「レオニス殿ならいつでも大歓迎ですよ!」

「我らも次にお会いするまでに、もう少しまともにお手合わせできるよう鍛えますから!」

「ええ、次こそは負けませんからね!」

「こっちこそ負けんからな? 次もこてんぱんに伸してやるから、お前ら覚悟しとけよ?」

フンス、フンス!と鼻息も荒く気合いを入れて語る師範組に、レオニスも不敵な笑みを浮かべながら受けて立つ。

剣術家も冒険者も、どちらも負けず嫌いなのだ。

「レオニス君、向こうでバッカニアに会ったら『元気に頑張れよ』と伝えておいてくれ」

「おう、必ず伝えよう」

「レオニス殿、くれぐれも弟達のことをよろしく頼みます」

「任せとけ。なるべく実家にも顔を出すように言っておこう」

ハンザとコルセアが、彼らの息子であり弟であるバッカニアのことをよろしく頼む、とレオニスに託す。

レオニスにとってもバッカニア達は仲の良い冒険者仲間、特に頼まれずとも支え合う間柄である。ハンザ達の頼みに、一も二もなく快諾した。

「じゃ、またな」

「ああ、また会える日を心より楽しみにしている」

そうしてハンザ達は受付窓口に向かい、ライト達は奥の事務室に分かれていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

冒険者ギルドの転移門を利用して、ホドからラグナロッツァに移動したライト達。

一行はそのままアイギスに向かう。

アイギスに到着する寸前、店の前で箒を持ち掃き掃除をしているマキシの姿が遠目からでも窺えた。

「お、店の前にマキシがいるな」

「あ、ホントだー。ぼく達が来るのを待ってたのかな?」

「姉ちゃん達が見に来るってんだ、マキシも緊張してるんだろ」

「かもねー」

三人が話をしながらアイギスに近づいていくと、マキシの方もライト達が来ているのが見えたようだ。

ふとライト達の方を向いたマキシの動きがはたと止まり、その後すぐに駆け寄ってきた。

「レオニスさん、ライト君、ラウルもこんにちは!……ムニン姉様とトリス姉様も、ようこそいらっしゃいました……」

「おう、仕事に精が出てるようで何よりだな」

「マキシ君、お仕事お疲れさま!」

「姉ちゃん達が見に来たからって、そんなに緊張しなくてもいいんだぞ?」

ライト達が口々にマキシを労い、マキシも「はい!」「ありがとうございます!」「ラウルってば、他人事だと思って……」等々、個々に答える。

そしてマキシがアイギスの入口の扉を開けた。

「カイさん達もお待ちです、ささ、中にどうぞ!」

「……ン? 『臨時休店』の札がかかってるぞ?」

「あ、これはですね、カイさん達の計らいで今日の午後はもう閉店することにしたんです。レオニスさん達だけでなく、僕の姉様方も来るということで……」

「ああ、貸し切りにしてくれたってことか」

「はい……」

マキシが顔を赤くしながら事情を説明する。

ライト達のことならともかく、己の家族である姉達にまで配慮してもらったことが少し照れ臭いようだ。

しかし、マキシの姉達を迎えるにあたり、アイギスを、貸し切りにしてくれたことは非常にありがたい。

マキシの姉、つまりは八咫烏を二羽迎え入れるということ。他の一般客にその正体がバレるようなことが、万が一にも起きては困るのだ。

「さ、そしたらカイ姉達も中で待ってるだろうから早く入るか」

「はーい!」

レオニスの掛け声を機に、ライト達はアイギスの中に入っていった。