軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第752話 修行の成果

ユグドラシアの根元で昼食を食べ始めたライト達。

ここでも話は自然と先日のユグドラツィ襲撃事件の話になる。

「いやもうホント、こないだは皆が駆けつけてきてくれたおかげで助かったぜ。ありがとうな」

「いやいや何の。シア様の妹御の危機とあらば、お救いするために我等も馳せ参じるのは当然のこと。礼を言われる程のことでもない」

「これはもう、あの謎の黒い炎についてシアちゃんに聞きに行ったマキシ君のお手柄だよね!」

「そ、そんな……それを言ったら、僕や皆を運んでくれたウィカちゃんのおかげですよ、ねぇ、ウィカちゃん?」

『にゃ?』

輪になるようにして敷いた三つの敷物の上で、ラウル特製のご馳走を食べながら歓談するライト達。

今こうして皆でのんびりと会話できるのも、ユグドラツィが無事生還できたおかげだ。もしユグドラツィが今でも昏睡したままだったら、とてもこんなピクニック風に過ごすことなどできなかっただろう。

そしてユグドラツィが生き延びることができたのは、八咫烏一族族長としてミサキを除く一家全員で駆けつけてきてくれたウルスの功績が大きい。

そのことを示すかのように、氷の洞窟の氷を食べ終えたユグドラシアが話に加わってきた。

『ウルス、アラエル、そしてその子達よ……皆、本当にありがとう。ツィの生命が助かったのも、貴方達のおかげです』

「そ、そんな!シア様からそんなお言葉をかけていただけるなんて、もったいないことでございます!」

「そうですよ!シア様あっての私達なのですから!」

ユグドラシアの感謝の言葉に、ウルス達全員が畏まる。

何とも生真面目な八咫烏達の姿を見たレオニス達が、笑いながらウルス達に声をかける。

「シアちゃんからの感謝だ、遠慮せずにありがたく受け止めてやりな」

「そうですよ!八咫烏の皆さんが来てくれなかったら、ぼく達だけでは絶対にツィちゃんを助けることができなかったと思います!」

「俺もそう思う。大量に涌き続けていた虫どもは、俺達だけじゃ駆除しきれなかった。あんた達がいなければ、ヴィーちゃんが駆けつけてきてくれる前にツィちゃんの生命が尽きていたかもしれん」

「レオニス殿、ライト殿、ラウル殿……」

ライト達の心からの賛辞に、ウルス達は感極まった面持ちで言葉に詰まっている。

そしてユグドラシアもまた感謝の言葉を重ねていく。

『そうですよ、ウルス。今もツィが『八咫烏の皆様方に、ありがとうとお伝えください』と言ってきているのですよ』

「シア様……ツィ様からもそのように言っていただけるとは……光栄の極みに存じます。これからも我等八咫烏一族は、常にシア様や神樹の皆様方とともにあります」

ユグドラシアから伝えられたユグドラツィの言葉に、ウルス達八咫烏一同は頭を垂れて恭順の意を示す。

八咫烏一族と大神樹ユグドラシア、両者の絆がより深まった瞬間だった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「はー、食った食ったー」

「ごちそうさまでした!」

昼食を存分に食べたライト達。

敷物に座ったまま、デザートのミニシュークリームを摘みながら少し休憩することにした。

するとここで、レオニスがふとミサキに向かって話しかけた。

「そういやミサキちゃん、人化の術はどうだ? 習得できそうか?」

「うん!まだあまり長い時間化けていられないんだけど、それでも短い間なら人化できるようになってきたよ!」

「ほう、そりゃすごいな!是非とも見せてもらえるか?」

「分かった!」

レオニスの頼みに、ミサキは快諾しすくっと立ち上がる。

ミサキはアラエルとともに、人化の術習得のための見学ツアー?として、ラグナロッツァに三日間逗留したことがある。

それから約四ヶ月弱、人化の術の学習の進捗具合が気になるところだ。

その場に立ち上がったミサキが、目を閉じて精神集中する。

するとふっくらまん丸なミサキの身体から淡い光が出てきて、シュルシュルと縦に伸びていく。

そうして現れたのは、黒いキャミソールワンピースを着た一人の美少女だった。

「「「「……おおおおお……」」」」

初めて見る人化したミサキの姿に、ライト達四人が思わず感嘆の声を洩らす。

皮膚は淡桃色の美肌で、髪はコロンと丸く愛らしいショートボブで濡鴉色、瞳と爪は美しい深紫色。

キャミソールワンピースは膝まであり、裾が鳥の羽根の形をしている。どうやらこのワンピースは、八咫烏の翼の羽根が変化したもののようだ。

そして背丈はマキシより少し小さいくらいで、人間の身長でいうと150cmくらいか。全体的にほっそりとした華奢な身体で、お胸は見事にペタンコである。

そして特筆すべきは顔。目鼻立ちがマキシとそっくりなのだ。

「ミサキちゃん、マキシ君にそっくりだね!」

「そ、そうかな?」

「マキシ君の横に並んでみてよ!」

ライトの要望に、ミサキがスススー、とマキシの横に移動し横並びになる。

マキシと顔を見合わせるミサキ。やはりどこからどう見ても、人化したミサキはマキシそっくりの顔立ちだ。

ただ、マキシも人化した時の顔は中性的な美少年なので、男女どちらでも通用する顔とも言えるだろう。

ライトやレオニス、ラウルが、美少女化したミサキを見ながら、三人でゴニョゴニョと小声で話している。

「やっぱ双子だから、顔もそっくりになるのかなぁ?」

「あるいは人化した時のマキシの顔が、ミサキちゃんの中で人化のイメージのもとになっているのかもな」

「あー、それはあるかも……」

ミサキの人化の術は、ぱっと見た感じではなかなかの修行の成果に思える。

かつてのマキシのように、嘴や脚だけ八咫烏のままとか変なことにはなっていないし、完璧な人化の術と言っても差し支えなさそうだ。

すると、ミサキの身体が突然ボフンッ!という音を立てながら靄に包まれたではないか。

しばらくしてその靄が晴れた後には、八咫烏の姿に戻ったミサキがいた。

「あー、もう元に戻っちゃったー」

「まだ人化に慣れてないからだろうね」

「もっと長い時間続けられるようになりたいのにー!」

ほんの一分程度で人化の術が解けてしまったミサキ。心なしか頬を膨らませている。

人化した姿を長く維持できないことが大層ご不満のようだ。

だが、そんなご機嫌斜めの妹にマキシが明るい笑顔で褒め称える。

「最初のうちは仕方ないよ。でも、よく頑張ったね!人化の術を習得できただけでも偉いよ!」

「ホント?」

「ああ、本当だよ。僕は嘘をつかないもの」

「……そうね!マキシ兄ちゃんがワタシに嘘をつく訳ないもんね!」

双子の兄の心からの励ましに、即座にニコニコ笑顔になるミサキ。

マキシもまた八咫烏という種族であり、妖精のラウルや神樹達のように嘘はつかないのだ。

笑顔が戻った妹に、マキシがさらに元気づけるように語りかける。

「ミサキだって、これからももっと頑張れば一日中人化した姿でいられるようになるよ」

「そうよね!そしたら、一日中人化できるようになったら、また人里に遊びに行ってもいい?」

「もちろんさ!……あ、でもそれにはレオニスさんに先に許可をもらわないといけないけど」

二人の会話の中に、レオニスの名が挙がる。

ミサキが人里=ラグナロッツァに遊びに行くには、まず宿泊先が必要になる。そしてラグナロッツァでの宿泊先と言えば、レオニス邸一択しかない。

つまり、ミサキが人里に遊びに行くには、マキシでもなくラウルでもない、他ならぬレオニスの宿泊許可がなければ実現しないのだ。

マキシとミサキの視線を受けたレオニスが『ン?』という顔をしながらマキシ達を見る。

「あー、マキシの家族ならいつでも遊びに来ていいぞ? 俺自身は直接もてなしてやることはできんかもしれんが、ラグナロッツァの屋敷にはラウルが常時いるし。なぁ、ラウル?」

「おう、俺で良ければいつでも最上級のおもてなしでお迎えするぞ」

レオニスに話を振られたラウル、即座におもてなし宣言をする。

もちろんレオニスだってミサキ達の来訪は大歓迎だ。

二人の答えを聞いたミサキが、嬉しそうにレオニスに抱きついた。

「ありがとう、レオニスちゃん!ワタシ、一日も早く人化の術を完璧に使えるよう頑張るね!」

「おう、頑張ってな、俺も応援してるぞ」

「ラウルちゃんもありがとう!早くラウルちゃんにお料理を習えるようになりたい!」

「それにはまず人化の術の完全習得が必要だもんな。頑張れよ、ミサキちゃん」

「うん!!」

レオニスに抱きついた後に、ラウルにも抱きつくミサキ。

もともとミサキが人化の術を会得しようと決意したのは、ラウルのように美味しい料理を作れるようになりたい!と思ったのがきっかけだった。

料理を作れるようになるには、決して八咫烏の姿のままでは適わない。兎にも角にも人化することが絶対条件なのだ。

甘えん坊だが頑張り屋さんの末妹を、ライト達だけでなく父母や兄姉までもが温かい眼差しで見守っていた。